第22回目となる本誌によるネット販売企業の売上高調査「ネット販売白書」の結果では、ネット販売(BtoCの物販)実施企業上位300社の合計売上額は7兆144億円となった。前年調査の6兆1443億円に比べて14.2%拡大した。成長率で見ると、巣ごもり消費でECが活況となった前年の27.9%増からは落ちている。コロナ禍での各種外出規制などが緩和されたことで、リアル店舗での買い物に回帰する動きが進んだことなどが窺える。
商材別EC市場調査:総合・日用品
巣ごもり特需が一巡し、成長率は鈍化傾向
様々なジャンルの商材を販売する「総合EC事業者」は引き続き、増収を維持した事業者は少なくなかったものの、コロナ禍による巣ごもり需要の影響で大幅な増収となった前年度からは急ブレーキし、小幅な伸びにとどまった。首位のアマゾンも2桁増を維持したものの、前年の25%増という伸び率と比較すると鈍化している。巣ごもり需要はEC市場全体に大きな恩恵をもたらし、特に生活に密着した様々な商材を展開して日常的に利用されている総合EC事業者が受けた効果は大きかったが、その反動減の影響もまた大きかったようだ。主な各社の動きを見ていく。
伸び率減も2桁増収は維持のアマゾン
首位のアマゾンジャパンの売上高伸長率はコロナ特需という追い風が吹いた20年度の前年比25.2%増には及ばなかったものの、21年についても前年比16%増と2桁増を維持した。引き続き、取扱商品数を広げるなど直販を強化する一方で、流通総額アップによる売り上げ拡大という観点から直販よりも効率のよい外部事業者の出店数拡大に引き続き注力。特に中小事業者の誘致を促すため、テレビCMなどのPR施策を積極化することで新規出品者の獲得を強化している。
また、コロナ禍による巣ごもり消費増で大きく市場が広がった食品EC強化のため、21年6月からスーパーマーケットチェーンなどを展開するバローホールディングスと組んで名古屋市など愛知県内の一部で同社の店舗で商品をピッキングし、顧客宅にアマゾンの配送員が配送する形で生鮮品を最短2時間で配送する有料会員「プライム会員」向けサービスを開始した。これまでもアマゾンは直販およびライフコーポレーションと組んで首都圏や大阪で生鮮品のEC展開は行ってきたがバローと組んで、東海地域でも食品販売をスタートし、強化している。なお、22年3月からは成城石井とも連携して同様に有料会員向けに食品販売を都内の一部地域で開始している。また、東京・神奈川、千葉の一部エリアで展開する有料会員向けの直販生鮮品販売サービス「Amazonフレッシュ」についても、21年7月から料金体系を見直し、月額料金を撤廃したり、配送リードタイムを従来の4時間から2時間に短縮するなど強化している。
売上増や物量増加に対応して配送拠点の整備もぬかりなく実施。21年9月に東京・青梅市内、同10月に千葉・流山市内にそれぞれ物流拠点を新設、稼働させた。アマゾンは全国に21カ所の大型物流拠点を構えているが、2つの新拠点の稼働で商品保管力は全体で10%以上増えたとする。また、20年から関西地域で設置を始めた大型物流施設からの配送品を集積し、周辺エリアの顧客宅まで配送する最終配送拠点「デリバリーステーション(DS)」を21年夏ころからは関東圏でも相次いで設置。DSの開設でアマゾンが配送業務を委託する配送業者「デリバリーサービスプロバイダー」および個人事業主「AmazonFlexドライバー」を使ってより配送業務の効率化を進めたい考え。
LOHACOは増収キープ
アマゾン以外のトップ3位の状況としては、2位のアスクルの「LOHACO」はコロナ特需の反動減などはあったものの、ソフトバンクが携帯電話利用者向けに行う販促キャンペーン「サイバーサンデー」やヤフーの大型販促セール「超PayPay祭」などグループ企業の販促施策を活用して売り上げを伸ばし、増収を維持。3位の千趣会はコロナ禍以前の2019年度よりも購入会員数は増えて堅調に推移したものの、巣ごもり特需が一巡したことに加えて、中期経営計画の推進体制強化とデジタルを活用した事業変革の前提となる基幹システムの刷新に向けた手数料や人件費等の増加により減収および減益となった。
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