第24回目となる本誌によるネット販売企業の売上高調査「ネット販売白書」の結果では、ネット販売(BtoCの物販)実施企業上位300社の合計売上額は8兆4406億円となった。前年調査の7兆7888億円に比べて8.4%拡大した。コロナ禍の巣ごもり需要からの反動減も徐々に落ち着きを見せており、大手仮想モールでの販売を中心に、再び拡大基調へと進んでいる。
表の見方■調査は2024年7~8月、通販・通教実施企業約1000社に対して行った。無回答の企業に関しては本誌や姉妹紙「週刊通販新聞」の取材データや公表資料、民間信用調査を基に本誌推定値(「※」)を算出。社名横の「受」は受注比率から算出した売上高を示す。■BtoCでもデジタルコンテンツやチケット販売、宿泊予約、金融などの非物販に加え、オフィス用品などBtoBも調査対象から外した。■対象決算期:「前期実績」は23年6月~24年5月に迎えた決算期、「今期見込み」は24年6月~25年5月に迎える決算期。増減率は前の期の数値が判明していない企業や変則決算のため比較できない場合については掲載していない。■表内項目の「EC化率」は原則、総通販売上高に占めるネット販売売上高の占有率。一部、総売上高に占めるネット販売売上高の占有率となる。■表中、企業名横の「◎」は次の理由による。
商材別EC市場分析 総合・日用品
首位は不動のアマゾンも成長率は鈍化
様々な商品を販売する総合・日用品EC事業者で首位となったのは引き続き、アマゾンジャパン。直近売上高は前年比13.8%増の3兆6556億円と断トツ1位となっている。前年から引き続き、直販の強化に加えて効率的に流通総額を引き上げることができる「マーケットプレイス」への出店誘致に注力しており、特に中小事業者を出店に誘導するイベントやCMの放映などを積極化して新規出店者の獲得を推進し手数料収入拡大につなげている。
物流投資も積極的で2023年8月に千葉に大型物流拠点「千葉みなとフルフィルメントセンター」、埼玉にファッション関連専門の物流拠点「狭山広瀬台フルフィルメントセンター」、同9月には都内に大型拠点と顧客宅まで商品を配送するために最終配送拠点である「デリバリーステーション」の間をつなぐ同社初の仕分け拠点「八潮ソートセンター」を新設。また、軽バンや運転免許を持っていない人でも配達員として働けるよう配送員が軽乗用車やリヤカー付き電動アシスト自転車などで配送ができるようにしたほか、同3月から配送事業会社を起業したい事業主に対して、自動車保険に通常よりも安価な保険料で加入できる案内や安価にガソリンを給油できる給油カードの付与などを行うほか、アマゾンが定期的に一定の荷物の配送委託を行うことで安定的な収益を得られるようにするなどして支援。これらの施策など不足する配送のための人員の確保面で抜かりなく手を打っている。
他社と連携した展開も強化。米アマゾンが2022年8月に出資したアイスタイルと連携し、2023年11月からアマゾンの通販サイト内に化粧品などを販売する専用ページ「@cosmeSHOPPING」を新設して化粧品の拡販を進めたほか、同12月には北海道などでスーパーマーケットチェーンを展開するアークスと組んで同社の店舗で商品をピッキングし、北海道札幌市や北広島市に住む有料会員向けに生鮮品を含む日用品をEC展開する取り組みも開始している。
ただ、増収率は前回調査では前年比26.5%増だったのに対し、今回調査では同13.8%増と鈍化傾向となっている。1つの要因として考えられるのはセール売上の失速だ。海外メディアなどによると米アマゾンの有料会員「Amazonプライム会員」向けの大型セール「プライムデー」の販売力が弱まってきているとの見方もある。日本でもその限りかは不明だが、2023年には日本では初開催となる有料会員向けセール「プライム感謝祭」を10月14日から2日間実施。また、同7月に実施した同じく有料会員向けの年間最大規模のセール「プライムデー」では開催2日前から「先行セール」を実施しており、事実上、セール開催期間を伸ばしている。同社の成長率の行方については今後、注視されそうだ。
テレビ通販勢、ECでも存在感増す
アマゾン以外で注目されるのは通販専門放送局を運営するQVCジャパンとジュピターショップチャンネルだ。両社とも従来までECはテレビの視聴者向けに対しての補助的な役割がメインだったが、テレビでなく主にインターネット、スマートフォンで商品を選び、購入する既存顧客も増えたことや、テレビをあまり視聴しない層の新規顧客獲得のためにEC機能の強化に注力し始めている。例えば、通販サイト上で通販番組の短尺動画を配信したり、社員らによる展開商品を使ったコーディネートを提案する取り組み、テレビ通販とは全く離れた独自の動画コマースサービスの展開、通販アプリの強化などを推進しており、これらが徐々に結果を出し始めている。テレビというマス媒体を主戦場とし、信頼感と知名度、そして多くの顧客数を背景に今後さらにECのプレイヤーとしても存在感が高まっていきそうだ。
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