ヨドバシカメラは6月29日、通販サイト「ヨドバシドットコム」で送料無料キャンペーンを開始した。期間は定めていないが、サービスを恒常化する方針だ。これまでは購入額3000円以上が送料無料の条件だった。同サイトではCDやDVDなど、低額商品の品揃えを拡充しており、無料サービスの導入により、先行して送料を無料にしたアマゾンジャパンに対抗したい考えだ。
家電の通販サイトでは最大規模のヨドバシが送料無料を導入することで、家電関連を含めて他のサイトへも広がる可能性がありそうだ。
購入客増で単価低下をカバー
低価格商品の購入を促すことで、新規顧客獲得増とリピート率の上昇につなげるのが目的だ。サービス開始後は「約3割購入数が増えている」(吉澤勉取締役)という。
とはいえ、送料無料を実施すれば購入単価の下落は必至だ。実はヨドバシでは、5~6年前にも送料無料キャンペーンを期間限定で実施したことがあるという。吉澤取締役は「当然単価下落などの影響はあるだろうが、以前も大きな下落はなかったし、単価の極端に安い商品を1品買うといった注文もそれほど目立たなかった」と話す。購入客の増加で単価の低下をカバーする方針だ。
問題は、取扱量の急増により配送関連で遅延などが生じないかどうかだが、「東西に配送センターを構えており、問題はない」(同)という。ヨドバシの場合、当日出荷はもちろん、注文した時間や地域によってはその日に届くこともあるなど、配送関連には定評がある。3000円以上購入することがほとんどの家電やゲームを購入する顧客には、今回の送料無料サービスは無関係だけに、品質低下を起こせば顧客満足度の低下につながることも予想される。物量増にどれだけ対応できるかがポイントになりそうだ。
ポイントで囲い込み狙う
送料無料サービス導入に合わせて、CDやDVD、ブルーレイなどの品揃えを大幅に拡大。従来の7~8万点から18万点まで増やした。今後は「JANコードに登録されたCDやDVDはすべて買えるようにする」(吉澤取締役)など、商品数を増やす方針だ。
ソフト関連を充実させる最大の目的は、アマゾンへの対抗だ。家電製品の場合、アマゾンは一部で安い商品はあるものの、自社以外の取り扱い(マーケットプレイス)となるケースもあるなど、品揃えはヨドバシに及ばず、洗濯機などの大型商品は別途送料が必要となる。しかし、ソフト関連の品揃えは大きく劣っているのが実情だった。
映像商品の場合、アマゾンジャパンでは最大で約30%近い値引きを実施しているが、ヨドバシでは値引きに加えて10%のポイントを一律に還元することで対抗。また、再販制度のないCDは値引き販売ができないため、ヨドバシの10%ポイント還元が武器となりそうだ。
ソフト関連の品揃え強化により、新規顧客を取り込むとともに、ポイントでの囲い込みも期待できる。家電の購入で貯めたポイントの「放出先」を設けることで、サイトの利用度頻度を高める狙いだ。
ヨドバシの2010年3月期のネット販売売上高は337億7800万円。11年3月期は前期比5.1%増の355億円となったようだ。近年、売上高はやや伸び悩んでおり、サービス面の強化で大幅な増収につなげる。
大手の寡占化がさらに進む?
送料無料に関しては昨年、アマゾンがサービスを恒常化したほか、楽天の「楽天ブックス」もキャンペーンを続けている。知名度が高く、売上規模も大きいヨドバシの導入で送料無料が「当たり前」のサービスとして消費者に受け止められる可能性は高い。
特に影響が大きいのはソフト関連を扱う通販サイトだ。もともと粗利の薄い商品だけに、大手に対抗して送料無料を導入すれば大きなダメージを受けるが、かといって追随しなければ顧客を奪われかねない。ソフト関連や書籍に限らず、送料無料の一般化は大手による寡占化をさらに進めそうだ。
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