KDDI の「ワウマ」、“通信料還元”で攻勢 ―― au ショップで会員登録促す取り組みも

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KDDIと子会社のKDDIコマースフォワード(KCF)が運営する仮想モール「Wowma!(ワウマ)」では1月16日、ユーザーに付与するポイントに関して、au を利用するユーザーの利用料金に充当できるようにした。ワウマでは、一昨年から続けている新料金プランが奏功し、他の仮想モールに出店する有名店の取り込みに成功。さらには、ポイント施策や積極的なクーポン発行などでリピーターを増やしている。ただ、店舗数の伸びほど流通額は伸びていないことから、au ユーザーへの認知拡大を本格化することでテコ入れを図る。

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相次ぐ有名店の出店

KCFの八津川博史社長は「18 年11~12月の流通額は前年同期比50%増で推移した。マーケット全体の伸び幅と比較しても、堅調に伸びているといえるのではないか」と昨年を振り返る。

店舗数は1万5000まで拡大。この1年間で約2.2倍となっている。商品数は4000万点超となり、購入増へと結びついている状況だ。有名店も増えており、例えば1年前は大手家電量販店で出店しているのは上新電機だけだったが、昨年はヤマダ電機やコジマが出店。「ユーザーが『有名なお店も出ているんだ』と認識することで、リピートしてもらえるようになっているという手応えはある」(八津川社長)。

店舗数の拡大に一役買っているのが、一昨年にスタートした新料金プラン。商品が売れた際の手数料率を従来から値下げし、期間限定での月会費無料キャンペーンを継続している。今後もキャンペーンを続けるかどうかについては「議論している最中」(同)という。

また、店舗関連で注力したのは運営に関する機能強化。八津川社長は「以前はワウマだけ(他の仮想モールに比べて)使いづらいとか、機能が足りないのでは、という声が店舗から多く上がっていたが、最近はそうした声はほぼなくなったのではないか」と話す。

管理ツール「ワウ マネージャー」の機能を大幅に拡大しており、商品や取引、さらには広告のコントロールも可能となった。各種APIを完備することで店舗の自社システムとの連携を容易にしている。18年2月に開催した出店者向けイベントにおいて、追加予定として公開した機能については「お約束通りにリリースできた」(八津川社長)という。

ポイント制度を大幅に転換

ユーザー向けに関しては、キャンペーン関連で大きな変更があった。以前は毎週土曜日やセール開催時などに、ポイント付与率を最大18倍や最大16倍などとしていた。18年6月からはいつ購入しても最大15倍のポイントが貯まる。

さらには、毎月開催する「還元祭」や四半期に1回開催する「ラッキーセール」では2店舗での購入で最大25%を付与。八津川社長は「土曜日だけポイントを増量していた時期よりも流通額は伸びてきている。スポットで利用してもらうのではなく、継続して購入してもらうことで顧客層がゆるやかに厚くなってきているのではないか」と分析する。

定期的に開催するセール時には複数枚クーポンを配布しているほか、ユーザーのランクにあわせて毎月クーポンを配っており、この「ランククーポン」はロイヤリティーの高いユーザーほど多く枚数が付与される。「1万円購入で2000円値引き」など、他の仮想モールが発行するクーポンと比べて値引き額は大きい。

また、ポイントプログラム自体も変更。以前はauユーザー向けには一律で「ウォレットポイント」を付与していたが、新たなポイントサービスとして「Wow! スーパーポイント(ワウポイント)」を導入。auユーザーには両方のポイントを付与するものの、ワウポイントの方を多く付与する形としている。

ウォレットポイントは、プリペイドカードへのチャージが可能など、auユーザーにとって利便性の高いポイントといえたが、ワウポイントはワウマとKDDIグループのルクサが運営する「auウォレットマーケット」でしか使えない。八津川社長は「モールから出したワウポイントが必ずモールに帰ってきてくれるので、店舗からみれば手堅いポイント制度になっている」と説明する。

ウォレットポイントはKDDIのさまざまなサービスを利用する際に充当できるため、コマース専用のポイントを導入することでリピート率を上げる狙いがあるわけだ。

店舗に“解”示す

1月16日からは、ワウマで買い物した金額の最大10%を、携帯電話の利用料に還元するサービスを開始する。ユーザーは従来どおりの最大15%還元のポイントプログラムか、通信料還元か、いずれかを選べる。

八津川社長は「KDDI の髙橋(誠社長)は『通信とライフデザインの融合』とたびたび発言しているが、『連携』ではなくあえて『融合』という言葉を選んだことの重さや本気感が、こういうサービスにもあらわれている。18年12月から全auショップの店頭でワウマに登録してもらうための施策を始めており、ユーザーにワウマの便利さやお得感を説明するには、通信料への還元が一番分かりやすいのではないか。店舗がモールに期待するのは『新規客の獲得』のはず。ポイントの通信料金への還元は、こうした期待に対する当社ならではの一つの解だ」と力を込める。

還元率そのものは従来のポイントプログラムの方が高くなるわけだが、「店頭でワウマに新規登録するユーザーは通信料への還元を選ぶのでは」(同)。まずは「分かりやすさ」をアピールすることでワウマを利用してもらい、その上でよりお得な還元スタイルも選べる形とした。これに伴い、付与する月間ポイントの上限も下げた。ヘビーユーザーにとっては不利な改変となるわけで、新規ユーザーを増やしたいという意図がみて取れる。

ルクサと統合で接点増も

au ショップ店頭で配布する無料冊子

ワウマでは18年12月から、ショップで配布する無料の冊子を発行している。利用シーンも交えながら店舗の商品をスタイリッシュに紹介するスタイルの冊子だが、今回の還元プログラムについても1ページを割いて説明している。「通信料値引き」を新規ユーザー獲得の切り札としたい考えだ。

もう一つ注目されるのが楽天との連携。楽天の物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」や「楽天エクスプレス」に関して、ワウマの出店者が4月から順次利用できるようになる。 楽天市場とワウマ双方に出店する店舗が利用する場合の措置に関しては「現在打ち合わせをしているところだ。店舗とも相談しながらサービスレベルを引き上げていきたい」(同)という。最終的には店舗が負担する物流コストの低減が目標となる。KCFからすれば、出店者向けの物流整備は他モールと比較すると遅れているだけに、楽天のインフラ活用には大きなメリットがありそうだ。

さらに、4月には同じKDDIグループでタイムセールサイト「ルクサ」やauユーザー向けのショッピングサイト「au ウォレットマーケット」を手掛けるルクサと統合する。コマース事業を手掛ける2社が合併することで、効率的な運営を図るのが狙いだが、ルクサは“コト系”商材に強みを持ち、ハイエンドな顧客も多いことから、店舗からは早くも新規ユーザーとの新たな接点を期待する声が出ているという。

au ユーザーへの浸透進むか

「(DeNAから)モール事業を買収してから2年を経たわけだが、3年目となる19年は本物のコマースを作っていく。昨年はそれを実現するための打ち手を実行できたのではないか」と自信を見せる八津川社長。通信料還元のニュースを聞いた店舗からは「『いよいよだね』という声が多い。短期間でここまで店舗数が増えたのは、KDDIのサービス、特にauと一体になって進めてくれるという期待が大きかったからではないか。それが目に見える形となってきた」(八津川社長)。

とはいえ、17年と同じく、18 年も店舗の伸びに比例する形で流通額は増えていない。「良い循環が生まれているという手応えはあり、ゆるやかな加速はついている」と強調する八津川社長だが、やはり軸となるauユーザーへの浸透が進んでいないのが実情。「切り札」となるポイントの通信料への還元が、新規ユーザーの増加にどこまで貢献するかが注目される。

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