川島覚●リアルマックス代表取締役社長 ーー唯一無二のゴルフ用品販売事業者目指す

 ゴルフ用品のネット販売を行うリアルマックスの業績が復調している。コロナ禍でゴルフは大きな盛り上がりをみせ、同社を含めゴルフ用品EC各社も業績を伸ばしたが、コロナ禍が落ち着きはじめるとゴルフブームも沈静化。反動減に加え、コロナ禍が引き起こした市場環境の急激な変化によって業績が低迷する事業者も少なくなく、同社も苦戦を強いられていた。ただ、2022年にテレビ東京グループの通販企業、テレビ東京ダイレクトの子会社となった強みを活かしてテレビを活用した拡販強化や独自商品を軸とした拡販など競合他社とは異なる施策・戦略が奏功、業績は再び成長軌道に乗ったようだ。川島覚社長が語るリアルマックスの現状と今後とは。

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コロナショックで苦戦も直近業績はV字回復へ

コロナ禍経て変わるゴルフ用品市場

─2024年12月26日付で代表取締役社長に就任しました。親会社のテレビ東京ダイレクト(TXD)でゴルフ事業部長も兼務しています。リアルマックスの社長就任の経緯は。

 2022年にTXDがリアルマックスを連結子会社化しましたが、私は翌年にTXDに入社してドライバーなど売れ筋のオリジナル商品などを通販番組などで販売するゴルフ事業部の部長となりました。TXDのゴルフ事業とリアルマックスの事業は別事業ではありますが、両社は連携して事業を行っていましたし、親会社として販売方針などを助言、指示する必要もありました。

 また、両社の事業をうまく連携させて、互いの事業でF2転換を進めていくためにどう連携していくのかという戦略を構築すべく、24年にリアルマックスの専務執行役員に就任して両社の事業の連携策などを進めてきました。そうした流れの中で社長に就任することになりました。

─リアルマックスの売上高は2021年9月期が31億3200万円、22年9月期が33億100万円でした。TXDによる資本参加後の業績はどうですか。

 TXDによるリアルマックスへの資本参加後、決算期を3月に変更しており、2024年3月期で売上高は23億8800万円でした。

 コロナ禍で“コロナバブル”が起き、大きく売り上げを伸ばしましたが、コロナ終息後は反動減などで業績を落とす“コロナショック”があって、淘汰が起き、そこから回復し始めたところ、そうではないところと明暗が分かれているというのがEC業界の現状だと思いますが、こうした状況はゴルフ業界でも同じで、大きく影響を受けました。外でプレーし、人との距離もとれることなどからゴルフはコロナ禍では安全なスポーツとして一気にプレイヤーが増え、ゴルフ用品のニーズも爆発的に増えましたが一方で、コロナ禍で工場が閉鎖され、製造が滞ってしまい、ゴルフ用品は不足してしまっていました。需給バランスが大きく崩れてしまったのがコロナ禍の頃です。

 その後、コロナ禍がある程度収束して工場が稼働し始め、大量の発注に応じて商品を製造したわけですが、すでにその頃は需要が落ち着いていたため、“ものあまり”が起きてしまいました。とにかく流通在庫を売り切るために小売店、当社を含む通販事業者も価格競争に巻き込まれてしまいました。特に23年は厳しく、業績をかなり落としました。おそらく競合他社も同じような状況だったのではないでしょうか。リアルマックスがTXDの傘下に入ったのは22年10月でまさにコロナバブルが終わり、そこから厳しい競争にさらされ始めるタイミングでしたので。そこからは1年半くらい苦戦を強いられました。

 しかし、24年度(2025年3月期)から状況は大きく改善しています。特に下期は以前の勢いを取り戻しつつあり、TXDとの相乗効果に加えて、非常にありがたい事に各お取引先様から多くのご提案を頂けるようになってきており、当社も積極的に仕入れを強化したことで消費者に対してよい提案につながり、V字回復と言ってよい状況になっています。

TXDとの取り組みに成果

─TXDとの連携の進捗や成果は。

 様々な取り組みで連携し、成果も出てきており、足元の業績回復の一因となっています。例えば商品面です。TXDがメーカー様と組んで展開する専売商品である高性能ゴルフクラブ「DANGAN7シリーズ」「キャスコK2Kシリーズ」「バウンンスマジック」などの販売を強化しています。リアルマックスの売り上げに占めるこれらTXDの独自商品のシェアはすでに13%まで達しています。これら商品は他社では買うことができない差別化できる商品であり、拡販することで利益も回復しています。

 また、リアルマックスの独自商品をインフォマーシャルで販売するなどTXDの販路を活用した取り組みも売り上げ拡大に貢献しています。23年10月からリアルマックスの独自ブランド「トゥルーロール」の新商品として、ボールの飛距離を計測するレンジファインダー「トゥルーロールポケットスーパーミニ」のインフォマーシャルの放送を始めました。通常のレンジファインダーに比べてポケットに入れておいてもプレーに支障が出ない小型軽量のコンパクトサイズで価格も1万9800円と同性能機と比べて安価でテレビ通販でも“刺さる商品”と思い、インフォマーシャルで販売することにしました。狙い通り、非常に売れて1年で1万台程度販売できました。「ポケットスーパーミニ」を皮切りに「トゥルーロール」のパター、また、2025年3月には音声で飛距離を教えてくれる機能などを搭載したレンジファインダー「トゥルーロールボイスアイ」のインフォマーシャルも放送しています。

 TXDはこれまでゴルフクラブを中心にインフォマーシャルを展開してきましたが、リアルマックスの商品開発力を活かして幅広い商品をインフォマーシャルに採用し売り上げを高めていこうと考えており、リアルマックスもテレビという新しい販路を活かしてECの売り上げも伸ばしていきたいと
思っています。

 また、TXDとの連携だけでなく、テレ東・BSテレ東のゴルフ番組からリアルマックスの通販サイト「テレ東アトミックグルフ(以下、アトミックゴルフ)」に誘導するなどグループ全体との取り組みも行っています。オリジナルクラブのみを扱っているTXDよりも様々なメーカー様の商品を販売している「アトミックゴルフ」への集客はF2転換しやすいというメリットがありますため、F2施策として最近では通販カタログなど紙媒体でも連携した施策も始めています。

通販カタログでの連携も

─紙媒体での施策とは。

 TXDは「DANGAN7」シリーズなどの購入者に他のゴルフクラブなどを紹介する専用カタログを送付していましたが、24年4月から制作・発行の業務をリアルマックスに移管しました。移管と同時に、カタログにリアルマックスのオリジナル商品の掲載も始めました。TXDの取り扱うゴルフ用品は限られている中で、専門店として様々なものを取り扱うリアルマックスの商品を掲載したことによってF2転換率が好転するなど成果が出始めています。リアルマックスもこれまで紙媒体に挑戦したことはあったが、なかなかうまくいきませんでした。TXDが培ってきたカタログ制作のノウハウやどのような顧客にどのような商品を訴求することが効果的なのかなどスコアリング手法を活用して1年程度にわたって分析してきた結果が奏功してきていると思います。

価格訴求から価値訴求へ テレビの送客効果を最大化

テレビと連携で大きなアクセス

─テレビとの連携は。

 先ほどのTXDがインフォマーシャルで販売している売れ筋商品を「アトミックゴルフ」で販売するという取り組みはもちろん、例えばTXDがBSテレ東で持つゴルフ番組での導線作りも行っています。2024年に番組の中でとある「ティー」を紹介しました。このティーを番組内で紹介した際に「詳しくはテレ東アトミックゴルフまで」とモバイルサイトに誘導する案内を表示しただけでしたが、「アトミックゴルフ」へ大きなアクセスがありました。このティーは4000円近くするもので通常のティーより高いものでしたが、売り上げも大きく伸びました。このほか、インフォマーシャルだけでなく、例えばテレビ東京で放送したアニメ「オーイ!とんぼ」の関連グッズとしてキャディバッグを開発し、当該アニメの放送前後で「グッズを販売しています」などと訴求して、「アトミックゴルフ」へ誘導して販売するなどテレ東がもつIPを活用した商品開発も活性化させています。。

両者の価値観を融合

─TXDとの連携は順調のようです。

 両社で異なる部分はもちろんあり、しばらくは色々と大変でした(笑)。TXDの資本参加の狙いとしては「テレビ(TXD)」から「ウェブ(リアルマックス)」に送客してF2転換していくことでEC売り上げをアップさせていくことでしたが、その前段階として両者のカルチャーもKPIもあまりに違っており、「融合」が必要だろうと。

 例えば、価格訴求を展開してきたリアルマックスの現場からすれば「アトミックゴルフのお客様がDANGAN7を買ってくれないだろう」と思ってい
ました。一方で「DANGAN7」をはじめとしてTXDが扱う商品は価格訴求ではなく、“飛距離が出るドライバー”といった「価値訴求」を行ってきました。両者で“価値観”が異なっていたので、まずは「アトミックゴルフで本当にDANGAN7が売れる」ということを実感してもらう必要がありました。TXDが支援してテレビ広告をどんどん出稿しつつ、時間をかけて「アトミックゴルフ」でDANGAN7シリーズを販売しているという認知をお客様やウェブクローリングにも浸透させて集客を高めていき、1年くらいをかけてDANGAN7シリーズが「アトミックゴルフ」でも売れることを実感してもらいました。

 もちろん、テレビとウェブでは客層は異なります。特にウェブでは価格訴求しか響かないお客様もいると思いますが、価値訴求でご購入頂けるお客様も確実にいるわけです。“お得感”は非常に大事な要素であり、やめるつもりはありませんが競合他社との差別化やTXDとの連携を考えた今後の戦略上、価値訴求がより重要だということを理解してもらうことが大切でした。これを理解してもらうことでテレビからの送客効果を最大限活用することができるからです。そうした理解を進めた後にTXDからのカタログ事業の移管など含めて、次のチャレンジの段階に入っていたという流れです。

ゴルフ市場全体の底上げに貢献していきたい

グループ全体で事業強化

─今後の方向性は。

 TXDはリアルマックスへの資本参加後、まずTXDのオリジナル商品をリアルマックスのウェブでどこまで拡販できるのか。また、リアルマックスが持つ商品開発力をTXDのテレビ通販にどれだけ活かすことができるのかというところに注力してきました。それらがある程度、分かってきてやり方が整い始めました。リアルマックスでもこれまで独自ブランドなど優れた商品を展開していましたが大きく拡販することは容易ではありませんでした。知名度や集客を含めてテレビの力を最大限活用して「アトミックゴルフ」の自社サイトのほか、出店している楽天市場、アマゾンなど様々なECモール店で独自ブランドやTXDの独自商品を含む様々な商品を拡販できるようになったわけです。TXDとしてもゴルフクラブをご購入頂いたお客様に向けてリアルマックスに誘導することで様々なゴルフ用品をご購入頂くことでグループとしてのLTVを高めたい狙いがあります。今後はTXDとの連携をさらに推進してグループ全体で事業を強化していきたいと考えています。リアルマックスとしては、テレビというメディアを活用し価値訴求して拡販できる唯一無二のゴルフ用品販売事業者を目指していきます。

 ゴルフ用品市場の市場規模は3~5%増と一桁台ながらも成長を維持していますが、各社の浮き沈みが明白になってきています。そうした環境の中でテレビ東京グループとして市場を盛り上げる一助になりたいと考えています。

 一環として愛好者の方々にとってゴルフライフがよりよくなるような番組、ゴルフがより楽しくなるような番組をもっと提供していきます。2025年4月から新たなゴルフ番組として「岡田圭右ゴルフのノビシロ~」(テレビ東京で水曜深夜帯、BSテレ東で土曜午前7時半~)と「孝太郎の爽快ゴルフバトル!」(BSテレ東で日曜午前9時~)の放送を開始しました。本気でゴルフを上達させるにはどんなことが必要かということにスポットを当てていく内容です。商品の紹介は行っていますが、これまでのように我々の商品だからというだけでなく、様々なメーカー様のゴルフ用品を色々な角度から紹介したいと考えています。例えば、発売したばかりで話題のゴルフクラブを取り上げて、これまでであればプロが試打した感想などを紹介する流れになりますが、それだけではなくメーカー様の開発担当者に出演頂いて開発秘話などを含めて紹介するなどです。単に通販のための番組ではなくゴルフ愛好者の視聴者にとって、また、ゴルフ用品メーカー様にとっても役に立つ番組を作っていきたいです。

 TXD、リアルマックスの業績拡大はもちろんだが、ゴルフ市場全体の底上げに貢献していければと考えており、その役割を果たしていきたいと思っています。



川島覚(かわしま・さとし)氏
1998年4月にネッツトヨタ中部に入社、2000年7月にオークローンマーケティング入社。2023年2月、テレビ東京ダイレクトに入社。2023年8月に同社事業本部ゴルフ事業部長に就任。2024年8月にリアルマックス専務執行役員を兼任。2024年12月26日付でリアルマックス代表取締役社長に就任した。

◇ 取材後メモ

ゴルフ用品ECに限らずですが、コロナ禍による急激なECの浸透は当時、少なくないEC事業者の業績を押し上げましたが、その後、コロナ収束に伴う反動減や環境の急激な変化は多くのEC事業者を苦しめることになりました。ようやくコロナがもたらした負の影響は弱まりつつありますが、原材料の高騰、円安による仕入れコストの上昇、物流費の上昇などEC事業者にとっては試練の時が続いています。自社の強みをさらに尖らせつつ、状況を打破するための新たな一手をどう打っていけるかが生き残りのカギになっていくでしょう。そういった意味ではやはりコロナ禍を経て一時業績が落ち込んだ老舗ゴルフ用品ECのリアルマックスが連携先に選んだテレビ東京グループとどうビジネスを再び成長させていくのかは1つの答えになりそうです。これからの同社の一手を注目したいです。

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