ZOZO(ゾゾ)は4月9日、アフィリエイトモデルのオンラインファッションプラットフォーム「LYST(リスト)」を手がける英LYST社の全株式を、同国に設立する子会社を通じて取得することを決めた。買収額は約231億円で、取得日は4月30日を予定する。ゾゾはこれまで自社テクノロジーのライセンス提供を中心に海外市場の開拓を進めてきたが、LYST社のM&Aを機にEC・メディア領域を含めて欧米での事業基盤を確立したい考え。ゾゾは、課題だったグローバル市場での成長を加速する目的で、同社と同様に「ファッション」と「テクノロジー」に強みを持つLYST社の完全子会社化を決めた。
オンラインファッションプラットフォームの「LYST」は世界で年間1億 6000 万人が利用している
2010年にロンドンでスタートした「LYST」は、カジュアルからラグジュアリーまで世界の2万7000以上のブランド、9700万SKUの商品情報を集約し、独自のレコメンドAIがユーザーに最適な商品をマッチングするオンラインファッションプラットフォームだ。利用者が遷移先の通販サイトで商品を購入すると、パートナー企業から成果報酬型の手数料を得るビジネスモデルで、LYST社は在庫を抱えていない。遷移先は海外ファッションブランドの直営通販サイトに加え、「ファーフェッチ」などのECモールとも連携している。
現在、「LYST」は190カ国で展開しており、主要なマーケットはアメリカ(30%)、英国(24%)、欧州(34%)となり、年間利用者数は1億6000万人、年間購入者数は220万人、平均注文単価は6万3000円で、欧米を中心に人気のサイトだ。また、3カ月ごとに発表する注目ブランドと商品のランキング「LYSTIndex」はファッション業界でも影響力を持つという。LYST社の2024年3月期の連結売上高は5000万ポンド(約93億8000万円)、当期純損失は100万ポンド(約1億8800万円)だった。
ゾゾは、自社で蓄積したEC運営のノウハウ、計測技術やAIを活用したアセットをLYST社に組み込むことで、トレンド分析やスタイリング提案を含め、同社の事業基盤の強化やサービスにおけるユーザー体験の向上などに取り組む。
また、LYST社を軸にした新規事業の創出を図るほか、さらなるM&Aを通じた成長を目指す。運用面ではシステム基盤などでスケールメリットの追求も見据える。
なお、株式取得後もLYST社はエマ・マクフェラン氏がCEOを務め、英国を拠点に独立した事業運営を行うという。
グローバル展開を加速
国内のファッションEC専業モールとしては圧倒的な強さを見せているゾゾ。2024年3月期の全体の商品取扱高は前年比5.5%増の約5743億円、主力であるゾゾタウン事業の商品取扱高は同6.7%増の約4647億円に拡大し、25年3月期は全体で同6.1%増の約6092億円、ゾゾタウン事業で同6.5%増の約4951億円の商品取扱高を見込んでいる。一方、海外マーケットの取り込みという点では“積極的に”とは言い難い状況が続いている。
ゾゾでは、ボディーマネジメントシステムの「ZOZOFIT(ゾゾフィット)」や、事業者向けの計測業務効率化サービス「ZOZOMETRY(ゾゾメトリー)」などのサービス展開に加え、2023年に掲げた中長期的な収益拡大方針のひとつである「テクノロジーの収益化」の一環として、海外の有力なプラットフォーマーに向けたライセンスの提供などに取り組んできた。
現状、海外のファッションEC市場においても、熾烈な価格競争や送料の優遇競争、返品条件の緩和競争などの影響からファッションECビジネスの収益性悪化やブランド価値の毀損などが課題となっており、ゾゾではLYST社のM&AによってテクノロジーとUXを追求し、新たなファッションの楽しさを追求するフェーズへと進化させることで、消費者と業界がともに発展できる持続可能な未来を目指すとしている。