価値に見合った妥当な金額をいただく【向畑憲良 GMOメイクショップ代表取締役社長】

GMOメイクショップが提供する通販サイト構築システム「MakeShop(メイクショップ)」。他社のものに比べて多機能なのが特徴だ。2013年の1年間で「メイクショップ」を利用するネットショップの流通総額が1108億円と、1000億円の大台を突破。今年もさらなる成長を見込んでいる。無料で通販サイトを構築できるサービスなどが台頭してくるなか、同社は強気に真逆の戦略をとっている。向畑社長に同社の強みや今後の展開などについて聞いた。(聞き手は本誌・比木暁)

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年間流通総額で
1000億円超に

今年の流通総額は1300億円が目標

──「メイクショップ」が流通総額1000億円という大台を突破したわけですが、そもそもこのシステムの提供を始めた理由は何でしょうか。
当社が事業を始めた2004、05、06年ぐらいはネットショップASPが多く出てきた時代です。当時はいわゆるショッピングカートと言われるものでした。それが我々のものは、バックエンドの部分の管理も、フロント側のほうもすべてが一体化したワンストップのサービスを提供していました。要はデータベースとCMSが一緒になったものです。商品登録をしていくと、フロントの方で商品ページが自動で全部できていきますし、さらにCMSもデザインのカスタマイズができるというようなモデルです。
先行者として他社さんなどがパッケージのサービスを手がけたり、量販店などに行くとネットショップ開業のようなパッケージソフトを売っていて自分でショッピングカートをインストールするようなモデルなどがありました。
──現在、「メイクショップ」は多機能ということが大きな特徴となっていますが、サービス開始時からそこは目指していたのでしょうか。
もともとは「メイクショップ」というソリューションは韓国にあったサービスで、それをローカライズして日本に持ってきたのが始まりでした。ですから最初の段階から「メイクショップ」は高機能だったので、その次の段階として「圧倒的高機能」を目指すということをやってきました。
──より高機能になるに伴って、ターゲットとなる導入先に対しても本気度を求めていくという傾向はありましたか。
はい。我々としてはマーケティング的な観点で言うと、個人・法人ではなく、「本気でやるネットショップ」というのを定義していました。個人も法人も関係なく、本気度の高いお客さんの要望に応えていこうとすると、必然的に高機能にならざるを得なかったという側面があります。実際、マーケットインでの開発が非常に多いですから。
──去年1年で大台を突破しました。
そうですね。1000億円を超えたのは、本気のネットショップを支援してきた結果だと思っています。ショップさんたちも実力がついた方々が多いということですね。今年の流通総額の目標は1300億円くらいです。
他社とは逆に値上げ
──今後についてはGMOメイクショップとしての目標は何でしょうか。
ネットショップASPが当社のサービスですが、これにとどまらないというのが今後の方向性です。周辺の領域まで事業展開していこうと思っています。
──「メイクショップ」がコア事業であるのは変わらずに?
はい。ネットショップASPというのは結構狭い領域と思っていますが、その周辺領域は多いと思っています。そこにおいて一足飛びに関係ない畑違いのことをやるということではなく、軸足は「メイクショップ」に置きながらですが。
──具体的にはどういったことを行うのでしょうか。
まだ言えませんが、例えば新しい取り組みとして大手さん向けに上位のプランを提供しています。それはカスタマイズまで行い、既存のシステムとの統合も手がけています。月額費用が5万円や10万円するようなプランです。
他社が無料にしたり値下げしていく中で、当社は逆に値上げしています。フリープランなどは廃止しようと思っているくらいです。
月額0円のフリープラン、3000円のビジネスプラン、1万円のプレミアムプランがあるのですが、昨年末から0円と3000円のプランは申し込みできなくしました。
──強気ですね。
強気というか、そういうのがビジネスの本質だと思っています。例えば、工業製品などでも付加価値がないものはどんどん安くなってきます。3年前に40万円で買った大きい液晶テレビが今では10万円で買える、ということがあるじゃないですか。それはパソコンにおいても同じで、ハードやメモリーの価格はどんどん安くなっていって、要するにハードに近いものであればあるほどデフレ化していくと思います。
我々が提案しているのは単純にシステムと言ってもアプリケーションで、しかもそこにはノウハウが詰まったECソリューションなので、高付加価値商品です。社内でも「初期費用無料のキャンペーンをやりたいです」と言ってきますが、絶対にやらせません。そうではなくて1万円で売ってくるように知恵を使えと。逆に1万円の付加価値を提供できるようなサービスであり続けるように我々は努力すべきなんです。そこにこだわってやってきています。
──ヤフーショッピングの無料化や、通販サイト構築サービスでは無料でサイトを作れる「ストアーズ・ドット・ジェーピー」や「ベイス」などが注目されていますが、明らかに方向が逆というわけですよね。
確かに周りに無料のサービスなどが出てきて、デフレ化していくような流れですが、我々はそういう考え方ではないということです。つまり価値あるものを提供して、価値に見合った妥当な金額をいただくということです。
1万円を払い続けてもらって、その中で我々はもっと価値あるものを提供しているんだという表明として、0円を申し込みできないようにしただけでなく、今度は5倍となる5万円に値上げしたり、「奉行シリーズ」と組んで、初期費用30万円のサービスを開始しました。
今後は、オムニチャネルなどもそうですが、リアルとの連携というのが不可避になってきます。当社としても、ネットショップASPの枠を超えて、価値あるサービスを提供していきたいと考えています。

独自ドメインも伸びていく
──EC市場の伸びと、「メイクショップ」が流通総額1000億円を突破したことはリンクしている気がしますが、EC市場の伸びについてはどういう風に感じておられますか。
まだまだ伸びしろは大きいです。しかし、これはチャネルのシフトでしかありません。全小売市場自体が伸びるかとなると、伸びていないです。横ばいからの、やや減少ですよね。これは人口が増えていかないといけないでしょうし、もしくはGDPというか日本の経済自体が大きくなっていかないことには伸びないでしょう。
その中で小売市場のチャネルはリアルもあります。例えばデパートは減っていって、コンビニだけが伸びていってという流れがあり、コンビニも横ばいになりました。そうした既存のチャネルがネットにシフトしてきています。EC化率は今5%なので、95%はまだ伸びしろがあります。我々がリアルに生きている限り、全部がネットにシフトするわけではないので、シフトしてEC化率が10%になるのか20%になるのかは分かりませんが、いずれにせよ伸びしろは滅茶苦茶あると思っています。
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