人気ブログを起点にモバイルで”フリーマーケット”を──。モバイルコンテンツ事業を手がけるクルーズが4月20日にモバイル専用サイト「フリーマーケットコレクション(フリコレ)」を立ち上げた。ユーザーは自分の「お店」を作り商品を簡単に出品できるのが特徴で、デコメール(デコメ)や自分の好みの画像などを店の「看板」のように使って自由にデザインしたオリジナルショップを開店。自分が使用した衣料品やアクセサリーといった商品を販売したり、別のショップで商品を購入できる仕組み。”フリマ”サイト運営にあたっては、同社が手がける若年女性層向けモバイルブログを活用。人気ブログと連動した仕掛けにより新サイトへの集客につなげる狙いだ。
サイト立ち上げの”ミソ”は若年女性が集まる巨大ブログ
今回の「フリマ」サイトを開始するにあたり、”ミソ”となるのが同社のモバイル専用ブログ「CROOZブログ」だ。
同ブログの開始は2004年。立ち上げ時はモバイルでのブログが珍しかったこともあり、「PCは使えないけどモバイルでメールは打てる」といった女子高生らから人気を集めた。メールの本文に文字を打ち、それを送信するとそのままブログにアップされるという機能や、お気に入りのブログが更新された際にメールでお知らせが来るといった今でこそ当たり前に行われているサービスだが、当時それをいち早く開始した。
結果、PCは苦手だがモバイルならよく使うという女子高生らがどんどん集まってきた。その後、プロモーションや有名タレントの起用といったことを一切せずに、女子高生の間で「くちコミ」で広まっていった。こうした同年代の女性が集まる場には、自分をアピールしようとモデルやショップ店員が現れ、それがさらに同世代女性の人気に拍車を掛ける──といった”増殖”の循環が生まれるというわけだ。
女性高生の感覚をモバイルの「物販」に取り入れる
現在では、人気雑誌の読者モデルやショップ店員が多数利用しており、女子高生などを中心に10~20歳代前半の女性から支持を得ている。会員数は570万人で、月間のページビュー(PV)が16億に達する”巨大ブログ”に成長した。
読者モデルや人気ショップの店員らは、「ブロガーとして女子高生などの”オピニオンリーダー”のような役割を担っている」(対馬慶祐人事総務部長)という。クルーズでも彼女らと定期的に連絡をとり、企画会議などに出席してもらっている。今回の「フリコレ」もそうした意見を踏まえて誕生したという。「モバイルを使った物販の感覚というのは女子高生から20代前半の女性が最も敏感。その観点を大切にしています」(同)とする。
有料コンテンツの課金収入が事業の軸となっている同社だが、一方で「モバイルでの物販にはまだ可能性がある」(同)という”読み”も持っている。そしてモバイルで「物販」を手がけるにあたり一定の層から大きな認知を得ているブログは最大の強みとなる。
現在、ブログページの下に「フリコレ」のリンクを貼るなどで集客対策を行っているほか、スタート時は「特設ショップ」を作り、「CROOZブログ」の人気ブロガーら12人が参加し出店してもらうという試みも実施している。こうした動きがきっかけとなり、一般ユーザーの参加につなげたい考えだ。
立ち上げ時は手数料無料で初年度25万人の会員獲得を目指す
巨大ブログという大きな”武器”を持つ新サイトだが、メーンユーザーである若年女性層の”増殖”を狙って、彼女らが手軽に利用できる仕掛けが施されている。
例えば先述したように、ユーザーが自由に自分のオリジナルショップを作り商品を簡単に出品できるほか、価格もユーザーが自由に設定し、商品の画像はモバイルで撮影した写真をアップロードするという仕組み。使用できるデコメの種類は40~50種類程度という。
また、「フリコレ」ではオークション形式での販売も可能だ。ユーザーが商品の販売時に「フリマ」と「オークション」の販売方法のうち、自分が希望する売り方を商品別に選択できる。オークションの期限は最長で8日間。期限が来た時点で最高価格を提示したユーザーが落札するが、出品時に指定した最低落札価格を満たさない場合は期限を延長する。出品されている商品画面の下に「入」という”入札マーク”が付いたものがオークション形式での販売で、マークがないとフリマ形式という判別の仕方をとっている。フリマでは、出品者が設定した金額は変わらないため希望者が購入を決めると「即決」で取引が成立する。
取引成約後の配送や決済といったバックヤードについては、2パターンの方法から選択できる。1つは売り手と買い手の間で直接やり取りする方法。2つ目は、ユーザーのどちらか(あるいは両方)が匿名での商品の受け渡しを希望した際にはクルーズが仲介役となる。クルーズの指定口座に購入者が入金、それを確認後クルーズから出品者に入金確認を伝え、商品をクルーズの提携先の倉庫に発送し、購入者宅へ配送するという仕組みだ。
「フリコレ」では商品の出品や購入に当たっては手数料を徴収しない。開始当初はユーザーの数を増やし、取扱商品の充実を図りたいという思惑が背景にある。ハードルを低くして集客を高めていくというわけだ。もっとも、状況を見て将来的には何らかの形で売買に対して課金していくもよう。当面は会員の獲得に務め、初年度で会員数25万人を目指している。
人気ブログと同様に”自己増殖”的な展開を期待
人気ブログ「CROOZブログ」がその誕生から現在に至るまで、くちコミで広がっていったように、「フリコレ」の今後についてもクルーズは「あくまでユーザーが大きくしていく」とし、会員数の拡大に伴って商品数が増加するといった”自己増殖”的な展開を期待しており、その行く末が注目される。