家具・インテリア通販サイトの「FLYMEe」を運営しているフライミーでは2024年7月期の売り上げが増収となり、2011年の創立以降、毎年増収増益を果たしている。昨年度は急激な円安や原材料価格の高騰などを受け、一部商品で価格改定による影響が見られたものの、引き続きBtoBでの需要獲得が奏功し、売り上げをけん引した。
現状、同社では通販サイトのほか、公共施設や店舗、オフィス空間向けのBtoBでの販売が増加しており、22年には、通販サイトのフライミーに訪問した法人顧客やデザイナーなどに対して、ECの枠を超えたソリューションを提供すべく、専業の子会社としてフライミープロパートナーズを設立。同子会社の認知拡大も相まって、既存だけでなく、新規でも需要開拓が進んでいるようだ。
国内市場を見ると2023年にはコロナが5類に移行し、テレワークからオフィス回帰に向けた動きが一気に進んだ。同社によると、2年近くが経過した今でも、オフィス環境を新たに整備する需要が根強くあるという。「出社の意義が見直され、オフィスへの投資を進める会社は多い。その中で社員の出社動機を上げる空間づくりがしたいとする動きを感じている」(坂本如矢社長)と説明。それに伴い、旧来のオフィス家具以外の商材を求めて同社への受注は引き続き伸長しており、今後、2、3年先まで市況が好調に推移するところが明確に見えているとする。
また、近年は、業界全体で急激な円安基調と、木材などの原材料価格の上昇を受けて、商品価格を改定する動きが一つのトレンドとしてある。同社で取り扱う商品についてもブランド側の値上げに伴い、全体的に販売価格が1割以上は上昇したという。その中で、「きちんと市場を捉えたマーケティングや価格設定を行うメーカーは堅調に伸び、そうでないところは露骨に数字が落ちてしまう傾向が見られる」(同)とし、ブランドごとで明暗が分かれているようだ。
加えて、価格帯が上がってきたことによって、従来までのシンプルで画一的なデザインの商品に関しては、競合商品との差別化を図ることが難しくなり、苦戦している傾向も見られている。機能性も含めてプラスアルファの提案をできる商品でなければ、今は選ばれることが難しい状況になってきたとする。
現状、同サイトへは、新興も含めて、適切にブランディングできる売り場を求めたブランド側からのアプローチが絶えない状況にある。とりわけ、ネットでの販売をあまり行っていなかったような希少な人気ブランドも毎年集まってきているため、それが売り上げ拡大の要因にもなっているようだ。
ブランド側から売り場として支持される理由の一つには、デザイン上の美しさだけでなく使い勝手まで配慮されたUI・UX設計がある。加えて、販売店としてカスタマーサポート機能を有していることも評価されているという。「ブランド側も様々な思想・し好を持っているため、(売り場が)それに対する理解やリテラシーが無いと難しい」(同)と語り、ブランドのイメージを崩さずに、持っている意思をサイト上でうまく体現できる環境を持つことが大きな鍵になるようだ。
そのほか、家具以外の面でも新たなサービスが始まっており、23年11月には贈答・ギフト需要向けの通販サイト「FLYMEe GIFT SALON(フライミーギフトサロン)」を開設した。元々、フライミーにおいて家具以外にも時計や雑貨類を取り扱っていたが、同ギフト事業では贈呈シーンに特化した商材を販売。インテリア商材だけでなく、酒類の販売を開始するなど、今後もラインアップが拡大していく予定だ。
なお、今後の家具EC業界の展望としては、「メーカー・ブランドは流通を考えなければいけない時代にはなっている。ただ単に販路の『面』を広げれば良いのではなく、『商品力』 と『販路選択』の勝負になっている。どう流通させていくかの販路選択をきちんとやらないと生き残れない時代なのでは」(坂本社長)と分析。
海外市場動向などの外的要因を受けて、短期間で為替や原材料コストが大きく変動する中、自社のプライシングやマーケットでの立ち位置を適切に見極める判断が必要になるという。そうした中で「プラットフォームとしての信用、信頼性を上げる意味でも、商品の精査は引き続き行っていく。流通に対する意識が高いところとの関係は今後も大事にしていきたい」(同)とした。