日本酒のウェブメディア「SAKETIMES(サケタイムズ)」を運営するClearは、6月中をメドに日本酒のEC事業を始める。サービス名は「SAKE100(サケハンドレッド)」で、”100年先の未来にあるべき価値”を持つ高付加価値のオリジナル日本酒を開発、販売する。
同社によると、日本酒の消費量はピーク時の3分の1以下に縮小。とくにパック酒(普通酒・本醸造酒)と呼ばれる安くておいしい酒の消費が減っているが、純米酒や吟醸酒といった高単価品は伸びる傾向にあるという。また、近年は輸出額も年率20%程度で伸びているが、量的拡大よりも単価上昇の影響が大きいと見られている。
日本酒は国内外で高単価品のニーズが増えているものの、日本酒メーカーは地元密着型の薄利多売の商いがほとんどで、高単価品市場が未発達という。また、飲食店や酒屋の立場が強いため、卸先からもコスパの良い日本酒を求められる傾向にあるようで、「高単価の土壌ができつつあるのにプレイヤーがいない」(生駒龍史社長)とし、同社ではギフト需要も見据えて日本酒の高価格帯市場を開拓する。
第1弾商品としては精米歩合18%のオリジナル日本酒「百光―byakko―」(720ミリリットル、税・送料込1万7800円)を開発し、クラウドファンディングサイトの「マクアケ」で4月18日から期間・数量限定で先行予約を受け付けたところ、開始3時間で100万円を突破。5月下旬の期間内に約160人がサポートを表明し、目標額の100万円に対して約400万円を確保した。
ただ、同社が「マクアケ」を活用したのは資金調達のためではなく、同サイトを介して潜在顧客が興味を示すメディア・媒体での露出拡大が目的で、「サケハンドレッド」の主要顧客層に位置づける日本酒ビギナーの中でも文化的リテラシーが高い層を開拓する狙いだ。
実際に「マクアケ」で同社新事業のサポーターになったのはファッション系やIT系企業に勤める人や経営者が多いようで、一定の成果を得ているほか、自社メディア「サケタイムズ」で抱える約22万人の読者も情報感度が高い層のため、ターゲットに据える。
日本酒の販売は無在庫型ECで展開。酒蔵にオリジナルの日本酒を生産してもらい、商品管理と発送業務もメーカー側が行う。同社は購入代金を得てから酒蔵に支払うスキームとし、キャッシュフローの安定化を図る。第1弾の「百光」は約1600本を製造してもらう契約という。また、第2弾、第3弾のオリジナル日本酒は「百光」よりも手が届きやすい6000~7000円程度となる見込みだ。
最近は、自社で製造設備(蔵)を持たない”蔵なし”日本酒のベンチャーが登場してきているが、小さなメーカー・酒蔵と組むケースが多く、事業をスケールさせるのは難しいという。Clearでは、大手メーカーの日本酒を販売することができる旧酒販免許を持つ酒屋の買収計画を進めており、EC事業を大きく育てるための下地も整備していく。
また、海外向け販売も視野にあり、三菱倉庫と組んで年内にもトライアルに乗り出す。まずはマカオや香港、シンガポールなどを対象に輸出実績を積み、中国市場もターゲットに据える。中国でもクラウドファンディングサイトなどを活用して認知を広げることも考えており、まずはEC事業で5年後に売上高15億円、営業利益3億円と株式上場を目標に掲げる。
Clearでは4年間のメディア運営を通じ、消費者目線で”良い日本酒”の情報を持つほか、業界内のネットワークも武器に、「今後は情報を発信するだけでなく、日本酒を飲んでもらうところまでもっていきたい」(生駒社長)としている。