厚生労働省、サプリメントの規制検討へ――食品衛生法改正議論で「定義」テーマに

  「サプリメント」が法的に定まることになりそうだ。厚生労働省は食品衛生法の見直しに関連して、定義と規制のあり方を俎上にあげる。対象が定まることで製造等のルールが設けられる公算が高い。単に規制強化では業界の反発も予想され、機能性表示食品など既存の制度との整合性も問題となる。議論の展開次第では「サプリメント法」へと繋がる可能性もある。法的な検討が始まることで通販を中心とする1兆2000億円のサプリ市場は転換期を迎える。

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「サプリ規制の在り方」検討課題に

 「食品業界の実態を踏まえつつ、サプリメントに関する規制の在り方、許可業種や営業許可施設の基準の在り方などについて、必要に応じて検討を進める」。紅麹事件を受けた2024年5月の関係閣僚会合の検討課題だ。これを踏まえ、25年10月に厚生労働省が開いた厚生科学審議会(食品衛生監視部会)でサプリメントがテーマとして浮上してきたことになる。法的な受け皿は食品衛生法。同法は監視が厚労省。基準が消費者庁の役割となっており、両省庁の協業となりそうだ。

 厚労省健康・生活衛生局食品監視安全課の今川正紀課長は「さまざまな意見があることは重々承知しているが、すべてを満たす制度はこの国に限らずできない。すべては議論しなければ分からない」とする。

 議論の一丁目一番地はサプリメントの定義だ。これまでは「いわゆる健康食品」という妙な呼び名が、これに相当していた。ただ、具体的な定義となると絞り込みは難しくなる。

生監視部会でサプリメントの定義が遡上にあがった。(会合のようす)

 米国のサプリメントの定義は1目的(通常の食事の補完)2形状(カプセル・錠剤等)3成分(ビタミン、ミネラル、ハーブ等)─の3つ。ただ、これらを総合的に判断して事業者側が自ら「サプリメント」と名乗る。サプリとなれば、使用原料、製造管理などの規制を受けるが、簡便な形で機能性表示が可能でメリットの方が大きいからだ。

 これら先行事例を踏まえ、先の三要件の組みあわせなのか。新たな要件を用いるのか。広すぎても狭すぎても定義の意味はなくなり、知恵の絞りどころであろう。

営業許可、健康被害報告など規制強化か

 検討課題の通り、紅麹事件から派生していることもあり、定義化で一定の規制が加わることは不可避だろう。では具体的にどうなるのか。食衛法では「製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品」について、許可基準を定め営業許可必要となる。

 これについては政令で飲食店営業など32業種が指定されている。サプリは法的定義がなく、また腐敗や品質劣化による公衆衛生上の危害の可能性も低かったため、対象外だった。今回、これにサプリが追加され、製造基準等を設けて許可制となる可能性がある。これは販売側というより、製造側の負担となろう。

 もう一つは健康被害の観点だ。同法8条で「食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分(=指定成分等)」について、健康被害情報の報告を義務化している。これにサプリメントを加える可能性もあろう。こうなると販売側には大きな影響が出ることになる。

期待と不安入り混じる事業者

 サプリ定義化の上、「営業許可」「健康被害報告」など過大な規制だけが科され、何のメリットもないなら業界からの強い反発も予想される。既に紅麹事件では機能性表示食品で規制強化されており、特に営業許可に際しては保健所への申請と施設検査が必要となり、消費者庁で実施しているGMP立入検査との二重規制ともなりかねない。米国の法律は、「機能性表示」という大きなメリットがあるからこそ、事業者はサプリメントの枠組みに入っている訳だ。

 では事業者は今回の件をどう受け止めているか。「議論が行われることは好意的に受け止めている。サプリメントの領域は依然として悪質事業者が多い。上場企業でもマーケティング偏重の企業はある。一定の規制強化はやむを得ない」(通販A社)、「規制強化の懸念はあるが怪しいイメージの払しょくに必要なプロセス」(通販B社)という声が聞かれた。

 一方、「食衛法の18年改正で『食品関連事業者の届出制』が入り施行した。『サプリメント取り扱い事業者』として明確にすればいい。届出でよく、許可業種には反対。事業者の把握より重要なのは市場にあるサプリの把握。定義を定め、製品の届出制、将来的なデータベースの構築を期待したい」(通販C社)、「問題はいわゆる健康食品には規制ばかりで機能、目的を全く表示できない状況が変わらないこと。商品目的を告げずに販売することは不健全」(通販D社)、「販売目線では業界の信頼向上に伴う事業拡大の可能性、販売のリードタイムの遅れ、許可取得、体制整備のコスト増につながる不安と期待がある。事業者の自主性からの転換に不安は大きい」(通販E社)と期待と不安が入り混じる。

 こうした中で業界の意見を集約した意見表明も注目だ。機能性表示食品の発足時や紅麹事件では日本通信販売協会サプリメント部会が検討会に出席した。ファンケルやディーエイチシー、サントリーウエルネスなどサプリ大手が揃っており、今回も出番であろう。

 健康食品産業協議会、日本健康・栄養食品協会も対応する必要がある。業界団体で足並みをそろえることが出来るかもポイントだ。

サプリメント法制定の道筋も

 「食衛法では法律の建付け上、公衆衛生面の規制しか出来ない。ただ、サプリの定義でサプリメント法の布石とはなりうる」。厚労省のOBはこう話す。

 一方で今回の動きが一気にサプリメント法に繋がる可能性を指摘する向きもある。理由は立憲民主党、日本弁護士連合会が「サプリメント法」の必要性を訴えているからだ。一部消費者団体もこれに同調している。ただ、これらは、原料・製造規制に加えて、表示規制も加わる規制色の強いもので業界振興の視点に欠ける。日本通信販売協会は2014年時点からサプリメント法を提唱しており、この機を生かせるも注目だ。

 サプリメントの定義や食衛法の改正となれば、世間の注目を集め、国会での審議も行われる。少数与党や連立組み換え、高市政権の誕生など、激しい政治の動きもこの問題を左右するファクターとなる。いずれにせよ、歴史的な動きになることは確実で、来年にかけて、サプリ業界の最大のトピックとなる。

過剰摂取、長期摂取、監視の観点も

 サプリメントの定義を検討課題とした第1回の会合では、厚労省の大坪寛子健康・生活衛生局長は、「サプリメントの定義がないという宿題が残っている」として重要課題に捉える。部会では、サプリメントの規制のあり方について、1定義、2製造管理のあり方、3事業者の健康被害報告─について議論することを明らかにした。

 厚労省は、年内は月1回のペースで会合を行う予定。論点を整理し年明けに検討を本格化する。必要に応じて関係者からヒアリングも行う。

 消費者庁の食品衛生審議会も並行して検討を進める。定義について「規制のあり方に伴い議論するもの。形状の範囲、監視の側面など厚労省と連携し、一体的に取り組む」(食品衛生基準審査課)とする。現時点で具体的なスケジュール、検討課題は「厚労省と
調整中」(同)。「できる限り早く」とするが、年内に会合を行うかも決まっていない。

 厚労省部会ではサプリメントの定義について、「摂取が比較的長期に渡り、直ちに食中毒と判断できない場合がある。長期摂取の視点、サプリメントという特殊な形態に特化した議論が必要」と、厚労省側が問題意識を示した。委員からは、「子供の摂取、過剰摂取リスクの対応が必要」(医薬基盤・健康・栄養研究所・滝本秀美理事)といった観点が出た。

 グミや飴、粉体など形状が多様な食品とサプリメントは形状のみの区分は難しい。目的や成分、摂取方法などと組み合わせた観点での議論が必要になりそうだ。食衛法上の許可業種、届出制、「指定成分含有食品制度」など業種の区分を含めどう確定するかが論点になる。

 健康被害報告の対応では、「健康被害の発生に迅速に対応するための厚労省と消費者庁の連携体制が必要」(日本医師会・藤原慶正常任理事)といった意見もあった。

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