「楽天オプティミズム」が4年ぶりリアル開催――「戦略共有会」ではクーポン有料化を発表

 楽天グループは8月2~6日、横浜市の「パシフィコ横浜」で、体験イベント「楽天オプティミズム2023」を開催した。4年ぶりのリアル開催となった今回は、5日間で10万6000人が来場した。

スポンサードリンク

クーポン利用急増で過負荷

 2日には、同イベント内で仮想モール「楽天市場」出店者向けの「2023年下期戦略共有会」を開催。同社の松村亮常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーシニアヴァイスプレジデントが、出店者向けのクーポンサービス「ラ・クーポン」を24年4月から有料化することを公表した。

 コロナ禍を受けて、急速にクーポンの利用が増え、クーポン関連のシステムへの負荷が高まっているのが理由。楽天市場ではラ・クーポンの開始以降、店舗のクーポン利用料を無料とするキャンペーンが続いていた。今後はクーポンの機能を強化することで、店舗とユーザーにとって、より使い勝手の良いサービスにしていくという。

 同社によれば、2013年と比較すると、楽天市場においてクーポンを利用した受注数は約20倍になっているという。安定的にサービスを提供し続けるためにも、さらなる投資が必要と判断し、24年3月末での無料キャンペーン終了を決めた。

 発行したクーポンをユーザーが利用した場合、値引き後の金額に対して、2%をシステム利用料として徴収することが規約で定められている。ただ、この料金体系では店舗の負担がかなり重くなることから、8月末にも新たな料金を、店舗向けサポートニュースで発表する予定。例えばアマゾンの場合、クーポンが利用された場合に出店者が支払う利用料は、1回あたり60円となっている。注文額をベースにするか、1回あたりの固定料金にするかなど、詳細はこれから決めるという。

 同社によれば、ラ・クーポンは、ファッションジャンルやグルメジャンルの店舗などが多く利用している。ポイントは20倍までしか付与できないことから、半額の値引きセールなどを行いたい場合にクーポンが使われるという。

セグメント機能拡張

 今後の機能強化としては、まずユーザーセグメントの機能を拡張する。現状は楽天の会員ランクを指定したクーポンを発行できるが、それ以外のセグメントはできない。新規ユーザーだけが使えるクーポンや、リピーターだけが使えるクーポン、性別を限定したクーポン、誕生日のユーザーのみ使えるクーポンなどを発行できるようにする。

 また、クーポンが利用できる商品の指定数を拡大するほか、クーポン発行後にユーザーから見えなくする設定を可能にするなど、機能を拡充する予定。

 さらにユーザー向けサービスとしては、楽天市場などのクーポンをワンタップで獲得できるサイト「わくわくクーポンランド」を7月に立ち上げており、楽天市場からの導線を強化することで、クーポンの獲得を促す。

 松村常務執行役員は「クーポンの機能をもっと充実させることで、店舗にとっても、ユーザーにとっても、使いやすいものに進化させていきたい」と述べた。

「急がない便」導入へ

 戦略共有会では、配送関連の新機能も発表された。2024年問題も見据えて、月に最短配送可能日の表示を開始。購買転換率が13%改善した。8月3日には買い物カゴの仕様を変更し、ユーザー自身が届く日時を選ぶ仕組みとした。また来年以降には、配送を急いでいない顧客向けにはポイントを余分に付与する「急がない便(仮称)」の提供も検討している。

 24年6月には、配送品質が高い商品を優遇する仕組みとして、基準を満たした商品に「配送認定ラベル」を付与する「配送品質向上制度」を開始。楽天市場内商品検索の検索順位決定の要素の一つに含めることを予定している。ラベルの認定基準については、店舗基準が「納期順守率96%以上」「6日以内の配送件数比率80%以上」「出荷件数が月に100件以上」「送料込みライン導入」、商品基準が「いつでも出荷可能(年末年始と月1回の休業日除く)」「午前の注文については翌日届けを、午後の注文については翌々日届けを可能にする(土日祝日は午前9時までの注文を翌日届け、午前9時以降の注文を翌々日届け)」「日付指定可能」となっている。

 4月に導入した、SKU対応による商品管理については、7月現在で51%の店舗が対応。来年3月までには移行を完了する予定だ。SKUへの移行により「商品検索がやりやすくなるほか、商品ページも価格別表示ができるようになるなど、ユーザーの買い物体験が向上する。すでに1万ページ以上の商品ページが対応しており、ユーザーからも『使いやすくなった』という声をもらっている」(松村常務執行役員)。

 近年注力しているライブコマースに関しては、ファッションや化粧品で成功事例が積み上がっているという。松村常務執行役員は「こうした事例を横展開しながら、楽天市場全体の売り上げ規模増加、売り方の多様化を推進していきたい」と述べ、商品ジャンルに特化したライブコマース企画を拡大していく方針を示した。また、ライブコマースを視聴しながら買い物ができる新機能を6月に導入するなど、機能面の改善も進めている。

AIで効率を20%向上へ

 楽天オプティミズムでは、国内外の識者らによる講演を行うビジネスカンファレンスを実施。同社の三木谷浩史社長も基調講演を行った。

 三木谷社長は「人工知能(AI)が世の中を変えている。これはインターネットの出現やスマートフォンの出現を上回るような大きなことではないか」と指摘。「単純にインターネットショッピングが変わるとか、教育が変わるとかいうより、AIは社会の構造自体を大きく変えていくのではないか」と予測した。

AI 活用や楽天モバイルについて語る三木谷浩史社長

 その上で、生成AI「チャットGPT」を提供するOpenAI社との提携を公表。三木谷社長は「(生成AIを活用することで)マーケティング効率とオペレーション効率を20%アップしたい。そして何よりも大切なことは、AIの力を使ってユーザー、小さな会社、大きな会社、あるいは国、地方公共団体をエンパワーメントしていく。つまり、国全体の効率を20%上げるという大胆な目標を設定し、臨んでいきたい」と意気込みを述べた。さらに、OpenAIのサム・アルトマンCEOもオンラインで登壇した。

 また、携帯電話サービス「楽天モバイル」に関しては、MNO契約前とMNO契約後の楽天市場流通総額を比較すると、契約後の年間流通総額は約53%増えているという(2020年4月~22年7月にMNO契約したユーザーを対象に、契約前12カ月と22年7月~6月の流通総額を比較した数値の加重平均)。

 さらに、1年間での平均サービス利用増加数については、MNO契約ユーザーの2.58に対し、未契約ユーザーは0.43となっており、クロスユースも進んでいる。「楽天モバイルに入るだけで、年間で約4万3000円、将来的には5万円、6万円余分に買ってもらえるとともに、ロイヤリティーもどんどん上がっていくということだ」(三木谷社長)。

自治体によるブースも

 楽天オプティミズムでは、AIやVR・ARなどの最新テクノロジーと楽天エコシステムを体感できる体験イベント「フューチャーフェスティバル」も実施した。

 楽天市場出店店舗の商品購入やグルメを楽しめるコーナー「楽天市場パーク」や、ふるさと納税のポータルサイト「楽天ふるさと納税」に出店する13の自治体がブースを構え、人気返礼品を使ったグルメや酒などを提供する「ふるさと応援バル」を設けた。

「ふるさと応援バル」には 13 自治体がブースを構えた

 昨年度のふるさと納税寄付額が195億9300万円で全国1位となった都城市のブースでは、都城産の牛肉を原料としたメンチカツ「都城メンチ」を前面に出した。岐阜県飛騨市のブースでは、大正大学の学生が販売実践体験を行った。また、北海道白糠町のブースでは、イクラ丼やエゾシカまんを販売。エゾシカまんは、町内で農業被害が深刻化しているエゾシカを駆除し、ジビエ食材として取り入れたものだ。

 来場者は、楽天市場の人気商品や、楽天ふるさと納税の人気返礼品を使ったグルメを楽しんでいた。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG