09年4月にNTTドコモとの資本・業務提携に合意し、同社グループに傘下入りしたテレビ通販大手のオークローンマーケティング(OLM)。ドコモは携帯電話事業と親和性の高い新規事業進出の一環から通販ビジネスに着目、初めて通販企業を買収。OLMはドコモ傘下で、テレビ通販とは異なる「売り場」の基盤を一気に構築したい狙いがあったわけだ。しかしその後、具体的な連携の形が見えずにいたが、ようやく動き出したようだ。
手始めにOLMが展開する3つのブランドそれぞれのモバイル通販サイトが09年9末に「ドコモの公式サイト」としてオープン。次いでドコモとの提携の大きなメリットの1つだった「モバイル動画」を活用した取り組みも10月からテスト的に開始し始めている。すでにドコモの決済サービスである「iD」や「DCMX」などの導入も検討段階に入っていると見られ、2010年からは本格的にドコモとの連携を強化。モバイル通販に本腰を入れ始める模様だ。
ドコモ傘下でのOLMのモバイル通販は?
国内トップシェアの携帯電話キャリアによる大手テレビ通販企業の買収として話題を集めたドコモとOLMの資本提携が結ばれたのは09年4月。携帯電話キャリアの通販への本格参入という面でも注目されたが、やはり気になるのは資本提携後のOLMの動きだった。同社は一昨年、販売したエクササイズDVD「ビリーズブートキャンプ」が空前のヒット。この結果、08年3月期決算では売上高が前期比75%増の約400億円まで拡大するなど近年、大きく業績を伸ばした。
その同社がドコモの傘下に入ったことで当然、考えられるのはモバイル通販の強化・拡大。ドコモの携帯電話に関する知見やノウハウ、仕組みにOLMの通販力が乗ることで、モバイル通販を大きく拡大できる可能性は高く、実際、両社の資本提携に伴う記者会見の席上でも「動画」を軸にモバイル通販の強化を進めることが提携の狙いの1つだとしていた。その資本提携会見以降、長らく具体的な取り組みは見られなかったが、09年の秋から、徐々に動き出した。
3ブランドを公式サイト化
まず、9月28日付でOLMが展開する3つの通販ブランドすべてのモバイル通販サイトがドコモのiモードの公式サイト化した。同社では取り扱う商品ジャンルごとに「ショップジャパン」「エクサボディ」「ヒルズコレクション」の名称でインフォマーシャル等を実施している。
これまでも各ブランドでモバイル通販サイトを展開してきたが「公式サイト」ではなかった。これが9月末から「ショップジャパンモバイルサイト」と「エクサボディモバイルサイト」が公式サイト化。健康食品などを扱う「ヒルズコレクション」のモバイルサイトは09年2月にすでに公式サイト化しており、3ブランドすべてが公式サイト化した。
動画を「取扱説明書」代わりに
公式サイト化と並行して動画を活用した取り組みもスタートしているようだ。10月から、商品を購入した顧客に対して、送付するフォローメールに動画を活用。配送された商品の開封方法や商品の組み立て方などを分かりやすく動画を使って説明。フォローメールには当該動画に飛ばすURLが記載されており、顧客を誘導する仕組み。動画を「取扱説明書」代わりに活用しているようだ。
現状、開封方法や組み立て方などを動画を使って説明している商品は主力の寝具「トゥルースリーパー」やエクササイズDVD「コアリズム」など3商品程度。今後は商品ごとに動画の数を増やしていくとともに、テレビ通販で展開中のインフォマーシャルもモバイル用にコンパクトに編集し直し、モバイル通販サイト上でもコンテンツとして活用していく考えだ。
また、ドコモの決済サービスである「iD」や「DCMX」についても近く導入する予定のよう。「遅くとも2010年の初めにはまず『iD』を導入したいと考えている」(守屋学副社長)という。これにより、顧客はOLMのモバイル通販サイトで商品を購入する際、毎回、個人情報などを入力しなくとも、決済ができるようになるようだ。
動き始めたドコモとOLMとの連携。本格化はこれからのようだが、両社のモバイル通販ビジネスの行方だけでなく、両社が模索している「動画」を活用した新しいモバイル通販の方向性という意味でも注目されそうだ。【編集部・鹿野利幸】