「ヤフー×アスクル」が新通販サイト、ECナンバー1目指す

「2年以内にECにおいて圧倒的なナンバーワンを目指す」。ヤフーとアスクルが共同で新たな通販サイトを開設する。「Yahoo」と「ASKUL」を掛け合わせた「YASKUL(ヤスクル)」と仮称された新サイトでは売れ筋の生活必需品をそろえつつ、翌日または当日に届ける配送スピードを売りにECで大きく先行する競合を追撃、ECでトップを狙いたい考えだという。

日本最大のトラフィックを誇るポータルサイトとオフィス用品のBtoB通販最大手ががっちりとタッグを組んだ新サイト。「期待したい」という声がある一方で、「数年早ければよかったが、遅すぎ」の声も。「YASKUL」の今後はいかに?

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ヤフーがアスクルの筆頭株主に

ヤフーはアスクルが実施する第三者割当増資をヤフーが引き受け、329億9900万円でアスクル株の42.6%(議決権ベース)を取得し筆頭株主となる。ヤフーはアスクルに取締役を2人派遣する。

資本提携の狙いの1つは互いのBtoC通販分野の強化だ。本業のBtoB通販は競争が激しく、今後の成長力が維持できないと踏んだアスクルは、個人向け通販事業に本腰を入れ、一昨年からネットプライスドットコムと組み、通販サイト「アスマル」を展開しているが、当初の計画通りに事業は拡大せず苦戦。戦略の練り直しを進めているが、この「アスマル」とは別にヤフーと共同で新通販サイト「YASKUL」を開設する計画。

「YASKUL」はメーカーと直取引で大量に仕入れ、安価に商品を調達できるアスクルの商品調達力を活用し、いわゆる「ロングテール商品」とは逆の最も売れる商品群である「ヘッド、特にビッグヘッド商品を強化していく」(ヤフーの宮坂CEO) としており、アスクルが本業のBtoB通販で展開する水やトイレットペーパー、洗剤など主に生活必需品を取りそろえ、「イメージとしては『コストコ』のような大量のモノを安く買ってもらえる強力なストアを目指す」(アスクル・岩田社長)とし、基本戦略としては価格訴求型の通販サイトとなる見通しだ。

加えて、本業のBtoB通販ではアスクルの強みの1つとなっている物流力を活用し、「YASKUL」でも購入商品を翌日もしくは当日に届けることで競合サイトに対抗したい考え。ただ、現行のアスクルの物流拠点はあくまでBtoB用の仕組みであるため、ヤフーから調達した資金などを使い、既存の物流拠点の設備の増強に加え、北海道や北陸など5カ所の物流拠点の新設など行う計画。

詳細は不明だが、構築した「YASKUL」の物流網を開放し、「日本最大級の物流拠点を活用したフルフィルメントサービスをやっていく」(宮坂CEO)とし、ヤフーの仮想モール「ヤフー!ショッピング」の出店者やネット競売サービス「ヤフー!オークション」の法人出品者に向けた物流代行事業に乗り出す模様。「(『YASKUL』を)我々だけでなく、みんなで一緒に作っていきたい」(同)としており、日用品など最も動く効率のよい「ヘッド商品」はアスクルとヤフー連合が直接販売。比較的、動きのある「ミドル商品」は仮想モール出店者の商品を、動きの少ない「テール商品」はオークション出品者の出品商品を充てることで「YASKUL」は全体としてはアマゾン型に近い総合メガ通販サイトになる模様だ。

一方、通販サイトが成功するための必須条件である「集客」はヤフーの力を活用。ポータルサイト「Yahoo!JAPAN」のトップページで露出する。さらにヤフーは決済面でも協力し「Yahoo !ウォレット」なども実装させる計画のようでヤフーの既存利用者の取り込みを図っていく模様だ。「年末商戦に間に合うように開始したい」(宮坂CEO)としており、年内まで に「YASKUL」を開設し、2年以内に競合の楽天やアマゾンを押さえ、ネット販売サイトで首位を目指すとしている。

遅すぎた?提携

商品調達力と物流力、ネットでの集客力。両社の強みを駆使した新サイトは確かに高い可能性を秘めているようにも見える。一方で、数年前ならいざ知らず、「商品の安さ」や「配送スピード」はもはやECでは珍しいことではない。

さらに“売り”の集客力についても、「それでECが伸びるなら、楽天やアマゾンをヤフーのモールがとっくに抜いているはず」(某モール出店者)。また「売り場」を提供しているモール運営者であるヤフーが、特定の通販サイトだけを目立って露出させるという行為は、「売り場の公平性を欠き、出店者から不満が出るかも知れない」(同)という声も。どうなるのか。「YASKUL」の今後の行方が注視される。

アスクル&ヤフーTOPと一問一答

左:ヤフー宮坂CEO 右:アスクル岩田社長

Q:アスクルと資本業務提携を行った理由は。

ヤフー宮坂CEO(写真㊧):1つはやはり「物流」のところは当然ある。現在のEコマースは当日や翌日に商品が届くこと、送料がかからないことがスタンダードであるなど、お客様の(配送に関する)期待値は上がってきている。やはり自分たちである程度、その部分はコントロールできなければ、これから「Eコマースをやっている」と名乗れなくなるのでは、という危機感があった。私はヤフーでEコマース事業の責任者を長くやっていたのだが、その時から、物流に強い企業さんとずっと(連携についての)話し合いを行ってきた。その中でアスクルさんと話し合いを持つ機会があり、志を1つにでき、一緒にやろうということになった。

Q:資本業務提携を持ちかけたのはどちらから?

宮坂:我々からだ。我々とアスクルはある種、理想的な相互補完関係ではないかとプレゼンもさせて頂いた。もともと付き合い自体は以前からあり、実は「ヤフー!ショッピング」を設立した時の初めての出店者にアスクルさんも参加頂いていたこともある。長年の関係性と私自身、(アスクルの)岩田社長のインタビューなどを昔から読んでいて、いつかは一緒に仕事したいと思っていた方でそういう後押しもあった(笑)。

Q:今回の資本業務提携は既存のアスクルのBtoC通販サイト「アスマル」のテコ入れではなく、ともに新しい通販サイトを立ち上げるという理解でいいのか。

アスクル岩田社長:そうだ。「YASKUL(仮称)」を立ち上げる。ネットプライスドットコムと当社で行っている「アスマル」は「働く女性を支援しよう」というミッションのもと、当該層に必要な商品や情報を提供するサイトだ。立ち上げる「YASKUL」は「コストコ」のように、本当にど真ん中の生活必需品を最安かつ最速で届けできるネット上の強力なメガストアというイメージで考えている。「アスマル」と「YASKUL」は両立できると考えている。

宮坂:(「YASKUL」の)サイトをどう作るかだが、現状はまだ互いのエンジニアなどを交え、どうするのが一番、良いものができるかと話し合っている途中だ。ただ、BtoCサイトをある種、スクラッチで1から作るぐらいの覚悟でやろうとかと思っている。インターネットは「無駄取り装置」とヤフーの中ではしている。色々なものの隙間に無駄があるわけだが、そこを情報技術でどんどんとっていくと。それでコストも下がるし、スピードも速くなり、流れもよくなると。今回の提携で、お客様がサイトを見てから、商品が手元に届くまでメーカーさんも巻き込んで、できるだけ無駄のなく、無理のない形で(作りたい)。あとはやはり、スマートフォンやスマートパッドで簡単に購入できるように意識してサイトを作りたいと思っている。

Q:アスクルの物流の仕組みはBtoBでは優れているかもしれないが、それをBtoCの物流に活用できるのか?

岩田:注文頂いたものをお届けするという構造は一緒。物流は物量が増えると固定費が下がり、また新拠点を増やし密度が高まると配送距離が短くなり配送コストも下がる。また、販売する商品も生活雑貨や文房具などかなり重なっている。両方でシナジーは充分出てくると思う。

Q:アスクルの既存の物流センターを活用してそうしたBtoC商品を出荷できるのか。物流の仕組みをヤフーのモール出店者などにも開放するそうだが、そうした商品の配送はどうするのか。

岩田:現在の物流センターは(大量に売れる)ヘッド商品を高速で回す仕組みだ。(「ヤフー!ショッピング」や「ヤフー!オークション」の出店者などの)ロングテール商品を預かって配送する部分は、まったく性格が違う。様々な性格の商品をどう1つのネットワークとして運用するか。ロングテール商品とヘッド商品の組み合わせというのは、新しい物流技術になってくるが、それに我々はチャレンジしていこうと思っている。

Q:新サイトはいつごろ稼動するのか。

宮坂:サイトの規模をどのくらいで作り込むかなど、まだ現場のエンジニアやプロデューサーを交えて、詳細なディスカッションができていないが勢いは大事だ。できるだけ爆速的に早くやろうということで、年内には開設したい。100点満点とはいかないかも知れないが、やってみてモノを流してみないとわからないこともたくさんあると思う。年末商戦までにはサービスを始めたい。その後は当然、トライアンドエラーを繰り返しながら作り込んでいきたい。新サイトは我々としても絶対的な自信をもってお客様に提供していきたいサービスなので、ドメインをどうするかなど細かいことは今から話し合うが、たくさんのお客様の目に触れるところ、ヤフーの一番いい位置であるトップページに露出させていこうと思っている。

Q:コマース事業強化のために他社とのさらなる提携は?

宮坂:それは当然あると思う。我々自身でやれる範囲はやはり限られている。我々がやるよりも優れたソリューションを持っているところがあれば、迷うことなくパートナーになって頂きたい。ただ、現時点で具体的に決定していることはない。

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