独禁法、対「消費者取引」にも適用へ ―― 消費者、データ利用「懸念」7割

独占禁止法で規制する「優越的地位の濫用」が事業者と消費者間の取引に適用される可能性がでてきた。公正取引委員会は今年4月、仮想モールなどデジタル・プラットフォームの規制を検討する会合で「適用の可否でいえば、可能性が排除されるものではない」とコメント。今後、「優越的地位の濫用」に関する考え方を整理し公表する。対象になり得るのは、主に仮想モールやアプリストアなど、多種多様な個人データを収集・管理し、これを事業に活用する企業とみられる。ただ、顧客の個人データを保有するネット販売事業者も注意が必要になりそうだ。

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独禁法適用「可能性排除されない」

デジタル・プラットフォーマーを対象にした新たな規制は、昨年から、公取委のほか、経済産業省、総務省が三省合同で行う検討会で議論されてきた。政府が6月にまとめる成長戦略の実行計画への反映を念頭においたものだ。

並行して公取委は、オンラインモールやアプリストアの取引慣行をめぐる実態調査を実施。今年4月、調査結果を公表している。

2000人の消費者を対象に行った調査では、無料のデジタル・プラットフォームの利用をめぐり、自身の個人情報や利用データを提供しているとの「認識がある」と答えた消費者が79%、「経済的な価値がある」との認識も66%に上っていた。

一方、これら個人情報や利用データをプラットフォーマーが利用することに「懸念がある」との回答も75%に上っていた。具体的な懸念の内容(複数回答)では、「情報流出」、「個人情報や利用データの収集方法」、データを利用した「不要な広告掲載やメール」「位置情報や購買履歴など自身の行動の監視」といった項目がいずれも5~8割に達していた。

公取委は結果を受け、対消費者取引における「優越的地位の濫用」に関する考え方をまとめる。公表の時期は「明らかにしていない」と未定だが、6月にまとめる実行計画とは異なるスケジュールで進める。対消費者取引において、「取引上(事業者が)優越しているか否か」や「(消費者に)不当な不利益を与えている状態」の判断基準、利用による「競合他社への影響」など公正競争の観点から考えを示す。

独禁法はこれまで事業者間取引において適用されており、対消費者取引で適用例はない。「優越的地位の濫用」に関するガイドラインも事業者間取引における考え方がまとめられているだけだ。今後、指針の公表を受け、対消費者取引に対する監視強化が進む可能性がある。

「優越的地位濫用」の指針も整理

併せて、公取委では、事業者間取引における独禁法上、競争政策上の考えもまとめる。

オンラインモールを対象にした調査は、アマゾンジャパン、楽天、ヤフーの実名を挙げて行ったもの。結果からは「規約を一方的に変更された」など、不満を持つ利用企業の回答が約5~9割、その内容に「不利益なものがあった」とする回答も約4~9割あった。

また、出店・出品審査、商品の販売価格や品揃えに関する同等性条件等の要請に不満を持つ声も多かった。出店・出品の不承認の際に「説明がなかった」という回答が64~70%、また、その説明に「納得できなかった」という声もヤフーの16%を除き、アマゾン、楽天は7割近くに達していた。

商品の販売価格や品揃えで要請や指示を受けたことがあるというのアマゾン、楽天は3割超(ヤフーは約9%)。その内容(複数回答)は「自社サイトと同等または優位」を求められたのは、アマゾンが40 %、楽天が26 %、ヤフーが22%、「他のモールと同等または優位」はアマゾンが51%で最も高く、ヤフーの38%、楽天の33%と続いた。従わない場合に「商品の表示位置や検索結果で不利な扱いを受けた」「同意な一方的に売り上げから利用料等をとられた」といった不満も一定数あった。

公取委は、結果を受けて規約の一方的変更や出店・出品審査、同等性条件をめぐる行為を中心に独禁法上の考えを整理する。今後、モール運営事業者からもヒアリングを行い、さらなる実態把握を進める。

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