ネット広告に契約「取消権」導入か――消費者委、消契法改正を検討へ

「広告」は「勧誘」と同じ――。インターネット広告を中心に、特定の顧客をターゲットにした広告手法が確立される中、新たに不当な広告表示を契約取り消しの対象としようとする動きが出てきた。不当な広告表示は、景品表示法をはじめ、通販に関わるさまざまな法律で規制されているが、すべて行政処分規定や罰則規定を定めているに留まり、契約の「取消権」はない。消費者委員会では、消費者保護規定の充実を念頭に、消費者庁に消費者契約法の改正を働きかけていく考えだ。

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「広告」は「勧誘」と同じ

消費者委では2011年に消費者契約法(消契法)改正の論点整理に向けた「調査作業チーム」を発足。13年7月、その概要を発表し、これを改正議論のたたき台とし、消費者庁に消契法改正を働きかけていく。その一つの論点となるのが「広告」の取り扱いだ。

現行の消契法は、契約の取消要件として「事業者が消費者契約の締結について勧誘するに際し…」と、その前提条件を「勧誘」としている。これは「勧誘」する行為が、契約を巡り消費者の意思決定に与える影響が大きいため。そこまでの影響力をもたない「広告」はこれまで、「勧誘」に含まれないとの解釈が成立していた。

ただ、近年、ネットの普及などで広告手法は複雑化している。「広告」が消費者の意思決定に与える影響が大きくなっており、「広告」も「勧誘」に含め、契約の取消権や損害賠償規定の導入を検討すべきという結論を出している。

ターゲティング広告を問題視

特に、契約取り消しの対象となる事業者の行為として注目するのが「インターネット広告」だ。

例えば、「ターゲティング広告」は、商品を購入してくれそうな消費者向けにターゲットを絞って展開する。これは顧客名簿などを用いて勧誘先を選定、勧誘するリアル取引と類似している。このため「勧誘と区別する合理的な理由が希薄」との見解を示している。

通販は、非対面の取引であるため、商品内容や事業者の信用性について、ウェブに掲載される内容や広告の影響が大きい。また、ネット上の不当な広告表示は、景品表示法や特定商取引法、薬事法、健康増進法など、通販に関わるさまざまな法律で規制されているが、被害救済に関わる規定はない。このため、契約の「取消権」を導入すべきとしている。

ただ、実際の商品取引の場面では、契約を取り消しても消費者が商品に全く手をつけていないケース、すでに商品をある程度使ってしまっているケースなどがある。消費者がどの程度、商品による利益を享受したのかを踏まえ、事業者、消費者双方の損害額を算定しなければならないが現行の消契法には、契約取り消しを巡るルールについて、明確な規定がない。こうしたルール整備も検討課題に挙げている。

モールとの出店契約にも影響か

もう一つ、消契法の改正議論でネット販売事業者に関係する論点となりそうなのが、「約款」を巡る規制だ。

保険契約やコンビニのフランチャイズ契約がイメージしやすいが、契約条項が多岐に渡る場合、よく「約款」が使われる。「約款」とは多数の相手方との契約を予定し、あらかじめ準備されている契約条項の総体のことだ。だが、条項が多岐に渡るため、よほどのことがない限り全てに目を通すということはあまりない。その〝隠ぺい効果〟が当事者意思の希薄化を生じさせるという指摘がある。

このため、契約者が〝約款に含まれるもの〟と合理的に捉えることができない条項は、個別の了解を得ない限り契約内容として効力を持たない「不意打ち条項」の規定の新設を検討すべきという意見もある。

「調査作業チーム」では約款規制とは別に「消契法の適用範囲を中小・零細企業にまで拡大する必要性」にも言及しており、例えば、モール事業者とモールに出店する個人商店のような事業者との契約などBtoB取引の現場でも、約款規制を設けることによる影響が出てくる可能性がある。

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