ゾゾは今期(2020年3月期)、「ゾゾタウン」の出店ブランドが企画した服をマルチサイズ展開する新規事業や自社EC支援サービスの強化、中国再進出などに取り組み、有料会員サービス「ゾゾアリガトーメンバーシップ」で失ったブランドとの信頼関係を取り戻す。一方、鳴り物入りでスタートしたプライベートブランド(PB)事業は縮小する。
同社のPBは、無料配布した採寸用ボディースーツで体型を計測するユーザーが想定を下回るなど消費者のハードルが高かったことに加え、製造遅延や品質問題で機会ロスが生じたことが響き、PB は前期(2019年3月期)取扱高は計画の200 億円対して27 億円強にとどまった。
現状は取得した体型ビッグデータを活用しPB「ゾゾ」のカジュアル商材は採寸なしでも購入できるようにしており、今後のPBは極めてベーシックなアイテムに絞り込むほか、PB の海外展開から撤退し、ドイツと米国の販売子会社を清算。今期のPB取扱高は17 億円を見込む。
一方で、消費者にとっても珍しかったマルチサイズ対応の同社PBは、定番商品の「スリムテーパードデニム」が累計21 万7000 本、「ベーシックT シャツ」が同7万5000本をそれぞれ販売し、「ゾゾタウン」内のアパレル年間販売数ランキングで断トツの1位、2位となったのに加え、同社PBの3カ月以内のリピート率は通常商品の2.5倍だったことからマルチサイズに対する大きなユーザーニーズが確認できたという。
ただ、同社PBだけではマルチサイズのアパレル商材が浸透するまでに時間がかかることから、「路線変更する」(前澤友作社長)とし、今後はブランドの力を借りていく。
一環として、「ゾゾタウン」の出店ブランドが企画する商品をマルチサイズ展開して「ゾゾタウン」上で販売するマルチサイズプラットフォーム(MSP)事業を19年秋に始める。ゾゾユーザーがお気に入りブランドの服をより自分の体型に近いサイズで購入できるようにするもので、アイテムによって20~50サイズ程度の展開を計画。すでにアーバンリサーチやストライプインターナショナル、パル、ビームス、ベイクルーズ、マークスタイラーなどの参画が決まっており、今期は同事業の取扱高として10億円を見込んでいる。
EC支援の運営手数料無料化も
また、子会社のアラタナを中心に展開するBtoB事業の再強化を打ち出しているが、出店ブランドの自社EC支援サービス「フルフィルメント バイ ゾゾ」を10月に始動する。ゾゾの物流拠点で「ゾゾタウン」向けの在庫と自社EC在庫を一元管理するのを条件に、自社ECで販売する商品の撮影や採寸、保管といったフルフィルメント業務にかかる運営手数料15%を無料化する。加えて、ゾゾIDでのログイン機能を自社EC にも開放するという。
ゾゾによると、「ゾゾタウン」での在庫不足による機会損失は前年実績ベースで取扱高の約30%となる1000 億円程度に上ると見られることから、自社EC運営手数料の無料化に踏み切ってでも在庫連携を促し、機会ロスの低減を図りたい考え。現状、「フルフィルメント バイ ゾゾ」はマークスタイラーやストライプインターナショナル、ラルフローレンなどが戦略パートナーシップ先として決まっている。
また、19年内をメドに中国市場に進出する。同社は約6年前にもソフトバンクとの合弁会社で中国展開に乗り出したが撤退している。当時と比べて中国のターゲット顧客層がファッションに使う金額が4~5倍に拡大していることから、日本ブランドの価格帯でも勝負できる状況にあるようだ。加えて、前回はタオバオのモールに出店したため自由度が低かったが、今回は単独サイトやアプリを用意し、UI・UXやプロモーションなどで差別化が図れるとする。
中国展開は、「ゾゾタウン」で扱う商品を中国の消費者にも販売する越境EC型で、商品在庫はゾゾの物流センターで管理し、中国からの注文も同拠点から直送する。参加ショップは「ゾゾタウン」出店時と同率の販売手数料で同国市場を開拓できるという。同社では中国の一大商戦に当たる11月11日の独身の日にオープンを間に合わせたい考え。