ゾゾと連携して服の循環に貢献する【宮澤高浩 クラウンジュエル代表取締役社長】

ブランド古着の買い取り、販売を手がけるクラウンジュエル。服の二次流通市場のけん引役、かつ商品販売後の流通サイクルを補完する役割を期待するスタートトゥデイが2011年6月に完全子会社化している。12年11月には「ゾゾタウン」内に古着のセレクトショップ「ゾゾユーズド」を開設。500万人のゾゾ会員に購入の選択肢を増やした。中長期目標として売上高100億円を掲げるクラウンジュエルの宮澤高浩社長に事業の現状と展望などを聞いた。 (聞き手は本誌・神崎郁夫)

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新品が売れないと二次流通も盛り上がらない

売り場と買い場が一緒

――「ゾゾユーズド」を開設して約1年が経ちました。

そもそも、「ゾゾユーズド」をオープンした目的は、「ゾゾタウン」のユーザーに対して新しいサービスを提供することで、これまで以上に古着の購入機会が増えるのではと考えました。実際に、クラウンジュエルで販売していた時と比べ、売り上げの伸び、販売スピードは格段に上がりました。事業モデルを大きく変えたわけではないので、会員数で約500万人、アクティブ会員で約280万人いる「ゾゾタウン」の利用者に古着を買ってもらうという判断は正解だったと思います。ちなみに、それまではクラウンジュエルが運営するアパレルのオークションサイトで古着を販売していましたが、「ユーズド」を開設した際にオークションサイトは閉鎖し、クラウンジュエルのサイトは既存顧客向けの買い取り業務に特化しています。

――古着の市場環境はいかがですか。

古着はこの数年のトレンドとして市場が伸びていますし、古着をリアル店舗で扱っている方々、ネットで販売している方々、CtoCのフリーマーケットサイトなども含めて個人の服がフォーカスされていて、それを流通させようという媒体がすごく増えています。ベンチャーキャピタルなどが、古着のサービス提供者に資金を投入していることも市場の拡大を見込んでのことでしょう。消費者の選択肢も増え、市場としては追い風です。この流れはしばらく続くと考えていて、当社が市場の拡大をけん引していきたいです。

――現在の市場規模は。

古着の市場規模はなかなかデータとして出てきません。とくにCtoCのマーケット規模がオープンにされていないことも、分かりにくくしています。シンクタンクが数年前のファッションの二次流通規模を三千数百億円と発表していますが、CtoCの市場を考慮すれば、それより小さいということは、まずないと思います。

――古着に対する消費者の反応は。

アンケート調査をして分かったことですが、手持ちの服を初めて当社に売ってくれたとか、古着を初めてゾゾの中で見て購入したという消費者がかなり多くいますので、古着に対する抵抗感、ハードルは低くなっていると思います。

――ブランド側の反応は。

「ユーズド」を開設して1年が経ちますが、「ゾゾタウン」の事業は年率10%以上の成長を続けています。新品の販売も伸びている中での古着販売ですので、結果的に新品の商売に影響はしていないと見ています。ブランドさんによっては、サンプル品の公式セールを「ユーズド」の中で開催してもらう機会も増えています。新品と同じようには販売できないサンプル品を現金化できるツールが「ゾゾタウン」内にできたということで、活用してもらえればと思っています。実際に、この1年間で十数社がサンプルセールを開催していますし、一度実施したブランドさんは次のシーズンにも開催されることが多いですね。

――自社でサンプル品を販売するのには手間もかかります。

その通りです。リアルの場でサンプル品を販売しようと思うと顧客を集めるのも会場を押さえて運営するのも大変ですが、その割に購入されにくいということがあったと思います。自社サイトで販売するとブランドイメージが下がることも考えられますので、「ユーズド」をうまく使ってもらいたいです。ゾゾ内では新品と古着が一緒に表示されることはなく、古着を見たい人だけが見られるようにしています。

――グループの他のサービスでも古着を扱うケースがあります。

「ウェア」や「ストアーズ」も古着を売ることはできますが、とくにライバルという意識ではなく、ユーザーが選ぶものだと思います。「ストアーズ」は自分で写真を撮ってサイトにアップし、自分で発送するというのが基本的なスタイルです。ブランドさんにとっても、サンプル品の処分など困っていることを一緒に解決できればいいですね。やはり、新品が売れないと、二次流通も盛り上がりません。しっかりと商品を循環させることが大事です。

――「ユーズド」の強みは。

服の売り場と買い場が一緒というのは消費者にとって楽だと思います。当社として欲しいアイテムを持っている消費者がゾゾ内に存在しているわけです。他のファッション通販サイトと古着を扱う提携先事業者との連携では、そこまで親和性が高くはないと思います。また、「ゾゾタウン」のUIの使い勝手の良さは「ユーズド」でも一緒ですし、送料無料などのサービス面も同じです。

1カ月以内に半分以上が完売

――現状の取り扱いブランド数や商品点数などは。

取り扱いブランド数は約4000、商品単価4000円程度というのは1年前と大きくは変わっていません。商品点数は増えています。スタート時は約4万点でしたが、足もとの12月は1日当たり約2000点、月間では約6万点の商品を投入するペースです。この数字も想定通りで、2013年3月期の売上高を前年比2倍となる20億円を目指していますが、そのためには商品単価が4000円ですので50万点を販売する必要があります。商品のアップ数も毎月5万点~6万点が必要です。

――買い取りの面では、既存顧客とゾゾ会員の違いなどはありますか。

当社の買い取り専門サイトと、「ユーズド」では顧客層が少し違っています。クラウンジュエルのユーザーは高単価商品の買い取りが多く、「ユーズド」の方はライトユーザーが多いという印象です。

――購買動向については。

「ゾゾタウン」のユーザーが新品を見た後に古着を見ると、やはり安いと感じると思います。新品を買う中で1点くらい古着も購入してみようと思うのかもしれません。例えば、Tシャツが2~3枚欲しい時はユーズドも利用するというような賢い買い方をしているのではないでしょうか。年間購入金額で見ると、新品の服だけでなく「ユーズド」も利用している顧客は金額が高いです。そういう意味では“服好き”だと思います。

――新品と古着の買い回り比率は。

「ゾゾタウン」に280万人のアクティブ会員がいることを考えれば、まだ数パーセントの顧客にしか「ユーズド」は利用されていません。ただ、「ユーズド」で購入している消費者の多くが「ゾゾタウン」も併用しています。古着だけを買うのではないということで、ターゲットは間違っていなかったと思っています。

――買い取った商品の消化率は。

商品は販売開始から1カ月以内に半分以上が売れています。それ以外は、一定のロジックのもと、しかるべきタイミングで値下げをして、ゆっくり販売していきます。

プッシュ型の買い取り施策も

――物流面ではセンターを移転されました。

従来は東京都練馬区に物流センターを構えていましたが、つい最近、スタートトゥデイが利用していた千葉県習志野市内の倉庫に移転しました。スタートトゥデイは近隣にできた新センターをメーンに使用していますので、空いたスペースに入りました。移転前は、「ユーズド」で受注した商品を都内の倉庫から一度、習志野まで運んでから消費者に届けていましたので、これからは、そうしたタイムラグは生じません。

――撮影などは。

撮影については、「ユーズド」の開設時に、それまでのトルソー撮りからハンガー撮りに切り替えました。その流れは今も変わっていないです。サイト上の商品の見せ方も変えていません。好きなブランドのフォローをすると、トップページに新作情報が表示されたり、メルマガでも新作やマークダウン情報が届きます。扱う商品が1点ものなので、フォローの機能は有効だと思います。昼にメールを配信して、午後9時から販売をスタートします。利用者が能動的にお気に入りブランドの情報を知りたいということでフォローをしていて、結構、使われている機能ですね。

――買い取り促進では、どのような施策を考えていますか。

買い取りサービスとして、できるだけ早く査定するとか、価格の明快さを打ち出していく必要があります。実際にできるかは分かりませんが、例えば、1年前にある服を「ゾゾタウン」で購入した消費者に対して、「あなたの購入した商品を今なら○○円で買い取ります」といったメールを送るなど、当社からアプローチすることも考えられます。二次流通は価格が不透明で、それが買い取りを足踏みさせてしまうことにつながってしまうため、できるだけ明快にすることが大事です。もちろん、アパレル商材は“生もの”なので、買い取り価格を決めるには難しい部分もあります。

――そのほかは。

購入履歴の商品画像の横に買い取り希望のボタンを配置して、クリックするだけで宅配キットが届くというような簡易さも必要かもしれません。あとは、宅配キットにアイテム1つだけしか入っていないよりは多くの商品が入っているほうがいいので、多く詰め込んでもらえる努力や工夫も必要になります。

――グループの強みがあります。

もちろんです。「ゾゾタウン」内に入っているからこそできることがあると思いますので、顧客情報を活用してサービス力を高めていきたいですし、ゾゾのグループの中で購入から買い取りまで商品が一回転すればいいですね。それこそ、スマホアプリの「ウェア」でファッション商材を見てから「ゾゾタウン」で購入し、着なくなったら「ユーズド」に売ってもらい、そこで得たお金でまた「ウェア」を見てというような、入り口から出口まで、他社ではできない連携したサービスとして強化したいです。

中長期目標は100億円

――売り上げの推移と中期目標は。

2014年3月期の売上高は目標の20億円に向け順調に推移しています。中長期的には100億円を目指しています。目標の達成には仕入れ体制が重要になりますが、できることは無限大にあると思っています。「ゾゾタウン」は商品を販売することに特化していますが、「ユーズド」の買い取るという機能はこれまでになかったもので、500万人の登録会員なり、280万人のアクティブ会員に「ユーズド」を1年に1回使ってもらうだけでも、仕入れ部分は強くなると思います。

――足もとの課題などは。

この下期から来期にかけては、倉庫を移転してスペースは確保できましたので、仕入れの中の体制と、システムも含めて整えていきます。同時に、いろいろな施策を実施して仕入れ部分を強化していきます。

――最後に、何かメッセージがあればお願いします。

ブランドさんには安心してもらいたいです。消費者が古着も求めていることを理解してもらい、一緒に成長していきたいですね。

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