「眼鏡」のネット販売の“今” 、ネット専業に加え有店舗各社も強化へ

かつて「ネットで服は売れない」と言われていたが、「ゾゾタウン」の躍進などが象徴するようにアパレルブランドにとって今やECは欠かせない“売り場”となっている。それでは、服と同じく身に着ける商材の「眼鏡」の場合はどうだろうか。

ECの仕組みが進化し、ユーザー側も一定のリテラシーが備わっている現在、眼鏡という商材も決してネットで売れないものではなくなりつつある。実際、眼鏡のECを手がける企業の責任者は「ポテンシャルは非常に高い」とこの市場に期待を寄せる。

改めて、眼鏡を通販する際の課題をいくつか挙げてみると①試着ができない②度数情報の取得③フレームの調整──などがある。

①などは服と同じ課題と言えようが、②や③は眼鏡ならではの問題と言える。こうしたハードルに対して眼鏡ECを展開する企業は、ネット専業と有店舗によって違いはあるものの、それぞれ付加価値サービスや他社との提携、親和性の高い商品の投入、店頭の強みを活用するなど様々な工夫をこらす。

これまではネットではコンタクトレンズを中心に売っていた企業も眼鏡のネット販売に本腰を入れ始めており、今後、眼鏡を巡るECはいよいよ本格的な競争の時期に突入していくのかもしれない。そこで眼鏡ECの市場で拡大を遂げている数社の取り組みを追い、同市場の現状を見ていく。

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大手や中小眼鏡チェーンと提携

眼鏡ECを展開するオーマイグラスは2012年1月に通販サイト「Oh MyGlasses(オーマイグラス)」を開設し、眼鏡のネット販売に着手した。開始時から眼鏡の製造で知られる福井県鯖江産のブランドを多く取りそろえるなど独自の付加価値を追求してきた。現在、取り扱っているブランド数は150 ~160程度で、そのうち半分は鯖江のブランドとなっている。

同社は自社ECによるネット専業で、実店舗を持たないため、顧客が納得して眼鏡を購入できるよう様々な仕掛けを講じている。

例えば無料の“お試し”サービス。気に入った眼鏡を5本までネットで取り寄せることができるというもので、送料はかからない。期間は到着日から5日間を設けているので、眼鏡を試着して掛け心地や見た目を確認し、家族や友人などにも相談ができる。取り寄せたものの中に欲しい眼鏡があればそれを購入する仕組み。お試しの眼鏡はデモレンズになっているため、購入時に度付きレンズにしてから再度発送する。もちろんPC用眼鏡や伊達眼鏡にも対応している。こうして実店舗を持たず試着ができないデメリットをカバーしている。

さらにオーマイグラスが強化しているのが店舗展開する眼鏡チェーンとの業務提携だ。2012 年4月に丸井との業務提携を皮切りに、メガネドラッグ、愛眼、ビジョン・ホールディングス、アイジャパン、メガネスーパー、ヨネザワ、ルック・ヒライなどと業務提携を締結。

提携先の店舗は現在、全国におよそ1200店となり、「オーマイグラス」で商品を購入した後のレンズ交換やアフターサービスを提供している。

顧客が近くの店舗でアフターサポートを受けることができる体制を整えることで、眼鏡が壊れた際や度数が変わった場合に商品を持ち込める場を用意し、ネットで商品を購入する際の心理的なハードルを下げるのが狙いだ。

さらにこれまでは大手の眼鏡チェーンと組み提携店舗を全国に拡充していたが、今年からは中小の眼鏡店舗まで提携先を広げている。

和歌山県で店を構える「メガネストック」3店舗や、青森県弘前市の「スマイルメガネ」弘前店、山口県下関市の眼鏡店など。来年3月末までに中小規模眼鏡店の提携先を100店舗にまで拡大させる計画だ。

このように提携先店舗をじわじわと拡大させている同社だが、一方で新たなサービスも開始した。それが眼鏡チェーンのEC支援事業。昨年10月から「オーマイグラス」内に、九州地域を中心に眼鏡チェーンを展開するヨネザワの専用ページを設けた。

商品の在庫管理や発送業務はオーマイグラスが請け負い、販売額の数%を手数料として徴収する。ヨネザワはオーマイグラスと以前から業務提携を結んでいたが、これまで自社ECや仮想モールへの出店といったネット販売の実績はなかった。

11月には2社目の案件として同じく提携先であるメガネスーパーの専用ページも開設した。オーマイグラスはEC支援事業で初年度10社との契約、2年目には5億円の売り上げを目標に掲げている。

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