【変わる景品表示法】大幅改正の影響と運用のポイントは?

景品表示法の運用が大きく変わる。食品偽装の問題を受け、消費者庁では景表法の改正を検討。12月から運用が始まる。さらに、10月には「課徴金制度」を盛り込んだ改正案が閣議決定され、2016年にも施行される見通しだ。段階的に行われる大幅な改正で、何がどう変わるのか。改正法の運用のポイントと執行への影響を探った。

20条から41条に増える条文

景表法に詳しいある行政関係者は「景表法はそもそも15条前後(現在は20条)の条文しかない簡潔な法律だった。行政の執行担当者にとって非常に覚えやすく、分かりやすく、使いやすい法律だった」と振り返る。今回の改正ではそれが41条にまで増える。さぞ、行政も執行体制の構築や運用に頭を悩ませていることだろう。

「条文」の主な変更点は4つ(=表)。新たに事業者の義務として加わるのは「表示の管理義務」。現在、第7~8条に定められているが、課徴金制度導入後は第26~28条に規定される。詳細は後述するが、企業が表示の適法性を自ら管理するための〝予防措置〟の取り組みを求めるものだ。また、「課徴金制度」の仕組みや免除に関する規定は第8~25条に定められる。

行政側の執行権限で大きく変わるのは、不当表示に関する「措置命令」と、企業に表示に関する合理的根拠の提出を求めることができる「合理的根拠提出要求」の権限が移譲されること。一方、これまで第7条に規定されていた都道府県の「指示」権限は廃止される。

行政の「調査権限」も変わる。これまでは、消費者庁や都道府県のほかは、公正取引委員会(地方事務所を含む)に委任されているだけだった。改正法ではこれに加え、新たに「事業所管大臣と金融庁長官」、つまり経済産業省や農林水産省、厚生労働省など、なんらかの事業を監督する省庁にも与えられることになる。公取委と各省庁への権限の付与には、微妙にニュアンスの違いがあるため後述する。

罰則は「課徴金」や「表示管理義務」に関するもの以外は大きく変わらない。「措置命令」は2年以下の懲役または300万円以下の罰金、報告調査や立入検査を妨げた場合や虚偽の報告を行った場合は1年以下の懲役または300万円以下の罰金になる。

人員要求で執行体制を強化

執行体制でも消費者庁は大幅な増員を要求している。

現在、景表法を運用する「表示対策課」の課員は約50人。このうち約20人が調査や執行を担う調査官とみられる。ほかに食品や健康食品の案件を担当する専任組織「食品表示対策室」が9人の職員を抱えている(13年7月の発足時点)。

消費者庁が監視体制強化に向けて行った15年度の人員要求は15人。このうち表示対策課が7人、食品表示対策室が5人の定員増を要求しており、多くを対策課の人員要求が占めており、不当表示の監視を強化する狙いが背景にあるとみられる。

地方は、都道府県によってまちまちだが、一般的にほかの業務内容との兼任も含め1~2人程度が執行を担当している。ほかに公正取引委員会の地方事務所(北海道、東北、中部、近畿中国四国3カ所、九州、沖縄の8カ所)が消費者庁と連携しつつ、地方の取り締まりを行っている。地方の執行体制に今のところ大きな動きはみられない。

「措置命令」と「指示」の違いは?

運用のポイントを見ていく。まずは、地方への「措置命令」と「合理的根拠提出要求(不実証広告規制)」の権限の移譲と、「指示」の廃止について。そもそも、「措置命令」と「指示」にはどういった違いがあるのだろうか。

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