電話番号を使ってメールのようにメッセージを送ることができるサービスが「SMS(ショートメッセージサービス)」。スマートフォンやフィーチャーフォンに標準装備されており、メールアドレスが分からなくても決められた文字数であればメッセージを送受信できるのが特徴だ。昨今、コールセンターなどでSMSに着目したサービスが開始されており、実際に広告キャンペーンの展開や、通販の顧客獲得などにつなげようという動きも出てきている。
テレマ大手2社が新サービス発表
2014年2月にテレマーケティング大手のもしもしホットラインが、コールセンターでSMSを活用したサービスを開始した。例えば購入前に通販商材の問い合わせをした顧客に対して、クーポンをSMS経由で配信し、その後の購買につなげるということが可能になる。コールセンターでオペレーターが電話応対する際に、SMS経由でクーポンを配布する旨を告げておくことで、開封率が高まり利用につながることが期待できるというわけだ。
同年7月にはテレマ最大手のトランスコスモスも、SMSでのアウトバウンドとインバウンドに対応し顧客と双方向でコミュニケーションができる自社開発サービスを発表。同社によると、SMSはEメールに比べて到達率や開封率が高いため効果的なアウトバウンドツールになることが期待できるとしている。
このようにコールセンターを運営する企業が次々とSMSを使ったサービスを打ち出すなか、KDDIグループでコールセンター事業を手がけるKDDIエボルバでは12月1日から1月4日までの期間、SMS機能を活用したクーポン配信システムの実証実験を行った。
エボルバが交通広告で実験
KDDIエボルバの実験では、広告会社のオリコムと連携し、東急リゾートサービスが群馬県沼田市で運営しているスキー場「たんばらスキーパーク」の電車内広告キャンペーンを展開。これまでは可視化が難しかった交通広告による送客効果を数値化していくという取り組みだ。
具体的には首都圏を走る西武池袋線と東武東上線の車内にB3サイズの広告を合計1470枚掲載。広告内にクーポン配信用の電話番号を記載し、広告を閲覧したユーザーがスマートフォンやフィーチャーフォンから専用の電話番号にダイヤルすればSMSを通じてクーポンが配信されるというもの。ユーザーはクーポンを「たんばらスキーパーク」内で提示するとリフトの1日利用券が半額になる。
この取り組みでは、広告出稿量とSMS配信数、実際に現地で特典を受けた数を比較することによって広告効果を数値化する。KDDIエボルバによると、SMSを使ったサービスはもともと同社のコールセンターでの業務を目的に開発したという。コールセンターで入金依頼や折り返し連絡の催促などをする際にSMSを使って通知するというような利用シーンを想定していた。今回はその技術を広告キャンペーンに応用したというわけだ。
SMSを使うことで、オフラインでの広告からオンラインでメッセージを送り、さらにオフラインでクーポンを使うというKDDIエボルバの実験は、通販での展開も想定されるが、実際にSMSを絡めて通販での顧客獲得につなげているサービスもあるようだ。
商品申込用のURLを送信
モバイルマーケティング支援のビートレンドではSMSを活用した販促サービスを展開している。ユーザーが特定の番号に電話かけると、IVR(自動音声応答)によってSMSで専用のURLを送信する旨が伝えられ、ユーザーが許可すればSMSを送信する。送信したメッセージに貼られたURLを経由してユーザーをランディングページに送るという仕掛けだ。このやり方であればオペレーターを介さないため、コールセンターの人件費削減などにもつながるという。
同社では2014年7月に福岡のテレビ番組を通じて富士フイルムの化粧品「アスタリフト」のサンプルを告知し、SMSとコールセンターの双方で購入を受け付ける実証実験を行った。通常1000円のトライアルセットを500円で取り扱い、テレビ画面上にスマートフォン用の専用ダイヤルを表示した。
スマホユーザーが電話をすると、IVRで「スマートフォン専用の注文ページをショートメッセージでお送りいたします。よろしければ1番を押してください」と伝えた。ユーザーが許可するとSMSを送信。そこに貼られたURLからユーザーが商品の申し込み受付サイトに遷移するという流れ。固定電話とフィーチャーフォンからの電話は通常通りコールセンターで受け付けた。
センターのコスト削減などに期待
その結果、SMSを送信したのは91件で、そのうち44件が購入に至った。なお、コールセンターでの電話による購入は67件だった。ビートレンドではSMSによる購入率と購入数に一定の手応えを感じている。
この仕組みであれば、コールセンターの人員を増やさずに試供品やセール品の販促、キャンペーンの展開などが可能になるほか、オペレーターが対応していない夜間の時間帯だけに展開することもできるため、コールセンター全体のコスト削減や販売機会損失の低減につながることが期待できるという。
このほかにもクレジットカード番号など個人情報の入力フォームをSMSで送信し、必要な情報を入手するなど様々な活用法が可能で、ビートレンドではサービスの拡販に力を入れている。