「Pontaポイント」を戦略設計の鍵に 山下隆太●リクルートライフスタイル ポンパレモールプロデューサー

開設から3年を迎えたリクルートライフスタイルが手がける仮想モールの「ポンパレモール」。2016年2月には「リクルートポイント」が「Pontaポイント」に完全統合されるなど大きな動きもあった。統合後は会員規模が大に拡大し、既存のリクルート会員とは異なる新たな顧客層の流入も期待できることから、今年の戦略設計を立てる上で大な鍵を握ることが予想される。2015年10月にモール責任者に就任した山下隆太プロデューサーが描く、今後の成長ビジョンとは。

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リアルとネットで

顧客の循環を活性化

品数、出店者数が1年間で1.5倍

――2015年秋からポンパレモール責任者のプロデューサーに就任されました。

前任者の退職に伴い、10月からポンパレモールサービスの責任者となりました。元々、出店者向けのクライアントウェブ画面の開発やその全般を見ていました。出店者をフォローする営業担当者がいるのですが、そこで開発内容や要件を決める際に私もヒアリングに参加するなど出店者とは随時コミュニケーションをとっています。

――開設3年を迎えましたが、この直近1年間の手応えや成果をどう見ていますか。

順調に成長してきています。商品数では2015年2月に約2000万点でしたが、1年後の2月には3000万点を超えました。当初は2016年の4月に達成する計画だったものを2カ月前倒しでできています。熱帯魚といった生体を扱う店舗が新たに入るなど、初めて取り扱うジャンルの商品もできました。
また、出店者数でも同じく1年間で2000店舗から3000店舗まで1.5倍に増やすことができています。流通総額についても商品数・出店数の拡大規模に応じて順調に増えているところです。この3月には3周年のセール企画もあり、また、「Pontaポイント」との統合の効果が徐々に表れはじめてくるところなので、更なる伸びを期待しています。

――その「Pontaポイント」ですが、今年2月より「リクルートポイント」と完全統合し、連動したサービスが始まりました。モール事業ではどのようなメリットが得られるのでしょうか。

リクルートサービスを使って貯めたポイントを(コンビニなど)Pontaの提携店舗で利用できるようになり、また、ポンパレモールもそのポイントの使い先の一つとして使えるようになりました。まだ1カ月程度の期間ですが、実際に「Pontaポイント」を持っている顧客がリクルートIDを使って新たに(リクルートの)サービスを利用するというケースは増えてきています。多い時では過去の2倍というケースもあるようなので、集客面での効果は大きいです。

――Pontaポイントをポンパレモールで使ってもらうために仕掛けていくこととは。

Ponta会員が閲覧する公式サイトの「Ponta Web」上での露出があります。モールでのお得なクーポンや商品、セール情報などを掲載してそこから流入してもらうようにすることになります。やはり、ポイントが貯まった後に使える先として「ポンパレモールがある」ということを認知してもらうことからになるでしょう。他社の事例で言うと、ファミリーマートさんなどで得た「Tポイント」をECで使うと考えた時、今では「ヤフーショッピング」がすぐに想起されるかと思います。それと同じように、例えばローソンさんやケンタッキーさんなどで貯めたPontaポイントを「ECではポンパレモールで使う」というようにすぐに想起してもらえる世界を目指していきたいです。

――新しい会員が増えたことで、モールの顧客属性が大きく変わっていくことは考えられますか。

ポンパレモール自体の顧客は30~40代の女性が中心です。元々、「Hot Pepper」や「じゃらん」といった他のサービスで貯めたポイントの使い先として出来た緯があるため、他のサービスの顧客属性に寄っている部分はあります。今後はそれ以外の新しい層が入ってくる期待がかなり大きいです。Pontaの提携店舗を使っている人たちがどういう属性の人たちかはこれからよく見極めていく必要があります。

――それにより、モールでの品ぞろえや訴求方法など何か運営面で変えていかなくてはならないことはありますか。

(既存の)Ponta会員が新たにモールに来るのは「この商品が欲しいから」という動機よりも、「このポイントを消化したいから」というシンプルな理由からだと思います。なので、そういった顧客に対してポイントを切り口にした提案をしていくことが大事になるでしょう。例えば、一人ひとりの持っているポイント数に対してマッチした商品を個別に提案したり、よりポイントが貯まりやすいキャンペーン企画を最適のタイミングで案内する方法などがあると思います。

――統合により、今後、既存のリクルート会員がPontaの提携店舗先に流出してしまうようなデメリットは考えられませんか。

もちろん、「出ていく」こともあるかと思いますがそれはあまり気にしていなくて、むしろリアルとネットのサービスでうまく顧客を循環させて活性化していくことの方がメリットが大きくなると考えています。まだ始まったばかりですが、いずれにしても今後はPontaポイントを1つの軸として戦略を立てていくことは間違いありません。モールを知ってもらうきっかけになるので、そこを通じて来た顧客に対していかにメリットを感じてもらえるかが鍵になるでしょう。月末キャンペーンや最安値保証など独自の企画を拡充していき、より選ばれるようにしていきたいです。

出店者の負担抑えた越境EC支援

――この1年間で特に注力した施策は何でしょうか。

顧客データ分析です。初回購入の商品ジャンルによって、その顧客が次に購入する商品も読めるのではないかという仮説のもとで様々な分析を進めていました。この1年間でそのデータがかなり蓄積されてきましたので、これからそれを具体的に施策化できるようになると思います。

――出店者向けのサポート体制についてはいかがでしょう。

先ほどの話とも関係しますが、昨年9月に出店者向けの顧客解析ツールを導入しました。これまでより更に踏み込んだ形として例えばアクセス解析であったり、推されているポイントや反対にクリックされていないところなどが分かるようなツールを出店者が簡易に導入できるようにしたのです。今のところ半年間で全体の1割強程度の出店者から利用申し込みがあるほど評判が上々です。このツールを活用してコンバージョン率が以前の105%に向上したところもあるようです。若干、分析スキルも必要になるツールなので、今後は誰でも簡単に使えるようなサポート体制を整備していく必要があるでしょう。

――越境ECの支援に向けて海外発送代行企業などと連携したサービスを相次いで開始されました。

越境ECは他社でも多く導入されてきていますが、以前から海外への販売は(出店者にとって)まだまだ敷居が高いのではないかという印象を持っていました。具体的には翻訳の問題、国ごとに異なる決済手段、海外配送の料金やスピード、消費者からの問い合わせ対応などがあります。モールとしてこれらの課題を解消するために、まずは現地に強い企業とアライアンスを組んでいくことを考えたのです。まずはじめに、groowbitsが手がける韓国向け越境ECサイトにポンパレモールの商品情報を提供するという形で開始しました。これは同サイトが(現地の消費者の代わりに)購入代行するサービスなので出店者にとっては特に越境ECを意識せずに国内で売っているものがそのまま海外でも販売できるようになったのです。

顧客デー タ 分析、着々今年はその具体化へ

――そのほかに、出店者からの要望を受けて新たにテコ入れしたものはありますか。

他のリクルートサイトとの連携を求める声が多かったことから、連携施策の1つとしてクーポンサイトの「ポンパレ」においてポンパレモールで使えるクーポンを配布しました。結果的に24時間強で300枚が完売するという大きな反響がありました。そこで獲得した顧客はポンパレモールにとっては新規の人たちでしたので、客層の広がりに効果がありました。その後、いくつかの出店者からも同企画への参加を希望する声が上がっています。

――そのほかに、グループで運営するサービスとの連携は。

コンテンツマーケティングの一環として「ポンパレモール、やってます。」というオウンドメディアサイトを3月7日から開始しました。最初に上げた記事では「こんなホワイトデーは残念ランキング」といった特集があり、記事の最後にモールへのリンクを貼って誘導しています。基本的には毎日更新する形で、季節行事や出店者の面白い商品、あるいはモールとは全く関係ない話題も含めて幅広くコンテンツを配信し、モールを知ってもらう機会にしています。これについても、今後はグループ内で運営しているキュレーションマガジンサイトの「ギャザリー」の人気記事を活用していくなど連携を図っていく考えです。

――モールでオムニチャネルを取り入れた施策としては何がありますか。

実店舗などで起動してチェックインするとポイントなどがもらえるアプリ「ショプリエ」を使ったものがあります。実店舗を持つ出店者の近鉄百貨店さんとの企画では、実店舗への来店チェックイン後にモール内で展開するプレゼントキャンペーンに応募ができるという内容で行いました。かなりの応募があったようで、今後は企画に参加する出店者をもっと増やしてクーポンを付与する企画など提案の幅を増やしていきたいです。

――サイトのUIは定期的に改善していますか。

一昨年前から各店舗が顧客に配布する形式のクーポン機能を導入していたのですが、利用率があまり高くないという問題がありました。顧客の声を聞くと「自分が購入時にクーポンをちゃんと使えている状態なのかどうかが分からない」といった意見があったので、カート画面上にクーポンを表示するように変えました。使えるクーポンを購入時にきちんと提示するようにしたことで、今では利用率も改善しつつあります。

「物流の改善」が今後のテーマに

――他社のモールの動きや、今後の仮想モール市場の行方をどう見ていますか。

あくまでも個人的な見解なのですが、アスクルさんの「LOHACO」がポンパレモールとちょうど同じ時期ぐらいにローンチされたこともあって注目しています。日用品ユーザーを非常にうまく取り込んでいる姿を一顧客の視点で感じています。

やはり2016年は物流面の改善が大きなテーマになると思います。今でいうと大手物流事業者で、コンビニ受け取りや駅ロッカーの活用などオープン化に近い形での取り組みが進んでいます。ECを活性化させるためには物流面の顧客の負の解消というのはかなり大きなテーマです。今の仮想モール市場の流れはそこに向かって行っている印象なので、当社としても重要視しています。

――物流施策で重視することとは。

まず、速さが大事だと思います。昨年の夏から翌日お届けサービスを開始しました。いわゆる「即時配送」に関しては、当社がモールとして自前で倉庫を持っているわけではないので、どこかとアライアンスを組まない限り難しいでしょう。ただ、別の形で物流面の改善はできると思いますので、そこに注力していきたいです。

プロフィール

山下隆太(やました・りゅうた)氏1980年生まれ。大手WEBサービス企業から、2014年リクルートライフスタイルに転職、「ポンレモール」の開発統括、クライアントウェブリーダーを経て、2015年10月からポンパレモールプロデュサーに就任。

取材後メモ

「ポイント」や「物流」「決済」など、仮想モールを巡る競争軸は年々進化し続けており、各モールとも時代に先駆けて変化を取り入れることが目下の優先事項となっている。運営3年の同社の場合、他モールと比べて経験や規模感では多少見劣りしてしまう面もあるが、「後発組だからこそ動きやすい」という考え方が社内でも浸透している。その言葉通り、グループ内の各種サービスと連携して規模に応じた小回りの利く独自企画を相次いで実践するなど、新しいテーマへの挑戦には非常に意欲的だ。今回の「ポイント統合」という大きな転換期に果たしてどのような画期的な施策を生み出していくのか。今後もその動きに目が離せないところだ。

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