アスクルの「ロハコ」、“待たせない配達サービス”をスタート ――配達時刻を30分幅で事前通知、まずは東京と大阪の一部で

配達日先日(当日配送の場合は昼)までにアプリ のプッシュ通知で配達時間を30分幅で通知

アスクルは運営する日用品の通販サイト「LOHACO(ロハコ)」で購入商品の配達時刻を配送日前日までに30分幅で顧客に通知するサービスを始めた。顧客が商品購入時に指定した配送時間枠の中で配送日前日までにより細かく配送時刻を算出して30分幅の配送予定時間を通知するもの。さらに配達直前にも「もうすぐお届けします!」などと通知する。配送各社も配達時間指定サービスを展開中だが、2時間幅など指定時間幅が長く、通販利用者は「通販荷物の受け取り待ち」が1つのボトルネックとなっていた。アスクルでは自社便を活用することで細かな配送計画設定を可能として、利用者の「荷物待ち時間」を軽減、利便性を向上させる。まずは都内および大阪市内の一部で始め、今期末までに東京23区および大阪24区全域まで対象エリアを拡大していく考えだ。

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配達当日には配達直前の10分前にも同じくプッシ ュ通知で「まもなくお届けします!」と通知する

自社グループのドライバーと

配送車で実施

「ロハコ」が展開を始めた新サービス「Happy On Time(ハッピー・オン・タイム)」は物流子会社のASKULLOGISTによる自前のドライバーと配送車を使った自社配送で行うもの。顧客が商品購入時に指定した配送時間枠の範囲で事前に計算して策定した配送計画に沿って配送日の前日までに、当日配送の場合は当日昼までに、30分幅で配達予定時刻を「ロハコ」の専用アプリの場合(PCおよびスマホサイトでも利用可能)にはプッシュ通知で顧客に知らせる。
また、配達10分前にも再度通知する。配送1時間前からはアプリまたはサイト上の地図で配送員の位置も確認でき、また、同日内であればアプリなどを介して商品受け取り時間の変更や再配達依頼などにも対応。また、配送が遅延した場合も通知する。さらに廃棄に困る梱包材の削減のためにエコバッグでの商品配送も行う。
なお、対応商品は「ロハコ」が展開する商品のうち、受注後に精米して配送するグループ会社製造の米「ろはこ米」など一部の商品は除くが、物流センターに在庫する約6万4000アイテムが対象となっている。

「Happy On Time」では1時間ないしは2時間幅でユーザーが 配達時間帯を指定できる。2時間枠指定は無料、1時間枠指 定は税込350円を徴収(購入額税込3900円以上は無料)する

8月からは1時間幅での

時間指定開始で本格化

すでに5月27日から都内4区(千代田・中央・港・江東)と大阪1区(北)の顧客に配送指定時間を2時間枠とし「Happy On Time」のテスト稼働を初めているが、反響もよく、また、国交省によると一般的な配送では23%となるという初回配達時に荷物(購入商品)を受け取れなかった「不在率」が同サービスの場合は6%まで抑えられるなど一定の成果があったことなどから、8月末からは本格的な展開を始める。本格展開にあたって指定時間を1時間幅でもできるようにし、かつ未対応だった午前6~8時や午後10~深夜12時の早朝・深夜帯の時間指定も対応する。対象地域も東京は世田谷区を加えて5区、大阪は福島区と此花区を加えて3区で展開する。
なお、同サービスの利用時で、かつ1時間枠の時間指定時には顧客から税込350円を徴収する。ただ、1回の購入総額が税込3900円以上の場合は無料で対応する。2時間枠指定の場合は購入額に関わらず、無料としている。


競合が進めるスピード競争とは

別の差別化を

日用品ECおける配送のトレンドは「配送時間の短縮」、つまり、アマゾンジャパンが始めたような1時間以内配送などのスピード勝負となりつつあるようだが、「そこに本当にニーズがあるのか。お客様への調査をかなりした結果、一番、配送で求められていたのは『待つ時間を解消して欲しい』というものだった。もちろん、早く欲しい商品についてはすぐに配送して欲しいという要望もあるが、普通に使うものについてはスピードよりも、『午前中』の中ででもっと細かい時間指定ができないか、などといった“待ち時間の軽減”だった。そうした結果を受けて、配送時間の競争ではなく、お届け時間をいかに細かく約束できるかを突き詰めた方が自分達の強みを活かせるという結論に達した。かつ当社が持つBtoB通販の荷物や自社トラックなどを活用すればローコストでよいサービスができるのではないか」と同社の岩田社長は今回のサービスの開始に至った経緯と狙いを説明する。
また「このサービスは基本的にスマホによるコミュニケーションなのでお客様と頻繁なやりとりができる。そのため、お客様とのエンゲージメントを高めることにもつながる。このサービスを継続していくことで強いエンゲージメントを持ったお客様とより関係性を深められることにもなると考えた」と「Happy On Time」の別の狙いについても明らかにしている。

このほか、「Happy On Time」の実施で日用品だけでなく、「生鮮品」の取り扱いを含めた可能性や人工密度の高いエリアでは工夫次第で配送コストを低減できる自社便配送を活用した方がスト優位性を高まるなどの将来の様々な可能性を試す試金石の1つという側面ある模様だ。

AI導入で配送時間の

精度アップへ

現在、導入した配送管理システムで効率的かつ正確な配送計画の構築を図っているがより精度の高い配送計画を組むべく、立案した配送計画と実配送時の「“誤差”の修正」に本腰を入れる。そのため、日立製作所の人工知能「Hitachi AI Technology/H」を導入して、「渋滞情報」や「気象情報」「イベント情報」「車両情報」「ドライバーの勤続年数」などデータを分析させ、“誤差”を誘発する大きなトリガー(要因)についての分析に着手し、配送時間誤差の極小化と配送効率改善の取り組んでいく考え。同社によればAIと配送管理システムの直接接続はまだスタートさせていないものの、すでにAIを活用をした分析は始めており、有効なデータが出てきているようだ。

「Happy On Time」は我々のEコマースを進化させる大きなツールだと意気込む岩田社長(写真=中央、6 月28日に埼玉県内の同社物流拠点で開催した記者説明会の様子)

対象エリアの拡大については「『HappyOn Time』は我々のEコマースの進化させる大きなツールだと確信しているが、配送生産性を含めた効果検証のチェックも大事だ。12月の段階でにこれまでのリピート率や購入率などの結果などを総括をして、次の段階に進めるか否かという判断をきちんと行う。やみくもに広げるわけでなく、そうしたステップをきちんと踏んだ上で、エリア拡大を進める」(岩田社長)とした上で当面は都内と大阪市内の物流拠点から「Happy On Time」の商品を発送している関係もあり、「反響や状況を見ながらとはなるが、今期中(2017年5月)までには東京23区、大阪24区まで広げていきたい」(河村勝宏執行役員=上写真の中央左)とする。
なお、「Happy On Time」の実施にあたっては今期、7億円を販促費として計上しており、予定通り、エリアを拡大した場合でも当該予算内で対応できるようだ。
今回の試みで「購入商品の受取のために“待つ時間”をなるべく短縮してお客様の負担を減らす」(河村氏)ことで利便性を高め、競合との差別化を図れるか。成果が注視されそうだ。

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