「動く棚」や「ピッキングロボ」を導 入し庫内作業の効率化や省人化へ  EC 物流のロボット活用の現状は?

規模拡大とともに増加する商品出荷の作業をいかに効率化していくか──。これはネット販売実施企業にとっては永遠のテーマの1つだ。受注が増え、売り上げが上がることはありがたいことだが、一方で物流拠点を広げたり、庫内作業員数を増やしたり、最新のマテハン設備を導入したりなど増えた出荷量を処理できる体制を構築し続けなければならないわけだ。もちろん、それには多額のコストは発生するわけで、事業者の負担は増すばかりだ。
そんな中、注目され始めたのはいわゆる“ロボット”の導入だ。本来は「人」が担ってきた作業を機械に行わせたり、人の作業の支援させることで省人化を図り、また、人よりも早い速度で作業を行わせることで処理能力や作業効率を高めることができるようになる。
すでに物流拠点に最新のロボット技術を導入して、出荷作業などの効率化を進めるアマゾンジャパンとアスクルの事例を通じて、EC物流におけるロボット活用の最新事情をみていく。

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日本にも初めて川崎FC に導入されたロボット棚「アマゾンロボ ティクス」

アマゾンジャパンの場合

“可動式商品棚”でピッキング作業を効率化

「人が棚に商品を取りに行くのではなく、棚が人のところまで持ってくる?」─。アマゾンジャパンは2016年8月から稼働を始めた神奈川・川崎に開設した新物流拠点「アマゾン川崎フルフィルメントセンター(FC)」で、すでに米アマゾンなどで導入されている注文データに応じてピッキング担当者のもとまでロボット付き商品棚が自ら動き、従来よりも効率的なピッキングが可能になる可動式商品棚「アマゾンロボティクス」を日本で初めて導入した。

「ドライブ」と呼ばれる機械は最大340kg の商品棚を支えて秒 速1.7m の速度で動く

総床面積が約4万平方メートル、3階建ての川崎FCに導入した「アマゾンロボティクス」は四方すべて商品が収まる棚となっている“ポット”と呼ばれる高さが2.3m 程度の商品棚とその棚を下から支えて(約340㎏まで積載可能)、秒速1.7m の速度で動かす“ドライブ”と呼ばれるオレンジ色の機械からなる可動式商品棚で、米アマゾンが2012 年に物流ロボットの開発会社を買収、その後、物流拠点に順次導入を始めた「キバ・ロボット」をベースとしたもの。なお、日本では川崎FCが初導入となるが、米国や欧州のアマゾンでは導入が進んでおり、現在までに19の物流拠点で運用されている。
「アマゾンロボティクス」の利点は従来の物流センターでは一般的なピッキングの流れ、つまり、注文データに応じて、作業員が当該商品が在庫されている固定の棚まで出向きピッキングする形ではなく、必要な商品を在庫した“棚”が自ら動き、ピッキング担当者は基本的には定位置から動かず、棚出しでき、ピッキングの作業効率を大きく高められる点だ。

自動的に最適なロボット棚が作業員のもとまで行き、商品入荷時の棚入れ(写真㊤)や注文に応じたピッキング(写真㊦)が作 業員が動くことなく、その場で効率よく行なうことができる

川崎FC では3階にある「AR(※「アマゾンロボティクス」の略)フロア」と呼ばれるスペースに100台以上(台数は非公開)の“ロボ”を導入し、床に一定間隔に貼られた専用のバーコードを読み取り、自らの位置情報を把握しながら24時間、縦横無尽に動き回っている。「ARフロア」は“ロボ”が稼働する金網で囲まれた無人エリアを中心としてその周辺に「ステーション」と呼ばれるスペースをいくつか点在させ、作業員がそこに集まってくる“ロボ”に倉庫に入荷した商品の“棚入れ”と顧客から受注した注文データをピッキングする“棚出し”を行っている。

棚入れはベルトコンベアで搬送されてきた荷受けした商品を“ロボット棚”に在庫する作業で、作業員が在庫する商品のデータをバーコードで読み取ることで当該商品の大きさや数などから、収納すべき“ポット”をシステムが判別して、自動的に最適な“ロボ”が自らからの4面の棚の中で最適な棚に商品を在庫できるよう回転させながら作業員の下に来て、かつ商品のサイズなどから判断し、「この商品を入れる棚はこの場所がよい」という指示をモニター画面上で示す。作業員はそれらを参考にしながら棚の中に品を収納し、データを紐付ける流れだ。

なお、“ロボ”に在庫可能な商品サイズは「最大でみかん箱サイズくらいまで」(川崎FCセンター長の吉田憲司氏)。ただ、川崎FCは大型商品を扱う拠点ではないため、基本的に同拠点で扱う商品はすべて在庫できる。
棚出しは顧客からの受注データに応じて自動的に注文商品が在庫された棚の中から最も早く作業員が待つ「ステーション」に行くことができる“ロボが最も効率的なルートでやってくる。この“ロボ”の棚に在庫されているピッキングすべき商品の収納場所、数、商品写真などがモニター画面上に表示され、作業員はそれにしたがって、ピッキングし、専用の容器に入れ、作業を終えると商品を梱包するエリアへベルトコンベアで自動的に搬送される形だ。
「当社の一般的なFCでは固定の棚に在庫が収められ、注文が入ると人が取りにいくという作業を行う形になるが、川崎FC では“AR”を導入することで人が棚に取りにいく代わりに棚が自分で来てくれ、出荷までの処理時間の短縮や効率化につながっている」(吉田氏)とし、具体的な効果の指標などは明らかにしていないが“ロボ”の導入で「数字はお話できないが、(ピッキングなどの作業の効率は従来FCに比べ)相当、よくなっている。このFCの作業量を通常のFCでこなそうとした場合にはもっと人が必要になるがある程度の人員でできていることを考えれば」(吉田氏)とする。
「詳しくは決まっていないが、もちろん成長を続けている会社なので(これからも“ロボ”の導入は)考えている」(吉田氏)とし、同社では今後も「アマゾンロボティクス」を他の物流拠点にも導入していきたい考えのようだ。

【アマゾン川崎FCのセンター長に聞く 「アマゾンロボティクス」の仕組みとは?】

アマゾンジャパンが可動式商品棚「アマゾンロボティクス」を日本で初めて川崎FCに導入した。最新の物流ロボとはいかなるものか。同拠点のセンター長を務める川崎FCサイトリードの吉田憲司氏に仕組みを聞いた。(※12月6日に開催した報道陣向けセンター見学会での本誌記者を含む報道陣との一問一答から抜粋・要約)

Q:「アマゾンロボティクス」とは?

A:可動式商品棚です。「ドライブ」と呼ばれるオレンジ色のロボットと「ポット」と呼ばれる黄色い商品棚のユニットになっています。作業員が可動式棚へ商品の棚入れと棚出しを行います。センター2階でベンダーさんから受け取った商品がコンベア搬送されて(ロボット棚がある)3階に運ばれてくるわけですが、その商品を棚の中に入れ、在庫データを紐付けていくのが棚入れの作業です。商品の各種データから適したポットをシステムが判別して自動的に棚が作業員の前に来る仕組みです。またその棚の中で商品の大きさなどからどこに入れればよいか、モニター画面で作業員にガイドするようになっており、作業員はそのガイドを参考にしながら、棚に商品を入れてデータを紐付ける作業をします。棚出しは棚入れした商品を注文に応じてピッキングを行う作業です。一般のセンターは固定の棚に在庫が収められており、注文が来ると人が取りに行って作業をするという形になりますが、このセンターでは移動式棚がピッカーの前まで自動的に運ばれてきて、作業員が見るモニター画面上にどの棚にどういった商品が入っているかが表示されるので、作業員の方はそれにしたがって商品を棚出しして、商品バーコードを読み取り後、青色の容器に投入し、コンベアで2階の梱包工程まで自動搬送されるという流れです。

Q:導入しているロボットの数は?

A:公表していません。

Q:ロボットの連続稼働時間は?

A:詳しくは申し上げられませんが、充電は1日数回程度で済みます。(1回の充電で)結構、長く動きます。

Q:充電はどうするのか?

A:自分で充電しにいき、終われば動き出すようになっている。自動掃除機のようなイメージです。

Q:ロボットの速度は?

A:秒速1.7メートルで人間が歩くより少し早い感じです。棚出しや棚入れを行う「ステーション」の近くになると自分で考えて速度を落としたりしています。

Q:川崎FCはすべて商品在庫棚は「ロボティクス」なのか。

A:このセンターの規模を考えるともう少し在庫できるので、普通の棚も少しあります。しかし、ほとんど商品はロボット棚に入っています。

Q:ロボット棚にはよく出る商品を置き、そうではない商品は普通の棚に在庫している?

A:詳しくは言えないがそういう形になります。ロボット棚の方が作業しやすいので。

Q:従来による人手でのピッキングとの比較では作業効率はどれだけ違うか。

A:数字的にどれだけよくなったというのは言えませんが、相当よくなっています。このセンターで行う作業量をある程度の人数でできています。通常のセンターの場合はもっと人が必要になります。

Q:人件費の削減にもつながっているのか。

A:特に人件費を削減するために導入しているわけではないので何とも言えません。コスト削減より、作業のスピードアップと作業負担の軽減が目的でそれにより出荷までのリードタイムを短縮してお客様の利便性を高めたいと考えています。ただ、当然、作業効率が上がるということはコストダウンにもつながっているということになります。

Q:今後、「アマゾンロボティクス」は他のセンターにも導入していく?

A:詳しくは言えないし、決まっていないが、成長を続けている会社なので、考えていきたいとは思ってはいます。

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