アスクル 新小口配送モデルを実証実験、ビル入居企業に即配へ

アスクルは7月12日から、法人向けオフィス用品通販事業でオフィスビルの空きスペースに需要予測をした上で一定数の商品をあらかじめ輸送、一時保管し、実注文に応じて都度、当該スペースから近隣の顧客事業所のもとに台車で商品を配達する新しい小口配送モデルの実証実験を開始する。同小口配送モデルを確立することで最速で受注から1時間以内で商品を配送する迅速な配送サービスと物流現場の負荷軽減を両立できる可能性があるとしており、実証実験を通じてその有効性を検証していく考え。
通常、アスクルでは顧客からの注文に応じて都度、全国9つの物流拠点で顧客ごとにピッキング・梱包した荷物を出荷して輸送・配送を行っているが、7月12日から実証実験を開始する新たな小口配送モデルでは輸送と配送を分離。アスクルが保有する購買・配送のビックデータの解析によって立てたエリアごとの需要予測から実注文を受ける前に、一定数の商品を通常の都度出荷品とともに物流拠点から事前出荷し、これを東京・六本木の商業ビル「東京ミッドタウン」の館内に届く荷物がすべて集積される地下の荷捌き所の一角に借り受けたスペースに一時保管し、東京ミッドタウンに入館している企業などからの実注文があった場合、館内配送業務を担う佐川急便が台車で納品する仕組み(別図参照)。
なお、対象商品はまずは同社のオリジナルコピー用紙(A4のみ)に限定して実施する。今後はトナーなど定番商品を軸に対象商品を広げていきたい考え。
この新たな小口配送は従来の配送よりも顧客にとって注文から配送までのリードタイムが早まるなど配送サービス向上につながる。現状、同社の法人向けオフィス用品通販では都内を含む都市圏では当日の午前11時までの受注分では夕方までに配送するという当日配送を実施しているが、この小口配送では受注から配送まで最短で1時間以内という即配が可能になるという。これに加えて、一時保管スペースに商品を物流拠点から事前出荷する際、通常の都度出荷品を積載する車両の空きスペースを活用して輸送するため車両の積載効率が高まり、配送量が平準化し、生産性が向上するというメリットもあるという。また、一時保管スペースからビル内や近隣エリア内への納品には車両ではなく台車を用いることができるため、将来的には配送ラストワンマイルの担い手を輸配送事業者以外にも拡大できることから、宅配の現場負荷の分散や配送の労働環境の改善など社会的課題の解決にもつながるという。なお、同モデルは新たなEC物流の輸配送管理システムとして特許出願中としている。
同実証実験は「東京ミッドタウン」内にオフィスを構えている事業者を対象に開始するが、今後は都内の他の商業ビルのほか、東京以外の都市圏でも同様の形で実施して対象エリアを広げていきたい考え。実証実験は今秋までをメドに実施して、有効性などを判断し、本格展開するかどうかを決めるという。法人向けオフィス用品通販だけでなく、個人向け日用品通販「ロハコ」でも将来的には実施を検討しているようだ。
なお、この小口配送モデルの実証実験の実施にあたって事業者がオフィスビルの空きスペースを借り受けて、自社商品を一時保管する場合、当該スペースを貸与する行為が倉庫業法第二条第二項に規定する「倉庫業」に該当するか否かが不明だったため、アスクルが現行の規制の適用範囲が不明確な場合に新事業活動を行い得るようにあらかじめ規制の適用の有無を確認できる国の制度「グレーゾーン解消制度」を活用し国交省に「特定エリアの顧客に対し、消費する数量と期間が推定できる自社商品(コピー用紙等)について、顧客の注文前に最寄拠点(エリア内オフィスビルの空きスペース等)まで少量の対象商品を移動させておき、商品の注文があった場合は最寄拠点から短時間で配送するサービス」を実施予定とした上で、確認を求めたところ、「当該行為は『倉庫業』に該当せず、登録を受ける必要はない」としたため、実証実験に踏み切ったとしている。

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