【2010年9月号】モバイル通販の現状は?
モバイル通販市場が順調にその規模を拡大している。前号で触れたが、総務省とモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が発表した2009年のモバイルコンテンツ関連市場規模調査によると、モバイル通販市場における「物販系」の市場規模は、前年比12.7%増の4248億円。前年に続き2桁の伸びを記録した。
リアル店舗など、新たにモバイル通販に参入する事業者の増加が市場拡大の一因として挙げられているが、それでは、これまで市場をけん引してきた通販企業のモバイルの状況はどうなっているのだろうか。本誌が独自に行った、モバイル売上高や重要な販促手段であるメルマガについてのアンケート調査の結果を基に、09年度の主要なモバイル通販プレイヤーの状況を見ていく。
カタログ通販系はニッセンがトップ
モバイル通販における主要プレイヤーは「カタログ通販事業者」「ネット通販専業者」「モバイル通販専業者」に大別できる(表①参照)。
このうち売り上げベースで見ると、やはり市場拡大をけん引しているグループはモバイルがカタログの受注ツールとしての役割を担っている「カタログ通販事業者」だ。このグループ内の各社のモバイル占有率を前年との比較でみると、ほとんどの企業で拡大しており、カタログからネット・モバイルへの誘導が進んでいることが伺える。
個別に見ると、昨年に続いてトップのニッセンは、増収率は鈍化しているものの、依然2桁増をキープ。商品一覧ページをフラッシュ化することでユーザビリティを向上させたほか、購買履歴や閲覧履歴を分析し顧客への的確なメール配信を具現化するなどのモバイル強化策を推進したことが奏功しているようだ。このほか、千趣会も微増ながら増収を維持。スクロールは唯一の減収だが、モバイル占有率は伸びておりモバイルへの誘導という点では好調と言えそうだ。
夢展望、ケンコーコムが大幅に伸長
続いて「ネット通販専業者」。同グループはネット専業ゆえモバイル対応に注力できる強みがあり、モバイル占有率は前出のカタログ通販事業者より概ね高い。中でも注目したいのは夢展望とケンコーコムだ。夢展望はモバイルに絞った効率的な広告展開などが奏功し、増収率、占有率とも前回調査より大幅に拡大。ケンコーコムも占有率は他社と比べてやや落ちるが、増収率は昨年に続き2桁増となった。
このほか、スタートトゥデイやマガシーク、スタイライフなどのアパレル通販企業もそれぞれ受注の30~50%をモバイルが担う状況となっており、重要度は年々上がっている。モバイルでの集客が今後、勝敗を分けるひとつのポイントとなりそうだ。
最後は「モバイル通販専業者」だ。主要プレイヤーの数値を見ると、シーエー・モバイルが減収だったがモバコレとザッパラスが2桁増で推移した。同グループは売り上げ規模で比較すると前述の2グループには劣るが、携帯端末の性能の向上に合わせて今後、より利用率は伸びていく可能性が高い。iPhoneに代表されるスマートフォンの動向と合わせて注目しておきたいところだ。
メルマガ配信は週に「1回以下」が大半
ここまでは業績をベースにモバイル通販市場の現況を見てきたが、ここで、モバイル通販サイトへ誘導する手段としてもっとも代表的な「メルマガ」の状況をみてみたい。
まず、「1週間のメルマガ配信回数」については、「1回以下」がもっとも多く、割合では全体の約半分となる46%を占めた(表②)。「週に1回、今週のお勧め品を紹介するので」(文化放送開発センター)など、新商品の入荷やサイト更新のタイミングでメルマガを発行する企業が多いようだ。
2番目に多かったのは「3~4回」で、全体の29%。「お客様に不快感を与えず、かつなるべく多くの接点が持てる程度の回数として週の半分程度を設定している」(ベルーナ)、「ファッション~インテリアに及ぶ商品の新しい情報をいち早くお客様にお届けするため」(セレクチュアー)などの意見が寄せられた。
「2回」はやや落ちて21%。「週中、週末のアクセス増を狙って配信する」(ヒラキ)などのように、平日と休日に1回ずつ配信するケースが多いようだ。それ以外では「2度配信でタイムリーな情報をお届けできる」(シティネット)などの意見もあった。
配信曜日は金曜がトップ、水曜も急上昇
続いて「メルマガを配信する曜日」については、最多は「土日まえ」(東京ライフ)でアクセスが集中しやすい「金曜」が33%と圧倒的だ(表③)。ほかにも「開封率が高い」(大丸ホームショッピング)、「ネットの利用時間を考慮」(ニッピコラーゲン化粧品)などの声が集まった。
注目したいのは、21%で2番目に多かった「水曜」。週末に商品を届けてほしいユーザーのニーズを考慮した結果、最適な日程として水曜の配信を選択しているものと思われる。