LINEは6月15日、EC関連の新サービス「LINEショッピング」を開始した。仕組みはアフィリエイトモデル。ユーザーが通信アプリ「LINE」内のLINEショッピングを経由し企業の通販サイトに遷移して商品を購入すると、LINEポイントが付与される。LINEとしてはポイントの流通を増やして“LINE経済圏”を広げるのが狙いだ。LINEでは2018年度に流通総額1000億円を目指す。
約150サイトが参加
LINEショッピングは開始時点で約150の通販サイトが参加。公式アカウントやLINE@などLINEアカウントを利用している企業の中から、アパレルや総合通販など幅広いサイトをLINE側で選定したようだ。一部の大手仮想モールも参加しているが、LINEではブランドなどEC企業の自社通販サイトにポイントを多めに付与してもらうことで、露出されやすくしていくという。
新たに出店希望のEC事業者も受け付ける。企業はLINEショッピング内の法人向けの問い合わせ窓口から連絡ができる。参加条件は自社通販サイトを持っていることが必須で、付与できるLINEポイントが10%以上というのも基準となりそうだ。
LINEショッピングには初期費用や月額の固定費などはなく、出店企業はポイント原資を負担する。LINE側はそのポイントから一部を徴収して、自社の収益とする。来年をメドに広告も導入する。上位に表示されるような広告枠を設けるほか、LINEショッピングの公式アカウントを通じて毎月1万円以上を購入したユーザーだけにリーチできるような広告も検討している。
LINEショッピングは事前のテストですでに成果が出ている。約40サイトでテスト運用を行ったが、各サイトのアフィリエイト経由の売り上げを見ると、すべてのアフィリエイトの中でLINEショッピングが他を抑えて1位や2位に入っており、流通総額でも30%程度を占めているという。
テストでは新規率が38%
EC事業者にとってLINEショッピングの魅力は何よりも集客になる。そして集まる顧客が新規である割合も多くなりそうだ。
同事業で責任者を務めるLINEのLINEBizセンターリテールサービス室コマース戦略チームの藤原彰二氏によると、テスト段階の数値としてLINEショッピング経由で購入した顧客のうち新規だった割合は低い場合で15%、高いものでは大手アパレル企業で38%という新規率になっている。
つまりLINEショッピング経由で100人が商品を購入していたとして、うち38人が新規客だったというわけだ。これを踏まえ藤原氏は「基本的に新規がとれるメディア。LINEショッピングで新規を獲得して、公式アカウントなどからリテンションさせるというイメージを持っている企業さんは非常に多い」と述べる。
LINEショッピングにはEC事業者が持つLINEアカウントと連携する機能もある。そのためLINEショッピングを通じて、「LINE」の友だち追加も可能になるようだ。
実店舗でもポイント付与
LINEショッピングは来年から、ユーザーが実店舗などオフラインで購入してもポイントが貯まるようにする。出店企業はLINEが発行したバーコードをレジで読み込むと、オンラインと同じようにポイントを付与できるようになる。LINEはこの仕組みで特許を出願。オフラインでも簡単にポイントをバックできるようにすることで、オンラインとオフラインの垣根をなくし、LINE経済圏の好循環を図る考えだ。
LINEはこれまで「LINE MALL」や「フラッシュセール」「トリップバザール」などEC事業に着手したものの、撤退してきた経緯がある。“鬼門”のEC分野で新たに開始したLINEショッピング。自社ECではなく、送客プラットフォームとしてのチャレンジが成功するのか、注目だ。
【LINE・藤原彰二氏に聞く LINE ショッピングの狙いや特許の特徴】
Q:「LINEショッピング」開始の経緯について教えてください。
A:まずLINE経済圏をまわすという目的があり、決済サービスのLINE PayやLINEポイントで流通を増やしていくことを考えると、ショッピングは必要になります。そういう意味でやらない理由はありませんでした。そこで当社でユーザーを誘導するというモデルを作りました。新規ユーザーを獲得していただき、LINEの公式アカウントやLINE@でリテンションしてもらうといったことが合うと判断し、最終的に今のモデルになりました。ちょうど1年程前から企画がスタートしたのですが、LINEとしては1年も前から時間をかけてビジネスモデルを作るというのは珍しいです。
Q:リリースの段階で2つの特許を出願しています。
A:ポイントをもらうためだけに商品を発注してキャンセルをするというユーザーが増えます。実際にテストの段階でも増えていました。1つ目としては、これを防ぐための技術で特許を出願しました。違法ユーザーを減らさないと、出店のハードルが上がってしまいます。
Q:具体的な仕組みはどうなっているのですか。
A:LINEショッピングは「LINE」とつながっているので、「LINE」を使っている期間や電話番号の登録、スタンプの購入履歴、友だちの増加数といった「LINE」のコミュニケーション以外の部分でとれるデータから違法と思われるユーザーを検知して、その人たちのポイントバックの期間を伸ばし、逆に優良なユーザーには期間を早めることが可能になります。ポイントが発生するのは1カ月後くらいです。先にキャンセルデータが送られてくるのでポイントが付くことはないのですが、企業に受注があると、自動的に配送する準備ができてしまう。もし発送すると物流コストが発生してしまいます。ここをブロックするためにポイントバックの期間を長くし、使いにくくします。
Q:もう1つの特許の狙いはなんですか。
A:オフラインの領域なのですが、LINEが発行するバーコードをレジで読みこんでもらいます。その際にカートに入っている金額分のポイントをバックします。通常、この仕組みを導入するとなるとシステム改修が安くても2000万円ほどで高いと1億円ほどかかります。そこでなるべくお金をかけずにスタートできる仕組みを作って特許を出願しました。リアル店舗であっても購入前にユーザーがバーコード見せれば、同じLINEポイントが付与されるようになります。
Q:オンラインの決済に不安がある人や、試着したい人などを想定しているのでしょうか。Q:リアルもにらんでいるのが通常のアフィリエイトとは異なります。
A:そうです。また、市場的にはオフラインはオンラインに比べて10倍くらい違います。オフラインをどう取り込むかを考えたのですが、構想段階でLINEアカウントを生かすという概念がありました。LINE@は店舗とつながるという特徴があるので、そのコンセプトでいくと店でもポイントをバックしないといけないのです。
A:そうです。オンラインtoオフラインと、オフラインtoオンラインの双方に対応し、オンとオフの垣根をなくしてポイントがもらえるようにしていきます。