多くのEC事業者に大きな影響を与えた宅配便の値上げを筆頭に、新たな仮想モールの誕生や生鮮品ECの相次ぐ新規参入、急成長サイトを見舞った火災などなど様々な出来事があった2017年のEC業界。2017年におけるEC業界の10大(重大)ニュースを振り返る。(※本誌編集部が独断と偏見で選びました)

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【1位宅配便値上げが業界を直撃】

最大手のヤマト運輸の値上げを契機に佐川急便と日本郵便も追随。

2017年は宅配便の運賃値上げ問題がネット販売業界に大きく影を落とした1年だった。ネット販売市場の拡大に伴い宅配便個数が大幅に増加する一方、人手不足が深刻化しドライバーの負担が限界に達するなどで宅配便各社が値上げに動いた。最大手のヤマト運輸は値上げに加え、荷受量を抑制する総量規制も実施し、ネット販売事業者は代替配送委託先探しを迫られるなど運賃コストの負担増とともに大きな打撃を受けることになった。

運賃値上げはヤマト運輸が10月1日に基本運賃を平均約15%を値上げし、同時に通販企業など大口取引先の運賃も基本運賃以上に引き上げ始めた。佐川急便も11月21日から大型サイズの運賃値上げに踏み切り、日本郵便は3月31日に平均約12%引き上げる。大口取引先に適用している運賃についてはヤマト運輸同様に、他2社もネット販売事業者などへ値上げ要請している。

今回、宅配便の90%以上を担う大手3社すべてが値上げとなることから、ネット販売事業者はコスト吸収策に追われることになった。ファッション通販サイト「ゾゾ1位宅配便値上げが業界を直撃タウン」を運営するスタートトゥデイは10月に顧客が自由に送料を設定できる「送料自由」を実施し、その結果を受けて11月からは送料を購入金額に関わらず一律200円に変更した。大手通販企業も配送料の100円程度引き上げるところが見られた。ただ顧客から徴収する配送料の引き上げなどのコスト削減策は限定的なようだ。

顧客負担の増額以外のコスト吸収策としては、1つあたりのカートンに入れる量を増やし総カートン数を減らしたり、ポスト投函型が可能な配送形態を拡大して配送運賃の値上げの影響を抑制したりといった工夫に取り組む企業も見られる。また、化粧品などを扱う企業では、まとめ売りを強化するところもある。

一方、ヤマト運輸の総量規制では、取引先へ個数を前年実績より上回らない、あるいは削減するよう要請。ネット販売事業者は他の宅配便事業者などへの変更を余儀なくされている。歳暮などで荷物が増加する12月に入り一部に遅配があり、ヤマト運輸の総量規制の影響が出ていると見られる。同社は17年度と18年度の個数を抑制し、19 年度から拡大に動く計画。今年も同社の総量規制の実施を含め宅配便の動向に目が離せない。

【寸評】ヤマト運輸は時給など外部環境を含めて法人の運賃を決める仕組みを導入、再度の値上げの可能性も。

【2位ゾゾタウンがPB始動へ】

「ゾゾタウン」でボディースーツの説明動画を公開している

スタートトゥデイは10月30日、初のプライベートブランド(PB)を通販サイト「ゾゾタウン」で2017 年中に国内で販売を始め、18年春には海外販売もスタートすると発表し、ファッションECで高成長を続ける同社が自社開発のブランド展開に乗り出すことの現実味が一気に高まったことで、EC業界はもちろんのこと、取引先であるアパレル業界の話題もさらった。
12月中旬時点でPBは「諸事情により」(同社)開始が遅れているため全容は明らかになっていないが、科学やテクノロジーの力を駆使して“究極のフィット感”を実現するブランドであることや、商品は「超ベーシックなアイテムで誰でも1本や2本は持っている商品」(前澤友作社長)と説明していること、さらには在庫を多く抱えない事業展開を模索していることや、11 月22 日には“究極のフィット感”を提供するのに不可欠な採寸用ボディースーツの無料配布が発表され、ボディースーツで身体の1万5000カ所の採寸情報が得られることからも、PBはフィット感が重視されるシャツやパンツなど2位ゾゾタウンがPB始動へを受注生産型で展開するものと推察される。
「ゾゾタウン」に出店するアパレルブランドとの競合を懸念する声もあがる中、「デザインや価格で競合しないように配慮する」(前澤社長)としており、単純にゾゾで売れているアイテムをコピーするようなことはせず、「世界で戦える品質と価格帯のPBになる」(同)と自信をのぞかせており、数年以内にゾゾタウン事業の規模(2017 年3月期で約2000億円)を超える収益の柱に育てるとしている。
一方、ゾゾのPB展開が遅れる中、マガシークがひと足早く、繊維商社のモリリンと組んで展開するPB「ネセサリーアンドサフィシェント」を発表し、まずはニット製品12型を通販サイト「マガシーク」とNTTドコモとの共同運営サイト「d ファッション」で販売開始した。マガシークは今後、アパレルブランドとも提携して新規PBを立ち上げる計画で、3年後をメドに売り上げの1割をPBで確保したいとする。ファッションECモールの相次ぐPB参入により、今後は実質値引きとなるようなサービス競争から、PBによる差別化路線に軸足が移っていくか注目される。

【寸評】PB 展開もさることながら、採寸スーツはアパレルでの活用にとどまらない可能性を秘めていそう。

【3位KDDIの仮想モール「Wowma!」誕生】

新プランを発表する、ワウマ運営会社・KDDIコマースフォワードの八津川博寸評 史社長

2016 年末にDeNAから仮想モール「DeNAショッピング」と「auショッピングモール」を取得したKDDI。1月30日には「Woama!(ワウマ)」として再スタートを切った。料金を大幅に値下げした新プランをスタート。18年3月までの新規出店・契約更新を対象に、入会金と月会費を0円とするキャンペーンも実施した。さらには取得した2モールの統合、スマートフォン向けアプリの刷新、店舗向け管理ツールの改善なども行った。
近年は取扱高や出店店舗数が伸び悩んでいたが、出店者数は買収時点の約3000 から6000 に倍増。au の「スマートパスプレミアム」会員向けに毎週クーポンを配ったり、auユーザーに特典を提供する「三太郎の日」と連携したり、auユーザーの取り込みに腐心したことで利用者数も急増しているようだ。とはいえ、取扱高は他社モールに比べればまだまだ少ない。KDDI の掲げる「au経済圏」の中心になれるかは、店舗・ユーザーに「買い物するメリット」を提供できるかにかかっている。

【寸評】ポイントやクーポンで呼んできた新規を定着させられるか。KDDI の他サービスとのさらなる連携も課題。

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