食品通販市場において、「ミールキット」がトレンド商品となっている。食材と調味料、レシピがセットになったもので、素早く調理できる手軽さが特徴となる。働く女性の増加に伴って、家事の中で負担が大きな“料理”に対する時短ニーズが顕在化。短い調理時間で簡単においしい献立を作れる利便性が奏功し、食品通販市場のトレンド商品となっている。
昨今、ネットスーパーや大手ECでミールキットを取り扱うケースが増えているが、ヨシケイ開発など専門とする食材宅配事業者もいるほか、今秋にはNTTドコモがオイシックス・ラ・大地と組んで参入を予定している。今後、市場はさらに活性化していくようだ。ミールキットを取り扱う主要企業の動向を見ていく。

ネットスーパーでも売れ行きが好調

生鮮品のネット販売「IY FRESH」でミールキットを販売している

セブン&アイ・ホールディングスは昨年11月28日に開始した生鮮品のネット販売「IY FRESH」でミールキットを販売している。
「ミールキット」はスタート時点では「野菜が美味しい!彩野菜と白身魚の黒酢あんかけ」や「きのこ香る!豚肉と三種きのこのXO醤炒め」「お子様大好き!きのことニラのガリバタチキン」「やみつき!さつま芋ケンピ」「野菜たっぷり!ふんわかお好み焼」「いろいろ便利!じゃがもっちりチーズIN 肉巻」の6種類を販売。また「野菜と魚のあんかけ」であれば野菜と調味液のみを入れて、魚は自身で用意して好みの量を作れるようなセットなども用意している。
サイト上ではミールキットなどを「簡単調理」、レトルト食品などを「温めるだけ」、惣菜などは「そのまま食べられる」など各カテゴリーに分けて検索しやすいようにした。また、同サイトで取り扱う商品を利用した料理の作り方を1分弱の動画で紹介する「IYFRESHレシピ」も掲載。スタート時点では「炊飯器で簡単!サラダチキンde参鶏湯」や「エスニックなスパイシーさが魅力!ハリラー」など49の動画をアップした。
「IYフレッシュ」の運営で組んでいるアスクルによると、ミールキットの反応が良いという。これまでに、顧客の反応を見ながらサイトの回遊性を改善したことや、送料無料となる購入額を4500 円から3000円に引き下げたことなどが奏功したようだ。なお、アスクルによると、「ロハコ」と比べて「IYフレッシュ」ユーザーの購入頻度は2倍に、購入単価が1・5倍となるなど好調に推移しているという。今後展開エリアは現状の東京・新宿区と文京区から広げ、年内に城東地区へ、来春に城南地区へ拡げる予定。

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「アマゾンフレッシュ」で品ぞろえ強化

アマゾンジャパンは、ミールキットについて冷蔵品はデリア食品、冷凍 品はタイヘイから提供を受ける

アマゾンジャパンは今年2月から、食品EC「Amazon フレッシュ」でミールキットの取扱いを開始した。冷蔵品はデリア食品、冷凍品はタイヘイから提供を受けてスタートし、まずは8商品をラインアップ。品ぞろえを拡充し、4月時点では16商品へ増やした。5月31日から、オイシックス・ラ・大地が「アマゾンフレッシュ」内にブランドページを開設し、ミールキットの供給を開始している。まずは5アイテムの取り扱いからスタートし、一部週替わりで新商品を提案している。

なお、「Amazon フレッシュ」では、ミールキットのほかにサラダ・惣菜の人気店「RF1」の取り扱いを始めるなど品ぞろえを強化している。

“週末ごちそう”に対応する専門EC サイトが登場

参入するのは大手小売りだけではない。ブレンドは16年11月にミールキット専門ECサイト「テイスティテーブル」をスタートしていた。シェフのレシピを家庭用にアレンジし、必要な食材をセットしたミールキットを取り扱う。6メニューをラインアップし、金曜日から日曜日の週末に届ける。

キットの調理時間は平均約40分で、シェフの本格的なレシピを自宅で食べられることが特徴。時短ニーズではなく、週末の“ごちそう需要”を狙うもの。スーパーでは手に入りにくい食材を1度に必要な量だけを入手でき、食材を探す手間や調味料を無駄にしてしまう負担がないことが顧客の利便性につながっている。
2メニューでスタートした品ぞろえは、選べない不便さを課題に6メニューまで拡大。量目は2人前のみの取り扱いだったが4、6人前を作り、家族構成やシーンに合わせて選べるようにした。
レシピの考案は30人のシェフが行い、自宅で作りやすいようにアレンジして商品化する。シェフのレシピは本格的で、調理時間60~90分を必要するものもあるが、ユーザーが作りやすいよう加工済み食材の使用などで簡易化を図り40分程度で作れるようにしているという。
食材の調達はブレンドが行い、加やセットを複数の外部業者に委託している。将来的には自社工場を構えることを検討したい考え。
中心顧客層は30~40代で、家族構成は2~3人が多いようだ。週末に家でゆっくりと食事を楽しみたいニーズに対応している。価格は2 食分で3000 円と、平日の時短ニーズに対応した商品と比較すると高額だが、有名レストランでの外食や料理教室と比べると価格が抑えられるとした。
新規客獲得は購入者の口コミを中心に認知度の向上を図る。友人や知人を紹介できるクーポンを1人5枚配布する。クーポンは3000 円分で、2人分の1キットを手軽に利用できる仕組み。クーポンを利用できる人数を絞ることで、「ユーザーが、使ってくれそうな人を選んで紹介をしてくれると予想した」(ブレンド)という。初回購入者向けには、「鴨ロースト」や「豚ヒレのカダイフ包み焼き」の2アイテムを紹介する。自宅では調理する機会が少ないメニューで、インパクトや見た目のボリューム感が人気の理由となっていた。初回購入時の満足度を高めて、リピート購入につなげていく。
ミールキットの市場はネットスーパーや生鮮品ECを中心に取り扱いが広がるが、平日の時短需要に対応したものが多く、調理時間10~20分のものが主流。ブレンドでも時短へのニーズはあると分析するが、「まずは週末需要に対応し、ブランド構築をめざしたい」と話す。今後、品ぞろえの適正化や平日向けメニューの提案を検討するほか、調理器具や酒などミールキットとのコーディネートができるアイテムの販売も検討したい考え。

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