2020年の通販市場、7割が「拡大」と予想 ―― 重要課題のトップは「新規顧客の開拓」

2020年の通販市場については7割の企業が「拡大す る」と予想

本誌姉妹紙の「通販新聞」では12月に、通販実施企業を対象に「今後の市場予測」についてアンケート調査を行った。2020年の通販市場については「拡大する」と回答した企業の割合は69%にのぼった。ネット販売が通販市場拡大のけん引役になるとの見方が多かった。他方、事業を展開する上での「重要課題」についての質問では、トップになったのは過去の調査と同様に「新規顧客の開拓」だった。今後の通販市場はどうなっていくのか。また、さまざまな課題にどう向き合うのか。各社の声から探ってみた。

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ネット販売がけん引役に

市場予測のアンケートでは「2020年の通販市場について、どのように予想していますか」と尋ねた。それに対して「拡大する」「横ばい」「縮小する」の3つの中から回答してもらった。

結果、「拡大する」は1年前に実施した前年調査に比べて13ポイント減少したものの、69%と最多となった。

次いで「横ばい」が前年から10ポイント増えて26%に。最も少なかった「縮小する」は前年調査から3ポイント増加して5%だった。「拡大する」を選択した企業の回答理由で目立つのはネット販売が市場拡大をけん引するという見方だ。

例えば「ネット販売事業の拡大が見込まれるため」(ベルーナ)や、「ネット通販のさらなる拡大」(マルハニチロ)、「世の中のトレンドとしてネット通販への移行が加速している」(全日空商事)、「ECの加速。共働き世帯の増加に伴う宅配の需要増」(オイシックス・ラ・大地)といった回答が見受けられた。

テレビ通販系の企業からもネット販売を拡大要因に挙げる声が複数寄せられた。具体的には「インターネット販売の拡大が見込まれるため」(ジュピターショップチャンネル)、「リアル店舗販売よりECを中心にした通販市場は拡大していくことは当然に予想できること」(テレビ東京ダイレクト)、あるいは「スマホ決済等の拡大もあり、通販市場の拡大傾向は継続すると思うが、サービス面の充実度により消費者の選択基準も厳しくなってくると考える。伸び率は鈍化するのでは?」(GSTV)といった反応もあった。

これ以外の拡大の理由としては「手軽にいつでも購入できるチャネルとして、利便性が高いため、さらに拡大していくと考える」(ファンケル)や、「新規参入が依然多いから」(世田谷自然食品)などの声もあった。

EC は伸びても増税で横ばい

次に「横ばい」と予測した企業の回答理由を見ると、「EC市場の伸長はあるものの、増税の影響などにより横ばいは続くと想定」(リフレ)と増税がマイナス要因になるとの見方や、「市場については微増していくと思うが、競争は激化していくので厳しい状況が続くのではないか」(ヤマサキ)と、競争の激化を挙げる企業もあった。ほかには「google のルール変更」(タンスのゲン)や「結果的にパイの奪い合いであり、市場規模そのものは増えていかない」(エー・ビー・シーメディアコム)との意見も。

オリンピックでTV の枠減る

最後に「縮小する」を選んだ企業の声を紹介すると、「2020年夏のオリンピックでTV通販は枠が減少し、約1カ月間はかなり落ち込むと想定される。オリンピック前後も影響が出て年間でのリカバリーは厳しそうであるため」(ロッピングライフ)と、オリンピックがマイナス影響を与えると予想。

ほかには「当社が扱うPC市場は、2020 年1月に『windows 7サポート終了』がある。2019年はリプレイス需要が高まっている。その反動で落ち込みが予想されているため」(エプソンダイレクト)のように、商材の特殊要因によって落ち込むとする企業もあった。

課題の4位までは前回と同じ

一方、課題についての質問では、通販・通教を事業展開する上で、現状の課題、あるいは今後の課題になると捉えている項目を17の選択肢の中から回答してもらった。重要度の高い順に3項目を選択してもらい、その結果を
通販新聞が独自に集計しポイント化し
た。

その結果、1位は「新規顧客の開拓」、2位が「既存顧客の継続化」で、ともに事業成長のキーとなる項目として、重視している企業が多かった。3位は「商品の開発・育成」で、4位には「物流コストの削減」が入っており、上位4位までの項目については前回調査(2019年7月実施)と同じ結果になった。

両輪となる顧客開拓と継続化

通販事業の課題では、「新規顧客の開拓」が前回調査に続きトップに

課題のトップとなった「新規顧客の開拓」は、97ポイントを集めた。2位とは35ポイントの開きがあり、この課題を最重要視している企業がいかに多いかを窺わせる結果となっている。

「新規顧客の開拓」を選んだ企業の回答理由を見ると、「継続的成長のために顧客数の増加は必須」(ヒラキ)や「新規顧客の獲得がビジネス拡大の鍵となるため」(田中貴金属ジュエリー)などと、事業成長の上で根幹とみなすところが多いのが特徴と言える。また、「国内市場の飽和が続く中で新規顧客の開拓の難易度は増す見込み」(リフレ)とし、厳しい状況の中でも新規開拓は取り組み続けなければならい課題とする企業も。

2位の「既存顧客の継続化」は62ポイント。新規顧客を獲得し、その顧客へいかに継続利用を促せるかが事業基盤の維持、成長へつなげられるだけに今回も多くの企業が選択している。ただ、事業の両輪ともなる課題としていながらも、「新規顧客からのアプローチはあるが、売り上げの伸びに反映されていない(1回限りの購入に終始)。定着感がない」(GSTV)というような声もあり、よりLTVを重視する上で新規開拓以上に重視する必要を訴える企業もあった。

重要度高まる「商品開発・育成」

60 ポイントで3位となったのは「商品の開発・育成」。2位の「顧客の継続化」に2ポイント差まで迫っており、前回調査の13ポイント差に比べて、その差を大幅に縮めた。

同項目を選んだ理由を見ると、「新商品投入は、既存顧客のリピート率向上につながる」(アプロス)や「(売上拡大のためには)品ぞろえの幅を拡大することが課題」(ダイドーフォワード)、「新たなターゲット層も踏まえた商品開発、並びに次の柱となる商品開発が重要」(八幡物産)といったように、商品が新たな顧客、そして既存顧客を魅了して事業成長につながる上で重視する企業が多くなっていると言える。

4位は32ポイントで「物流コストの削減」だった。大手の宅配便の値上げ騒動から一定の期間が経ても、多くの通販企業にとって物流コストが依然として悩ましい問題となっている。宅配便の運賃に加えて、物流センターなどの物流加工費なども人手不足の影響で値上がりしている状況もあり、多くの企業が重要課題として捉えていると思われる。

物流コストに関しては「今後も配送運賃・資材・人件費の上昇の影響を最小限にするため取り組みが必要」(アプロス)や「物流コスト増を収支上吸収するのが喫緊の課題」(阪急キッチンエール関西)というように、現状においてコスト上昇に直面していて、その対応策に取り組む必要性に迫られている企業が多く見受けられる。

1つ順位上げた「ウェブの集客」

5位は前回調査で6位だった「ウェブの集客」がランクイン。29 ポイントになり、「客単価の向上」と入れ替わる恰好となった。

回答では「カタログ重視の売上構成をECに移行させる」(ダイワ)といったように、先々を見据えてウェブへのシフトを強める企業と同時に、「新規顧客開拓の上で、まだ伸びしろがあるのはウェブ集客。ターゲットとなるシニア層もどんどんウェブ利用が進んでいる」(リフレ)や「既存リストの年齢層は高いが、高齢者のウェブ利用が急速に高まっている」(ロッピングライフ)と、ネット販売の裾野が広がっている現状を踏まえた課題とする企業がある。

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