au PAYマーケットが全店にアフィリエイト導入 ― 店舗は2~8%負担、強硬姿勢に波紋も

 auコマース&ライフ(aCL)は10月1日、運営する仮想モール「auPAYマーケット」の出店者向けに新しいアフィリエイトプログラムを導入した。アフィリエイター経由で商品が売れた際には、店舗は商品カテゴリーによって売上額の2~8%を負担することになる。同社では、アフィリエイトへの参加を希望しない店舗に退店を促すなど強硬姿勢を示しており、波紋を呼んでいる。

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「販路拡大の中核的戦略」と説明

 同モールではこれまで、店舗が費用を負担しない形でのアフィリエイトプログラムを導入していたが、刷新する。aCLが店舗に送った資料によれば、同社では同プログラムを「出店店舗の販路拡大のための中核的戦略の一つ」と位置づけており、全店舗の全商品が適用対象となる。

 手数料率は2~8%で、例えば家電やパソコン・周辺機器、スマホ・タブレットやオーディオ関連などは2%、書籍や家具などは3%、スポーツ・アウトドアやキッズベビー・マタニティー関連などは4%、ビューティー・コスメや健康食品、コンタクトレンズなどは5%、グルメ・食品、酒類、ファッションは8%などとなっている。さらに、アフィリエイトシステム利用料として、アフィリエイト手数料の15%を支払う必要がある。

 10月以降、連携サイト数を増加させることで送客を強化、売り上げ拡大につなげることで、店舗にもメリットがあるとしている。店舗に配布した資料によれば、連携サイト数を1年間で倍増とするほか、1年後のアフィリエイト経由流通額は380%増を見込んでいる。

「楽天ユニオン」と話し合いも

 aCLでは「プログラムへの参加を希望しない場合は、9月15日までに退店を申請してほしい」と店舗に通告するなど、強硬な姿勢を見せている。「楽天市場」の一部出店者が結成した任意団体「楽天ユニオン」は9月、auPAYマーケットの出店者も交え、aCL幹部とビデオ会議で会談し、施策の撤回を申し入れた。勝又勇輝代表によれば「参加を任意にするか、対象とする商品を選べるようにしてほしいなどと要望したが、1日から導入する方針を変えなかった」という。プログラムの強制導入で利益が下がった場合は、損害賠償請求を行うことも考えているという。

 勝又代表は「『アフィリエイトを導入すれば売り上げが増える』などというグラフを示しているが、この通りに推移しなくても保障はしないと言われた。モール側は大きなことばかり言うが、こちらは金を取られてしまうわけで、店舗としては後戻りできなくなる」とaCLの姿勢を批判した。

 また、顧問弁護士の川上資人氏は「民法548条の4『定型約款の変更』によれば、相手の一般的な利益に適合し、合理的なものでなければ定形約款は変更できないとなっている。今回の件では、プログラムの導入で送客が増えて店舗の利益が上積みされれば、店舗の一般的な利益に適合し、合理的だと判断できる。ただ、送客が増えなければ店舗は不利益を被ることになるので、送客が増えるか否かに尽きるだろう。aCLがやっていることは非常にリスクが高いと思う。また『プログラムに同意するか退会するか』の2者択一に関しては、退会を迫った上で同意を得られたとしても『真の同意があった』とは認められない」と指摘。さらに、楽天ユニオンと話し合いの場を設けたことについても「公正取引委員会に対して『事業者と協議をしている』ことをアピールしたいだけで、形式的なものだろう」と切り捨てた。

「独禁法違反には該当しない」

 一方、aCLの八津川博史社長は、プログラム導入の狙いについて「店舗の売り上げ増には、アフィリエイトの拡充が必須条件と考えており、アフィリエイトの新規開拓、利用の拡大を進めている。

 店舗には従来以上にアフィリエイト経由売上増が見込めるという利益があるため、全店舗参加を前提とした」と説明する。店舗には出店店舗規約に基づき、8回に渡って周知したほか、問い合わせがあった店舗には、aCLの営業が直接説明したという。「楽天ユニオン」との話し合いについても「意見をもらったので、説明する場を設けた」という。

 また、八津川社長は「(今回の施策は)独占禁止法における優越的地位の乱用に該当するものではないと考えている」と正当性を強調。プログラム導入を受けて退店した店舗の数については「非開示」としている。

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