ヤフーのさまざまなサービスと組み合わせたい【クロコス岡元淳代表取締役社長】

今年8月、ヤフー傘下に入り一躍注目を集めたクロコス。同社ではフェイスブックページ上で懸賞などが行えるアプリケーションを提供しており、1年で約4800ページに採用されるなどこれまで多くの実績を生み出している。O2O分野でシナジーを狙うヤフーとの取り組みに注目が集まる中、はたしてどのような戦略を描いているのか。岡元社長にサービスの特徴や、ヤフー傘下に入った背景などを聞いた。 (聞き手は本誌・河鰭悠太郎)

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懸賞は敷居が低くユーザーを集めやすい

懸賞アプリで集客を支援

――主な業務内容は。
今はフェイスブックがメーンですが、基本的にはソーシャルプラットフォームにおけるあらゆるサービスやアプリケーションを開発しています。フェイスブックに関しては、4月に米国のフェイスブック本社で認定している認定マーケティングデベロッパーという資格を日本で初めて取得し、技術的にもお墨付きをいただきました。メーンのプロダクトは「Crocosマーケティング」です。

――「Crocosマーケティング」とは何ですか。
大きく2つに分かれています。ひとつは誘導のためのキャンペーンツールで、もうひとつはフェイスブックページそのもののコンテンツを充実させるツール。キャンペーンツールとしては、懸賞やスピードくじ、フォトコンテスト、クーポン機能などがあります。

――代表的なアプリは。

最もよく使われているのが「Crocos懸賞」ですね。フェイスブックページ上で懸賞キャンペーンができるツールです。懸賞ページはHTMLで自由に編集することが可能です。具体的には、ユーザーが当該ページに「いいね!」をして応募ボタンを押すだけで懸賞への応募が完了する仕組みで、最短2クリックで完了します。普通は懸賞というと、個人情報を入力するなどいろいろ煩雑で、しかもプレゼントに応募するだけで個人情報を抜かれるのは嫌だ、という人は多くいます。そしてなによりも面倒くさいですよね。ですがこれは、フェイスブックのユーザーIDさえ渡してもらえれば余計な個人情報を入力する必要がありません。敷居が低いので非常に数が集まりやすいのです。ユーザーには懸賞に応募するときに「いいね!」を押してもらえるので「いいね!」がどんどん貯まります。ここで集まってきたファンは、いわばメルマガの購読者のようなもの。見込み客としていろいろアナウンスできます。

――利用企業はフェイスブックページにどう集客すればいいのでしょう。

キャンペーン時の集客は、主催する側が自力でメルマガやツイッター、自社サイトなどを使ってユーザーを集めるのが一般的ですが、当社サービスを利用すれば「Crocos懸賞」の一覧ページにもキャンペーンが掲載されるので、ここからユーザーが流れ込んでくるようになっています。また、「シェア」による集客も大きいですね。「シェア」をするとリンクが投稿される仕組みで、そのリンク経由で友達が3人以上応募してくれると、自分の当選確率が2倍になる仕掛けになっています。これによりユーザーは積極的にシェアしてくれます。つまり、自社の集客、クロコスの集客、シェアによる集客、この3つで集客できるようになっているわけです。

4800社が利用

――これまでの実績は。

サービス開始から1年強で、現時点で約4800のフェイスブックページに利用いただいています。基本的には1社1ページ、ということなので、ざっくり言うと4800社の企業のマーケティング担当者の方々にアカウントを開けていただいた、ということになるわけですね。ネット系やリアル系、大小含めてさまざまなクライアントがいます。ボリュームゾーンとしては中小企業が多いですね。

――4800の実績というのは凄いですね。

支持されている理由はすごく簡単で、無料で提供してきたことが大きいと思います。他社でも無料のサービスはゼロではありませんが、これだけ機能が充実していて、「いいね!」数も応募数も十分集まる、というサービスはクロコス懸賞しかないのではないでしょうか。

――導入メリットは。

今まではアプリを導入しようとすると、それぞれイチから開発して……という案件が多かったのですが、それだと数百万円かかかってしまうし、時間もかかります。当社ではASPで提供しているので、ブラウザ上でアカウントを開設してすぐに使い始められます。また、フェイスブックは仕様変更が多いのですが、弊社のエンジニアがすぐに対応し、機能強化しているので、一度インストールすればあとは自動的にバージョ
ンアップするようになっています。無料でも使える機能が多く、キャンペーン効果をより高めたい場合は有料プランもあります。有料プランは、懸賞の一覧ページの優先表示枠に表示されるなどのメリットがあります。そうした機能の提供でお金をいただくのが今のビジネスモデルですね。あと、認定マーケティングデベロッパーを取ったことからも分かるように、フェイスブックのプラットフォームや利用規約に深く精通しているので、安心して使っていただけると思います。

――ECでの実績は。

正確に集計してはいませんが、非常に多く感じています。出先のページのようにフェイスブックページを立ち上げて「いいね!」を集め、そこからECサイトに誘導する、という流れが多いですね。

――どういう事業者の利用が多いのでしょう。

楽天市場に出店しているような店舗がキャンペーンを開催するケースが多いです。物販だと、例えば健康飲料。サンプリングに近い形で利用していただいています。厳密にはサンプリングではないので明示的に誰かに当てることはできないのですが、近々そうしたニーズにも対応するつもりで準備しているところです。懸賞だと「抽選」という形ですが、サンプリングだと「選考」という形になります。選考であれば、例
えばフェイスブックに友達が多い人とか、何回もシェアしてくれるユーザーとか、いわゆるインフルエンサーのようなユーザーにモニターとして普及してもらうことができます。これを始めれば、ECでの利用もさらに増えると思っています。

ヤフーユーザーにアプローチできる

――8月にヤフー子会社となりましたが、その背景は?

我々は今、「Crocos懸賞」をメディアとして育てていますが、単体ではまだまだ小粒です。そこで、ヤフー上で展開すれば、今までとは比較にならない母数のユーザーに見てもらえ、応募数もダントツに増えると考えました。ヤフーの莫大なユーザーにアプローチできる、というのがグループ入りした理由です。

――具体的なヤフー上での露出手段は。

現在検討中で、具体的なことを言える段階ではないのですが、かなり目立つ形で出せると思っています。懸賞情報などに興味があるヤフーユーザーは多いはず。ヤフーユーザーにとってもメリットがあるコンテンツではないでしょうか。

ヤフーで展開すれば応募数はダントツに増える

――他に、ヤフーとの連携は。

懸賞の中にクーポンを入れられるサービスを持っていますので、そこでの連携があるかもしれません。例えば1000人の応募があって当選者が5人だと、残りの955人は応募したのに何も起こらないことになりますよね。でも、それではせっかく商品やブランドに興味を持ってもらえたのにもったいない。だから応募してくださったユーザー全員にクーポンを付与するわけです。クーポンの中身は自由に設定できます。例えば、ECサイトであればサイトで使える割引クーポンとか、もしくはリアル店舗だったら引き換えのギフト券とか。応募完了画面でクーポンをゲットできる仕組みです。「ヤフー!ロコ」に情報を載せているリアル店舗はたくさんあるので、その方たちがフェイスブック上でソーシャルマーケティングを行う際に、「いいね!」を集めつつ、さらにクーポンでリアル店舗に誘導する、などの流れができるわけです。また、ECの場合も、クーポンを利用してすぐに割引で商品が買える旨をフェイスブックページに書けば、その場でサイトに買いに行くユーザーはいます。ユーザーがアツくなっているタイミングで次のアクションへのコンバージョンを高めるツールとして、クーポンは使えると思います。
また、フェイスブック上で自分の商品を陳列できる「Crocosカタログ」というアプリがあり、今は「楽天市場」の店舗の利用がメーンになっていますが、今回の提携を機に、ヤフーショッピング向けにも対応させようと思っています。

ソーシャルで世の中を良くしたい

――そもそも、なぜフェイスブックを活用したサービスを始めたのですか。

我々自身、ソーシャルネットワークが大好きだったから。フェイスブックが日本に来て、実際に使ってみて革新的だと思いました。私はもともとエンジニア出身なのでどうしても技術的な目で見てしまうのですが、フェイスブックはアプリケーションプラットフォームとして、凄く優れていると実感しました。自由自在にいろいろなサービスを作ることができます。プラットフォームとして成熟しており、ユーザーも世界規模で多
い。そういう理由で注力してきたわけです。ただ、クロコスはフェイスブック専用の会社ではありません。最近では「LINE」や「ピンタレスト」など新しいメディアがどんどん出てきているので、そうしたプラットフォームに関しても、お客様が求める課題に対して解決できるツールを提供していければ、と思っています。

――ヤフー子会社になって変化は。

大きな変化はありません。社内の開発体制などを尊重していただいているので非常にやりやすいですね。

――以前、岡元社長は楽天に在籍していた時期もあります。楽天とも関係が深いと思いますが、競合の立場になってやりにくさなどはありますか。

特にないですね。そもそも、楽天に対して何かネガティブな思いがあって鞍替えしたわけではないですから。ヤフーグループに入ったのは、「ソーシャルを使って世の中をもっと良くできるはず」という理想を実現するために、どうすれば速く、たくさんの方に使ってもらえるかを考えた結果。もともとあらゆる可能性を考えていました。今でも、楽天には親しくお付き合いしている仲のいいスタッフは多いです。会社同士
は競争関係にあるかもしれませんが、ITで世の中を良くしていこう、という大きな視点で見れば何も変わらないので、別に支障はないと思っています。お互いに切磋琢磨していければいいですね。

――今後の意気込みを聞かせて下さい。

これからは友達のネットワークまで含めて良いモノが発見され売れていく、という時代になり、売り方のパラダイムシフトが起きると思っています。従来の売り方も当面はメーンとして存在し続けると思いますが、それとは別の新しい売り方を提供していけたらな、というのが我々の想いですね。既存のサービスにソーシャルというフィルターを噛ませるとはたしてどういう新しい売り方が生まれるのか、いろいろと試行錯誤していきたいと考えています。ヤフーのいろいろなサービスを組み合わせることで、ユーザーに新しい価値を提供できるのではと思ってい
ます。

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