Fri, November 22, 2019

ファーストリテイリングのアプリ戦略の進捗は? ――マーケティングデータへの活用はまだ道半ば

ファーストリテイリングでは2017年春よりEC専用の物流機能を有した有明オフィスの新拠点をベースにして実店舗とデジタル(ネット)の融合を目指した「有明プロジェクト」に取り組んでいる。中でも顧客接点の改革という意味では、コミュニケーション機能を有する公式アプリ「ユニクロアプリ」の会員数を増やすことが大きな鍵となっている。

AI搭載のアプリは会員数が順調に増加

AI によるチャット機能を搭載した「ユニクロアプリ」

ユニクロアプリは2018年よりAIを活用した購入アシスタント機能「UNIQLOIQ」を導入。チャット自動応答システム(チャットボット)により、音声やテキストを使って、顧客の商品情報検索や在庫確認、通販サイトへの誘導などを支援している。同アプリで蓄積された対話内容については、既存商品の改良や新商品の具体化などにつながる材料としても活用する考えで、同社の今後のマーケティングデータの根幹を担うことが目されている。

1月10日に行われた同社の第1四半期の決算発表会での席上、岡﨑健CFOは「アプリ会員は着実に伸びてきている」と語り、アプリ上で顧客とダイレクトにつながっていく取り組みに大きな手応えをのぞかせた。その言葉通り、同社の今第1四半期(2018年9月~11月)の国内Eコマース事業は、前年同期比30%以上の増収となり好調に推移。

これはアプリ会員数の増加だけでなく、話題性の高いブランドとのコラボレート商品の展開やウェブでの検索数が多い商品を中心にSNSで積極的なニュース発信を行ったことなどが奏功したと見られている。

加えて、実店舗との連携という点では、2018年4月に無料化した通販商品の店頭受け取りサービスの利用数が大幅に伸長。近年の宅配料金の値上げが進む中で、送料無料で受け取りたいという顧客のニーズをうまく捉え、件数ベースではECの約3分の1が同サービスを利用するほど伸びた。リアルとの融合が着実に進行していることが伺える。

需要予測の面では精度に課題も

決算発表会でアプリの利用状況について語る岡﨑CFO

アプリなどを起点にEコマース事業が成長する一方で、実店舗を含めた国内事業全体ではどうか。こちらは季節要因を受けて今第1四半期は秋冬衣料が不調となり、減収減益となるなど大きく低迷。特にEC利用客のデータなどを活用した需要予測の精度についてはまだまだ試行錯誤の段階にあるようだ。

国内事業の失速の直接的な要因となったのは暖冬による秋冬衣料の不振だが、その背景には2017年の秋冬に国内事業で防寒衣料の欠品が生じたことから、2018年の秋冬はその反省として例年よりも防寒衣料に偏って多めの在庫を持って臨んだという経緯があった。「ある種(欠品を防ぐ)意思を込めて在庫を持った部分が強すぎた。持っていた商品構成と気候がマッチしなかった」(岡﨑CFO)と語るように、需要予測の面ではアプリ会員を通じたマーケティングデータの強みがまだ発揮できていない。

今後の対策としては、次の秋冬商品についてはある程度暖冬になることを想定した上で対応できる在庫の準備を行い、特に冬の防寒衣料については極力、シーズンはじめの動向を見ながら追加生産で手当てしていく方針に切り替えていくという。

並行して、需要予測の精緻化に向けては、データベースのもととなるアプリ会員を増やすための施策も引き続き強化していく。今後は「アプリを通してどれだけより新しく面白い顧客体験を提供できるが問われている」(同)と語り、アプリメニューを拡充していくことも示唆した。

ショールーミング型店舗が今後のヒントに

ジーユーのショールーミング型店舗「GU STYLE STUDIO」

アプリの利用促進という観点では、先行して取り組んでいる傘下ブランドのジーユーが2018年11月に渋谷区の商業施設に開設したショールーミング型店舗の「GU STYLE STUDIO(ジーユー スタイル スタジオ)」が一つのヒントになるという。

同店はすべて全型、各サイズのサンプル品を店内に展示。バックヤード機能や在庫保管スペースなどは持たず、購入に当たっては来店者がスマホを使って同社の公式アプリから通販サイト上で行う仕組みとなっている。

展示商品はすべてサンプルで、QRコードから商品 登録や情報確認を行う

これは限られた敷地面積の実店舗で全商品を取り扱えることや店舗スタッフの作業負担軽減、顧客が手ぶらで購入できることといった単純な利便性だけの話にとどまらない。同アプリには試着室に並ばずに使用できる予約待ち機能や、商品に付けられた専用タグのQRコードからお気に入り登録機能、コーディネートの仮想体験機能などが搭載されており、いわば、実店舗でもスマホを持ちながらアプリを駆使して買い物を行うという新たな購買体験の常識を打ち出しているのだ。当然ながらアプリで集積した各データは、今後の商品開発やマーケティング、ECサイト構築、アプリの設計などに活用することを見込んでいる。

現状ではまだまだ十分とは言えない同社のアプリによるデータマーケティング活用だが、今後、アプリの利用場面を広げていき、より細かな顧客データを蓄積することで一気に前進する可能性もある。今後も同社のアプリを起点とした新たな決算発表会でアプリの利用状況について語る岡﨑CFO 戦略が注目される。

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