コロナ禍を経て各社が展開を強化ーー注目ネット販売企業のOMO戦略

 EC専業やブランド・メーカーによるOMO型店舗の開設が増えており、対象となる商材もアパレルや家電、日用品、アウトドア用品など多岐にわたる。出店企業にとって、オンライン上ではリーチできない層へのアプローチやブランド・サービス認知の拡大、実物を確認できる安心感の提供、リアルでの接客力の活用など、その目的はさまざまだ。コロナ禍を経て有力企業が取り組むOMO型店舗の活用事例とその成果などを見ていく。

スポンサードリンク

ベガコーポレーション、出店エリアのEC受注が拡大

 家具や日用品などのネット販売を手がけるベガコーポレーションでは、旗艦店である自社通販サイトによる集客をメインとした従来のD2Cモデルに、新たな販売チャネルとして実店舗を加えた「OMO型D2Cモデル」への転換を進めている。2023年度から大都市圏を中心に出店を行い、2024年度は同社初となる関東エリアをはじめ、全国で最大6店舗の新規出店を実施する。

ベガコーポレーションが福岡に開設した1号店の「九大伊都店」

 同社では2023年4月に本社のある福岡市内に1号店を開設し、その後も大阪市、名古屋市に相次いで開設した。売り場面積は、福岡が約400m2の郊外型店舗であるのに対して、大阪、名古屋は約260m2の都市型店舗。3店舗に共通するのは、それぞれの店舗周辺エリアにおいて、自社通販サイト「LOWYA(ロウヤ)」での受注金額が開設前と比較して増加する傾向が見られている。

 福岡の「九大伊都店」の場合、店舗周辺エリアにおいて前期の1年間を通じてすべての月で受注金額が前年同月比で増加。開設直後の4月は同37.2%増、5月は同41.0%増となっている。

 大阪の「なんばパークス店」の周辺エリアについても、開店直前の11月までは7カ月連続で前年同月比割れとなっていたが、12月の開店以降は1月を除いたすべての月で前年同月比でプラス成長に転じている。名古屋の「名古屋みなと店」周辺エリアでは、開設した2月が同14.8%増、3月は同9.0%増とプラス成長が続いている。

 同社のOMOモデルへの転換の背景としては、実店舗を使ってオンラインでリーチできなかった層の新規開拓だけでなく、ロウヤブランド自体を認知しているものの購入先としての第一候補には想起されない層、また、リアルで実物を確認できずに購入できていなかった層を獲得する狙いがあるという。

 これまでの店舗運営を振り返ると、立地や店舗の広さなどの知見は徐々に貯まりつつあるようで、加えて、利用者層などのペルソナも対面になったことでより明確に把握することができるようになったとする。「組み立てや引き取りなど、現場で生の声として困り事を聞くと、もっとサービスを磨きこまなくてはと思う」(浮城智和社長)とした。

 2024年については、4、5号店を関東に出店することを皮切りに、その他地域も含めて、最大で6店舗の出店を計画。2026年3月期については6~8店舗、2027年3月期については8~10店舗の新規出店を計画するなど段階的に拡大を図る考え。

 基本的には人口集積地を出店先のターゲットとしており、現時点では賃貸物件で運営。今後、郊外の大型店などを持つ場合、より合理的に取得できる物件があれば自社保有の可能性も視野に入れていく。

また、現状、国内に構える物流拠点で最も東側に位置するのが千葉県となり、今後、東北・北海道地域に出店して積極的に売り上げを獲得する場合、まずは同地域での新たな物流拠点の配置が必要になると考えている。

 なお、関東の店舗について、まずは2024年夏に横浜、同秋には都内に実店舗を開設する。横浜では商業施設の「MARKISみなとみらい」内、都内でも商業施設の「二子玉川ライズS.C.」内にそれぞれ開設する。これに関連して、「ロウヤ」の記念イベントとして毎年6月8日に開催しているファン感謝祭の「608の日」では、通販サイトやSNS、3カ所の実店舗において、ファンミーティングを開催した。

 関東での初出店と連動した企画としては、ファンからの投稿メッセージが店舗内の装飾として掲示する内容で実施。そのほかにも、人気のソファーのカラーやトートバッグのデザインをファンと共に決める会議や、店頭で実際に見たい商品を投票する会議なども開催した。約4000点の中から最も投票の多かった商品については、そのコーディネートなどを横浜の新店舗で公開する予定。

 そのほか、リアル展開に関しては、2022年より商業施設の「イオン」への卸販売も並行して展開していたが、「現時点では直営で良い成果が出ているとの判断をしている。(今後も)卸売りではなく直営店を中心としたウェブ戦略を図っていきたい」(浮城社長)とした。

フェリシモ、横浜駅構内にポップアップ

 フェリシモは6月14~23日、横浜市のワインバル&カフェレストラン「ディック・ブルーナテーブル横浜」において、店舗前のJR横浜駅構内待合広場「サウスコート」にポップアップストアを出店した。

 「ディック・ブルーナテーブル」は「ミッフィー」でおなじみの絵本作家・グラフィックデザイナー、ディック・
ブルーナの世界観が楽しめるというコンセプトで展開しており、横浜市と神戸市に出店している。横浜店は2021年3月に開設、22年からは店舗前の待合広場で毎年ポップアップストアを展開しており、今年で3回目の出店となる。

 トートバッグやアクリルキーホルダーといった雑貨類のほか、ピンクオレンジが写真映えするゼリースイーツなどのアイテムを販売。グッズエリアは通常3倍、アイテムの種類も2倍以上をラインナップ。新商品のほか、普段は横浜店で購入できない、神戸店限定商品も多数揃えた。開店当日となる14日には、開店時間の11時に合わせて多くファンがグッズを購入に訪れるなど、にぎわいをみせた。

 新商品の一例としては、人気の「刺しゅうバッグ」(価格は3740円)に、新色ブラウンを追加。B4サイズも入る軽くて大きめサイズのトートバッグで、ポリエステル素材に上質な刺しゅうがアクセントとなっている。「ロゴ帆布トートバッグ」は、ウェブ販売を行わず、神戸店と横浜店でしか手に入らないもので、新色としてピーチとホワイトを販売する。期間中は人気のレッド、グレーのほか横浜店限定のブルー、チャコール、神戸店限定イエロー、ホワイト(新商品とは異なるデザイン)もラインナップ。Mサイズ(同3630円)とSサイズ(同3080円)を用意した。また、アクリルキーホルダー(同935円)は、従来の透明にブルー・ピンク・グレーを追加した。

 食品では、ポップアップ開催期間限定として、ピンクオレンジの朝焼け色と柑橘ゼリーがさわやかなスイーツとして「朝焼けゼリー」(テイクアウトのみで1日30食限定、価格は880円)や、実店舗で人気の「ミッフィーチーズケーキバー」を2本セットにした
「ミッフィーチーズケーキバーセット(同、同1980円)を販売。また、店内で提供していた、青森の果樹園で採れたリンゴを使った100%果汁のリンゴジュース「青森のりんごで作ったアップルジュース」(価格は1836円)も扱う。

 同社神戸タワー事業部部長で事業推進マネージャーの富田浩幸氏は「常設店では雑貨なども販売しているが、あくまでレストランなのでそれが分かりにくい。間口を広げるという意味でポップアップを毎年展開しており、新規顧客増につながっている」と説明する。昨年は8月に東京・渋谷でもポップアップショップを開設。ポップアップに合わせる形で、毎回新商品を投入しており、こうした施策で常設店の来店者数増加につなげる狙いだ。「インスタグラムでの宣伝など、メリハリを持ったPRをすることで、当社への注目度が上がると通販にも良い影響がある」(富田氏)。

 路面店の神戸店と違い、横浜店は駅構内に店を構えている。そのため、日常的に横浜駅を使う30~40代の顧客が多いという。神戸店に関しては、観光地である神戸旧居留地に店があるため、20代の来店者も目立つ。また、個室も備えているので、家族連れや女子会などの需要も高いという。横浜店のポップアップは、前年までゴールデンウィークに合わせて開設していたが、今年は6月に出店。ミッフィーの誕生日(6月21日)に合わせた日程となる。富田氏は「連休中に比べると駅の人手が少ないので、去年までよりも不利な面もあるが、今回はミッフィーの誕生日というイベントもあるので、前回並みの売り上げを確保したい」と意気込む。

[ この記事の続き… ]

オンワード、試着予約サービスが 好評、エムール、ショールームでブラン ド価値向上へ、楽天、都内でアウトドアの OMO イベント、知名度向上に一役、滞在時間が延びる、は本誌にて→

購入はこちら >>

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG