NTTが東西で“新タブレット”を開始――有望な「通販チャネル」となるか?

【2011年4月号】iPadにギャラクシーTab、ガラパゴスなどなど、次々に各メーカーから新端末が登場し、ここ1~2年で急激に存在感を増しているタブレット端末。「アプリ」を主軸にしたこのデバイスはスマートフォンと並び、通販事業者間でも“新しい売り場”として近年注目を浴び始めている。こうした中、新たな勢力として、NTTグループが東西で異なる端末を発表。それぞれ独自の戦略、サービス展開で普及を図っていく考えだという。iPadなど既存のデバイスが比較的ITリテラシーが高い「ネットに習熟したユーザー」を獲得しているのに対し、同デバイスはアイコンの見やすさや操作性の高さなど「使いやすさ」に特化しているのが最大の特徴。同じNTTでも東西で若干異なる目的があるようだが、「ネットスーパー」との連携がキモであるなど、コアの部分はほぼ同じといえそう。どちらも主婦やシニアなど「ノンPC層」をターゲットに据え「非iPadユーザー」を開拓していき、「フレッツ光」の利用拡大を狙っている。これらのデバイスが多くの利用者を獲得できれば、通販事業者にとってもiPadなどとは異なる“有望な売り場”として参加する価値はあるが、現状ではそのポテンシャルは未知数。果たして、思惑どおり「主婦の定番」デバイスとして生き残り、有益な販売チャネルのひとつとなり得るのだろうか――。

「コミュニティ」が配布のキモ

イトーヨーカドー・セブンとの連携も

  先にサービスを開始したのはNTT東日本。同社は咋年の11月25日、「フレッツ光」を利用した生活情報(アプリ)配信サービス「フレッツ・マーケット」と、専用のタブレット端末「光iフレーム」の提供を開始。ネットに馴染みのない「ノンPC層」に対し、ショッピングや地域情報など、生活情報系のアプリを専用端末経由で配信。ネットスーパーや商店街、マンションなどの「コミュニティ」単位での利用を想定している。

 「光iフレーム」は7インチタッチパネルで、Android2・1を搭載。指で操作するタイプとペンを使うタイプなど3種類を用意している。端末は2万4150円で販売するほか、月額315円でのレンタルも可能。別途、「フレッツ・マーケット」の利用料として月額210円が必要となる。

  「フレッツ・マーケット」で配信するアプリはショッピングやニュース、地域情報などの生活情報系が中心だ。アンドロイド用アプリの中からNTTがお勧めの生活情報系アプリを厳選して掲載する形となっている。通販系では現在は、クーポン共同購入サイトの「ポンパレ」やスーパーの特売情報を配信する「毎日特売」の2つが参加している。通販系ではニッセンも参加を予定しているが、現在は準備中(NTT東日本)で開始のメドは不明。「いくつか引き合いがある」(同)とし、ニッセン以外の複数の通販系事業者の参加も検討しているようだ。また、3月からはエリアを限定し、セブン‐イレブン・ジャパンらと連携してエリアに住む約500世帯限定で「セブンネットショッピング」やイトーヨーカドーのネットスーパーサービスも開始。ただ、震災の影響で「ネットスーパー自体がストップしている」(同)ため、本格的な展開は4月以降になる見込みという。

 通販系での活用の特徴は「プッシュ通知」を挙げる。これは例えば、カレンダー機能を利用してスーパーの特売日情報などがプッシュで降りてくる、というもので、他にもいろいろと応用ができると見ている。また、シニアや主婦などの利用を想定しているのでお勧めアプリの紹介や人気ランキングなども行っている。「自分から情報を探しにいく」iPadなどを「上級者向け」(同)と定義し、「分かりやすさ」を全面に出して違いを鮮明にする戦略だ。

 イオンとのタッグで会員を開拓

  一方、NTT西日本は今春をメドに、イオン、シャープらと連携し、シャープが開発する新端末を軸にした「暮らしサポートサービス」を開始する。主婦層をターゲットに据えたもので、タブレット端末はイオンが販売代理店となる形でユーザーに配布する。

 コンテンツはイオンから「イオンネットスーパー」アプリが配信されるほか、シニア向けコンテンツの配信などを予定しているほかは、端末のサイズや価格、具体的なサービス内容など、未だその全貌は不明。ただ、端末はシャープの既存端末「ガラパゴス」がベースになるようで、「ガラパゴス」を「使いやすく」し、さらに新たに家族間でのコミュニケーションを想定した「コミュニティサービス」などが追加される形が濃厚だ。イオン以外のネットスーパーや通販事業者のアプリが参入する可能性については「まったくの未定」(NTT西日本)としているが、ユーザーの利便性などを考えた場合、今後、いろいろな事業者が参加する余地はありそうだ。

 こうしてみると「光iフレーム」とはターゲットやその利用シーンで概ね同じといえるが、「より利用シーンに特化したユーザーインターフェース」(同)を狙っており、使いやすさに徹底的にこだわった仕様になるようだ。

 「通販チャネル」としての可能性は?

 NTT東日本では、2010年度の末までに10万人の加入を、また、NTT西日本では1年目で5万台、2年目で30万台の導入を目標に掲げている。

 ただ、現在「光iフレーム」の契約数は当初目標の約半分。まだせいぜい5万台程度という状況だ。西日本はそもそもまだサービス開始にすら至ってない。東西どちらの取り組みも、いかに「ネットスーパー」と連携し、この会員を取り込めるかがカギになると思われるが、進捗状況とこれまでの数字をみただけでは、現状では普及の可能性は未知数と言わざるを得ない。「NTTブランド」と「使いやすさ」の2点で、果たして今後、どこまで構想どおり普及が進むのか。有望な売り場になるのか、通販事業者は注視して見定める必要があるだろう。

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