大震災、ネット販売各社の対応は?

【2011年4月号】3月11日、東北地方などに甚大な被害をもたらした東北地方太平洋沖地震。この未曾有の大震災はネット販売実施企業にも少なくない被害や混乱をもたらしたようだ。

 被災地域に物流拠点を持つ通販企業の中には施設の破損のため、出荷作業が一時的にできなくなることがあったようだ。千趣会は栃木の発送センターや岐阜の商品センターの壁や棚が一部破損。ベルーナも埼玉の物流拠点、スタートトゥデイも千葉の倉庫、スタイライフも埼玉の物流センターが被害を受け、一定期間は安全確認や商品の出荷などができない状態となった。

 拠点の被害など直接的なダメージを受けていないネット販売事業者も震災で宅配便大手が北海道・東北地方への荷物の集配を停止。首都圏についても交通事情の問題から大幅な遅延は発生する懸念を受け、一部の業者では時間帯指定や冷蔵・冷凍便の取り扱いを休止したことで、通販事業を行う大半の企業が被災地域へのサービス停止と全国的な配送遅延へのお詫びを告知した。ニッセンのように仙台など被災地にコールセンターを構えている企業では問い合わせ業務を被害のない別のセンターに振り分けたり、問い合わせ業務を休止した企業もあった。

 地震発生から数日が経ち、事業を休止していた主要なネット販売サイトの多くはすでに復旧、事業を再開し始めている。しかし、物流拠点やコールセンターが「計画停電」の対象地域に入っている企業もあり、停電になれば集荷作業やオペレーション業務に滞りが出てくる可能性は高く、予断を許さない状況のようだ。

 このほか、被災地にあったメーカーやベンダーから商品を調達している通販企業も多く、一部の商品の調達が難しくなる懸念や「買占め」の影響で、マスクや電池、ラジオ、懐中電灯、ランタンなどが品薄状態となり、これを販売しているネット販売事業者には影響が出てくる可能性がある。そして何より、東日本という大きな商圏のダメージ。また、震災による全国的な消費マインドの落ち込みが懸念される。

支援に動き出すネット販売各社 

 しかし、そうした悲観をものともせず、多くのネット販売実施企業が被災者の救済や復興支援のために、義援金の寄付や衣類、食品などの支援物資の寄贈に動き出している(別表参照)。主なところではファーストリテイリングは柳井会長個人の寄付をあわせ14億円と「ユニクロ」の衣料品など。ジャパネットたかたは5億円と3月16日に放送したテレビ通販番組の売上全額を寄付、さらに充電式電池セット1万個を寄贈した。

 直接的な義援金や援助物資だけではなく、ネット販売事業者ならではの試みとしてスタートトゥデイは3月15日からチャリティーTシャツのネット販売を開始(画像)。約280のブランドから協賛を集め、商品の製造原価や送料などは同社持ちで2100円で販売。売り上げのうち消費税を除く2000円が日本赤十字社に寄付されるもので、3月18日現在ですでに8万3000枚以上を販売、寄付総額は1億6000万円を超えた。

 このほかに通販ビジネスという全国規模で事業を行うという強みを活かして、自社通販サイトで顧客に募金を呼びかけ、集まった寄付金と同額を当該企業が拠出し寄付する「マッチングギフト」方式で義援金を寄付する動きも活発化している。グルーポンジャパンやギルト・グループ、ケンコーコムななどだ。また、セシールなど複数社で行われているのが「ポイントでの寄付」。それぞれの企業が発行している支払いなどに使えるポイントを寄付に回すというもので、「ツタヤオンライン」などでも行っている。

 大震災で日本経済は甚大なダメージを受けた。今後、ネット販売各社のビジネスは厳しい局面を迎えることがあるかもしれない。しかし、ネット販売各社には被災地への継続的な支援を期待したい。それこそが「再び日本経済を立て直す近道になる」(某ネット販売実施企業のトップ)からだ。

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