Zホールディングス、ヤマトと仮想モール出店者に物流支援 ――通販サイト構築サービスやEC購入品の店頭引き渡しも

(3月 24 日開催の記者会見の様子= ZHD の川邊社長左とヤマトの長尾社長)

 Zホールディングス(ZHD)はヤマトホールディングスと組んで今夏にも子会社のヤフーが運営する仮想モールの出店者向けに新たな物流サービスを展開する。出店者は商品の保管、配送などを委託でき、出荷に関する作業負担を軽減できるという。また、当日配送も可能になるようだ。3月24日開催の記者会見に登壇したヤマトの長尾社長は「簡素化したサービスを構築する。そうしたサービスに合わせた料金体系を設定する」とし、価格優位性のある料金とする考えを示した。

 また、同日の会見では開始時期は未定ながら、ネット販売実施企業向けにヤフーのシステム基盤を活用して常に最近の機能などを備えるなどした自社通販サイト構築サービスの提供や今秋をめどに仮想モールで注文した商品を実店舗で受け取ることができるサービスの導入することなどを明らかにした。ZHDはEC事業者を対象とした新たな支援サービスを展開することでEC関連売上高を伸ばし、目標に掲げる2020年代初頭までに日本におけるEコマース取扱高首位を目指す考え。

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モール出店者に安価に物流サービス

 ZHDはヤマトHDと業務提携を結んでヤフーが運営する仮想モール「PayPayモール」および「ヤフーショッピング」の出店者向けに商品保管から配送まで出荷に関するすべてをヤマトグループで受託する「フルフィルメント」と、出店者の一定量の在庫をヤマトグループの拠点へ搬送してもらった上で受注に応じてピッキングと梱包して出荷する「ピック&デリバリー」の2つのサービスを第1弾として提供する。

 利用する出店者はリードタイムの短縮化、受注時間の延長を可能にし、顧客満足度の向上につなげられるという。またキャンペーン時の波動もグループ間の連携などで対応していく。リードタイムの短縮では翌日配送だけなく、当日配送にも取り組む。当初は神奈川県の一部エリアで実施、先々に全国へ広げていく。

出店者はヤマトの新たな物流サービスを利用することで「何もしなくても OK」と物流業務を丸投げできる という(記者会見の資料より)

 ヤマトHDの長尾社長は会見で「EC物流も次のステージに向かっており、ヤマトグループが総力をあげてお手伝いさせていただく。宅急便のネットワークを出店者へオープン化し、配送、物流に関する新たな価値を提供する」と述べ、今後はZHDのデータ、ヤマトグループのデータを活用し、物流の効率化の後方支援も可能にする考え。出店者も含めたサスティナブルなエコシステムとしてのEC物流を提供していく。料金は分かりやすいパッケージ料金を採用して提供する。従来のヤマトグループのロジスティクス業務の枠組みと比べ簡素化する分、安価に提供していく模様だ。

 新たな物流・配送サービスは6月30日に開始するが、ZHDは12月末まで実質送料無料となるキャンペーンをヤマトグループの物流サービスを利用する出店者の商品を対象に実施して出店者の同サービスの利用を促す。

 なお、ZHDによると、同サービスの実施を発表した3月24日の翌日の同25日には、出店者からの商談の申し込み数が1000件を突破。「予想を上回る驚くほど多い反響があった」(広報)としている。

自社ECサイト構築サービス提供も

 また、時期は明らかにしていないが、通販事業者向けに自社通販サイトの構築サービス「XS(クロスショッピング)エンジン」を開始する。

 継続的なシステム投資やエンジニアの確保、セキュリティへの対応についてはヤフー側が対応し、集客についてもPayPayモールにも同時出店する機能などにより利用企業はサイト運営にかかわる様々な課題やコスト負担が解消されるという。

 利用料金は「エスアイヤーに(サイト構築を)発注する費用と比べ物にならないくらい安価なものに仕上げたい」(ZHDの小澤専務)としたものの、明確な料金体系を設定せず、導入を希望する企業と個別での相談となるとし、明言は避けたが、「固定費をできるだけゼロに近づけ変動費化できるようにすることを目玉にしたい」(同)とし、現在、PayPayモールで出店料として売り上げの3%、決済手数料を3.24%を出店者から徴収しているが、それに「極めて近い数字で提供できるように努力していきたい」(同)としている。

 第1弾として、アスクルが運営する日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」が導入を予定。現在、自社で構築している「ロハコ」のサイトをXSエンジンを活用したものに切り替えるという。アスクルの吉岡晃社長は会見で「商品開発や商品の納期に関する取り組みといった自社の強みの部分に専念できる」とXSエンジンのメリットを強調した。

 なお、「XSエンジン」は年商規模で数百億円規模の売り上げにも耐えられる大手事業者向けで利用価格も相対的に高いものとなるようだが、これとは別に「(小規模事業者でも)気軽に簡単に利用できる」(小澤専務)ような安価な自社サイト構築サービスとして、ヤフー傘下で成果報酬型ネット広告事業などを手がけるバリューコマースの子会社のB-SLASH(ビースラッシュ)が3月26日から、「XSエンジン」を活用しながら月額1万円でヤフーの仮想モールとも連携した自社通販サイトが作れる「shopleap(ショップリープ)」の提供を開始している。

EC購入商品の店頭引き渡し機能、秋にもPayPayモールに実装へ

秋頃をメドに店頭在庫商品を PayPay モールで購入できるようにし、そのまま当該商品を実店舗で受け取る ことができるようにするサービスを開始する(記者会見の資料より)

 PayPayモールで注文した商品を実店舗で引き渡すサービスについては今年の秋頃をメドにスタート予定。それに先駆けてすでに3月10日からヤマダ電機など実店舗を運営している一部のPaPayモールの出店者で、また、今後はZOZO(ゾゾ)でも「ZOZOTOWN」の出店者の了承を得た上で実施を予定している、店舗での在庫情報と連携させ、PayPayモール内で店頭商品を検索できる機能を開始しているが、現状では検索のみにとどまる店頭在庫商品を今秋にはPayPayモール上で決済でき、店頭設置の専用ロッカーなどで商品を購入者が受け取ることができるようにするという。

 これにより、店舗を持つ出店者は店頭には商品があるがEC在庫がないために販売機会を逸するといった事態を防げ、商品を取りに来るという動機付けにより来店促進を促せ、店舗での「ついで買い」も期待できるという。ヤフー側でもEC事業者だけでなく、店頭を含めた小売り事業者全体を出店者にでき、PayPayモールでの取扱商品数を拡大できることから取扱高増につなげたい考えだ。

 ネット販売実施企業向けの新たな支援サービスを実施することで「ユーザーにとって欲しいものが欲しい時に手に入る世界を実現したい。同時にストアの皆様の負担軽減をしてリアルを含めた店舗に送客して売り上げ拡大に貢献したい」(ZHDの川邊社長)とし、これまでリーチできていなかった物流やサイト構築、有店舗小売事業者へアプローチしてECの流通額の拡大を図りたい考え。

ZHD、ヤマトホールディングスが共同でヤフーが運営する仮想モールの出店者向けに新たな物流サービスを開始する(3月24日開催の記者会見の様子=ZHDの川邊社長左とヤマトの長尾社長)
秋頃をメドに店頭在庫商品をPayPayモールで購入できるようにし、そのまま当該商品を実店舗で受け取ることができるようにするサービスを開始する(記者会見の資料より)
出店者はヤマトの新たな物流サービスを利用することで「何もしなくてもOK」と物流業務を丸投げできるという(記者会見の資料より)

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