三井不動産は11月1日、同社グループが運営する商業施設と連動したファッションEC モール「アンドモール」を開設した。「ららぽーと」や「ラゾーナ」「三井ショッピングパークアーバン」などの商業施設に入居する主要テナントの約2割に当たる200ショップが出店してスタート。今後1年で400ショップに拡充するとともに、長期目標として10年後の取扱高1000 億円を目標に掲げた。
ファッションECモールは「ゾゾタウン」や「ショップリスト」「マガシーク」などのEC専業に加え、「マルイウェブチャネル」や「アイルミネ」などファッションビルや商業施設を展開する企業も参入する激戦区のため、後発となる三井不動産では「構想段階からリアル施設とECを融合させ、双方が価値を高めあえる仕組みを考えてきた」(森政治アンドモール事業室室長)としており、“リアル店舗共生型ECモール”をコンセプトに、タブレット接客やウェブ上のコーディネート提案を通じてショップと販売スタッフの評価につなげる仕組みで差別化を図る。
具体的には、実店舗の来店者の欲しい商品が欠品していた場合、「アンドモール」のシステムと連携したタブレット端末で近隣店舗やテナントの倉庫在庫を確認して販売でき、後日、購入者の自宅に届けることが可能で、在庫切れによる販売ロスを軽減する。その際、タブレット接客で販売した売り上げは販売店舗の評価として集計できる。タブレット接客の導入店は100店舗でスタートする。
また、三井不動産では「アンドモール」で受注した商品をリアル店舗から出荷できる仕組みも用意。60 店舗が導入してのスタートとなるが、店頭販売員が空き時間に受注商品を箱に詰めて配送伝票を貼り、ECモールのスタッフに手渡すだけというシンプルな設計にした。
加えて、「アンドモール」に掲載する店頭スタッフのコーディネート提案から販売につながった商品についても、誰が提案したコーデかも記録できるため、販売員個人の評価として集計可能で、店頭スタッフのモチベーションアップにもつながるという。
「アンドモール」で実店舗の在庫を確認できる機能もあるが、実際に手にとってみたい場合はウェブに表示される各店舗の連絡先に電話して取り置き依頼をすることになる。まずはテナント側の業務負荷を考慮しての対応だが、今後、取り寄せ機能の要望が多ければ検討するという。
テナントのインフラ活用も
一方、すでに大半のテナントが自社EC を運営していることから、「アンドモール」では写真撮影などの“ささげ”と物流機能はテナント側のインフラを活用する。ただ、必要なフルフィル機能を持たないテナントにはオプションサービスとして外注先で商品を預かったり、写真を撮ったりする機能は用意している。収益モデルは他のファッションECモールと同様、売り上げに応じて販売手数料(システム利用料)をテナント側から受け取る形だ。
サイトに関しては、激戦区のファッションECで価格競争に陥らないためにも消費意欲を刺激し、旬の商品を買ってもらえる特集コンテンツやコーデネート提案を高頻度で発信する考え。同社では、ウェブマガジン「ハニカム」の元編集長が監修する編集部をアンドモール事業室内に立ち上げ、アパレルだけでなく小物や雑貨などを含めたライフスタイルを提案する読み物企画を平日は毎日更新する。こうしたコンテンツは施設のウェブサイトにも使用したり、特集内容に対応して館内の売り場演出を展開することもできるという。
集客面では、約1000 万人を抱える三井ショッピングパークポイント会員を軸に認知を高める方針で、リアル施
設とECモールの双方で同じポイントを貯めて、使えるようにしたほか、今後はグループが運営するマンションやオフィス施設の利用者へのアプローチも行う計画だ。また、タレントの森星さんやバービーさんを起用したテレビCM も放映を始めている。