アダストリア、OMOストアを開設――自社ECの人気機能を導入

 アダストリアは5月19日、自社通販サイト「ドットエスティ」と連動した初のOMO型店舗「ドットエスティストア」をららぽーとTOKYO-BAY(千葉県船橋市)にオープンしたのに続き、同月28日には新たに開業したミッテン府中(東京都府中市)にも「ドットエスティストア」の2号店を開設した。

 OMO店舗では、全国の店舗スタッフの着こなし投稿をチェックできる「スタッフボード」など自社ECの4つの人気コンテンツを、デジタルサイネージなどを活用して実店舗のサービスに落とし込んだ。また、ドットエスティ会員であれば来店ポイントが貯まったり、EC購入商品をOMOストアで送料無料で受け取れたり、「ドットエスティ」のアプリから気になるアイテムを試着予約できるサービスなど、デジタルとリアルをつなぐ仕掛けを用意した。

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ECの売れ筋商品も提案

全国のスタッフが発信する着こなし情報をサイネージで見せる

 1号店のららぽーとTOKYO-BAY店は店舗面積が約710m2と広く、グループが運営する25以上のブランドを取り扱う。

 店内の壁面には、ブランドごとに通販サイトのランキング上位商品を集めた「トレンドランキング」のコーナーを展開。今のトレンドアイテムが一目で分かるようにした。

 店の中央にはデジタルサイネージ一体型の什器を多数配置して「ブランドリコメンド」と「スタッフボード」のコーナーを展開する。前者は各ブランドがおすすめする商品を集めた“物軸”の見せ方で、後者は人気スタッフがブランドミックスのコーディネートを提案する“人軸”のコンテンツとなり、それぞれサイネージで紹介するアイテムはすぐにラックから手に取れるようにした。

 「スタッフボード」のモニターに映るQRコードを読み取るとスタッフのページにアクセスでき、そのほかのスタイリングを確認したり、その場で当該スタッフをフォローすることもできる。サイネージに表示するスタッフやコーディネートは2週間程度で切り替える。また、サイネージに登場する販売員は入居する館の顧客層などに合わせて選ぶという。

ミラー型サイネージでは購入履歴からスタイリング相談することもできる

 OMOストアでは、同社初導入となるミラー型サイネージを使って店頭スタッフにスタイリング相談ができる「パーソナルスタイリング」サービスも実施する。

 気になる商品のバーコードをスキャナーにかざすと、ミラーには通販サイトと連携した商品詳細が表示され、色違いも確認できる。画面には全国のスタッフによる当該アイテムを使ったスタイリングも出てくる。それらを選んで大きな画像で見たり、スタイリングに使ったアイテムを確認することもできる。

 ミラーサイネージでは、カメラマークを押すと3秒後に動画撮影(約5秒間)が始まるため、気になる後ろ姿や動いたときの雰囲気も確認できる。

 また、ドットエスティの会員バーコードをかざすとミラーに購入履歴が表示されるため、自分が買った商品に何を組み合わせればいいかなどをスタッフに相談できる。

販売員が軸のOMO店舗に

 初となるOMOストアについて、アダストリアでは好調な自社ECのサイト名を冠した店舗として展開することで自社ECのさらなる認知拡大と会員獲得につなげる狙いもあるが、店自体は「無機質なショールーミングストアとは真逆で、スタッフを真ん中に据えて情緒的な価値を提案する店舗にした」(田中順一執行役員マーケティング本部長兼広報宣伝部長)という。ミラー型サイネージもスタッフと顧客の会話のきっかけを作るツールとしての役割が大きいようだ。

 同社によれば、アパレル業界では在庫を持たないショールーミング型店舗の成功事例が乏しい上に、「コロナ禍でも店頭スタッフを起点にしたスタイリング提案やライブ配信があったからこそECチャネルが伸びた」(同)とし、改めて店頭スタッフを軸にファンを増やすためのOMOを再定義していく。

自社 EC のランキング上位アイテムをブランドごとに提案するコーナーも

 一方、OMOストアでは会員に来店ポイントを付与することで顧客の行動データを把握。来店して商品を購入したかどうかに加え、「ドットエスティストア」以外にも館内にあるアダストリアの14ブランドへの店舗送客につながったかどうかなど、OMOストアの売り上げだけでなく、他の売り場への波及効果も含めて総合的にデータを検証するという。また、「ドットエスティストア」は自社ECで購入した商品の受け取りサービスや、アプリ経由で試着したい商品の予約も受けるため、ウェブを起点とした来店者数を把握し、タッチポイントとしてのECの重要性なども見ていく。

 2号店となるミッテン府中店(店舗面積約495m2)には館内にアダストリアのブランドが2ブランドしかないため、1号店とは品ぞろえを変えていく。「ドットエスティストア」はECのビッグデータを活用して人気商品などを集約して見せるが、展開するブランドについては地域性や顧客属性、館内での展開ブランド数などを考慮して変化をつける考え。

 まずは2店舗でのデータ検証を経て次の展開を決める考えだが、OMOストアの拡充だけでなく、「ドットエスティストア」で効果のある機能・サービスを自社ブランドの単独店舗に横展開することも視野にあるようだ。

 なお、OMOストアの1号店には店舗内に撮影スタジオを併設。同じ館に入るアダストリアブランドのスタッフも自由に利用し、定期的にインスタライブを配信したり、スタッフがおすすめのコーディネートを発信していくという。

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