高島屋は4月29日、シンガポールに本社を置くトランスコスモスとの合弁会社タカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマース(TTIC)を通じて展開するショールーミングストア事業の1号店「MeetzSTORE(ミーツストア)」を高島屋新宿店2階にオープンした。
当該店は、店頭では商品を販売しない、高島屋として初の“売らない店舗”で、注文は店頭のRQコードが入り口となる専用通販サイトで受ける。
これまで百貨店に馴染みのないZ世代や本物志向でこだわりの商品を求めている既存顧客を含めて幅広い利用者層を意識し、D2Cブランドを中心に約60社の商品をバイヤーが選定。食品や化粧品、用品雑貨、衣料品など紹介する。
「ラクマ公式ショップ」では、大手リユース事 店内は白を基調とした空間とし、棚や什器の高さを変えたり、複数の商品カテゴリーをひとつの棚に陳列して見せたりすることで、偶然の出会いを大切にする。ブランディングとインテリアデザインはジョージクリエイティブカンパニーが担当した。
全30ブースのうち5ブースでは、5つのテーマに精通した5人のキュレーターが目利きした商品を展開。「食・グルメ」はタレントの寺門ジモンさん、「ジェンダーレスなライフスタイル」は建築デザイナーのサリー楓さん、「ビューティー」はモデルの浦浜アリサさん、「エシカル」はエシカルディレクターの坂口真生さん、「アート&クラフト」はデザインビジネスプロデューサーの天野譲滋さんがキュレーターを務める。
「ミーツストア」ではギフトに適した商品も多数用意しており、専用通販サイトではギフト包装での配送が可能だ。また、LINEやメールなどのアカウントを通じて住所を知らない相手にも手軽にギフトを贈ることができるソーシャルギフトサービスも5月16日にスタートした。
店頭にはギフトコンシェルジュを6人配置し、商品の説明や通販サイトの利用方法もアドバイスする。来店できないユーザーにはオンライン接客でも対応するという。
AIカメラから取得したデータ、オンラインストアやSNSから得た閲覧データなどを組み合わせた定量分析に加え、コンシェルジュが接客を通じて得たユーザーの購買意欲や動機などの定性情報を出店ブランドにフィードバックして今後の商品開発などに生かしてもらう。
参加するブランドからは出店料とECで売れた際に手数料を徴収する。商品は「ミーツストア」での展示終了後も専用通販サイトで取り扱う。
TTICによると、ショールーミングストアは5年後に国内外で10店舗の出店を計画する。来年には関西圏にも開設する予定のほか、23~24年には海外展開も開始。シンガポール以外では「フランチャイズ展開を視野に入れている」(川口貴明CEO)という。
先行する他のショールーミングストアとの差別化策としては、TTICがこれまで日本企業のオンライン、オフラインの両チャネルでアジア進出を支援してきた実績を生かして「ミーツストア」出店ブランドの越境ECやリアル展開をサポート。ショールーミングストア単体ではなく、越境ECや“売らない店”の仕組みを外部に提供するフランチャイズ展開でマネタイズしていく考えだ。
“うらない店”については、大丸松坂屋百貨店は2021年10月、大丸東京店にショールーミングスペース「明日見世」を開設し、D2Cブランドの商品などを提案している。百貨店のスタッフが商品や各ブランドのストーリーを紹介し、気になる商品はQRコードからD2Cブランドの自社ECに送客して購入してもらう仕組みを採用した。22年1月にはNTTドコモと共同でAI顔認証ソフトウェアによるデータ分析の実証実験を開始。店舗レイアウトや店舗運営の改善による顧客満足度の向上を図るとともに、出店ブランドへのフィードバック情報の強化につなげる。
また、百貨店が手がける次世代店舗としては、そごう・西武が21年9月、西武渋谷店にOMOストア「チューズベースシブヤ」を開設した。半年ごとにテーマを変え、共感するD2Cブランドなどの商品を扱う。百貨店としては珍しい実店舗とECの完全在庫連携を実現。店頭で見た商品を帰宅後にECで購入したり、ECで購入した商品を店舗で受けとるなど、顧客目線での購買体験を追求する。当該店では機会損失を発生させないためにも、その場でも販売して全商品を持ち帰ることができる。