協和、肌診断アプリを配信――スマホで撮影した画像を解析

 協和は6月中旬に、肌状態を可視化するアプリの配信を開始する。スマートフォンで撮影した画像を使って、肌状態を解析する。これまで肌診断を行うにはスマホに搭載されたカメラの性能が低く、ユーザー自身で撮影した画像での解析は難しかったという。協和はパナソニックシステムネットワークス開発研究所と組むことで、先端センシング技術を応用。手軽に正確な肌診断を行うことができるようにした。

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肌悩みに多い7項目をスコアで可視化

 配信するのは「美肌スキャン」。スマホで撮影した画像を解析し、毛穴やキメ、しわ、小じわ、たるみ、くま、シミといった7項目について肌状態を診断する。診断はスコア化することで可視化し、スコアをもとに推定年齢を示す。診断の対象となる7項目は、顧客へのアンケートやカウンセリングで多い肌悩みをもとに設計した。

iOS の配信からスタート

 スコアはグラフで確認できる。項目ごとに肌のエイジング進行を予想して、現在のレベル感をグラデーションで表示する。ケアが必要な部分を色の濃淡を使ってわかりやすく段階的に表示していく。

 データは半年間分を蓄積し、長期的な肌の変化を可視化できるようにした。グラフは1週間、1か月、3カ月、6か月と切り替えて表示でき、体調や季節の変化、生活習慣などで変わる肌状態の傾向を把握できる。「休息した週明けの月曜日は肌状態が良いことや、美容ドリンクをプラスした翌日は肌のスコアが高いといった変化がわかる」(協和)と説明する。

 肌状態のスコアが低かった項目を中心に、同社の知見を学習したAIが分析結果に基づいて最適なケア方法とおすすめのアイテムを提案する。例えば、小じわが目立つ場合には保湿の重要性を説明し、シミが気になる場合にはシミケアを目的とした専門的なアイテムを使用することをアドバイスするという。

 ターゲットは自社顧客。入浴後や化粧前などの素肌の状態で毎日決まった時間に撮影することを推奨し、継続的な利用を促していく。肌状態を記録することを習慣化してもらうことで、肌ケアを行うきっかけ作りとするほか、肌状態の可視化による美容の効果実感につなげる考え。配信開始に向けて、アプリを紹介する専用ページを用意するほか、リアルイベントでの告知を通じて利用促進につなげていく。

使いやすい肌診断サービスを実現

毛穴やキメ、しわ、小じわ、たるみ、くま、シミの7項目について肌状態を診断

 肌診断をめぐっては、協和は3年前にIoT機器「ハイミラー」を開発し、肌診断サービスをスタート。定額サービスのユーザー向けに提供していたもので、AIを搭載したタブレット端末のカメラ機能を使って肌診断を実施。診断結果に基づいて、最適なケアをアドバイスしていた。ただ、自宅以外の場所では使用しにくいことや、タブレット端末の充電が必要なことなど利便性の課題があったようだ。

 そうしたことから、協和では普及率が高く、ユーザーにとって使い慣れているスマホを使った肌診断の開発の検討を開始。ただ、同社が目指す肌診断を実現するには高精度の撮影技術が必要だった。当時のスマホのカメラ機能は肌診断を行うには性能が低く、ユーザー自身が撮影した画像を使うことが難しかったという。

 今回のアプリは協業するパナソニックシステムネットワークス開発研究所の持つセンシング技術と画像処理技術を応用して開発した。スマホのカメラの性能が向上していることや、協和の保有する美容の知見を生かすことで、ユーザーが使いやすい肌診断サービスを実現できると判断した。肌状態の分析指標の策定や分析技術の設計について、近畿大学の医学部教授で皮膚科の専門医がアドバイザーとして参画している。

 肌診断は、皮膚科専門医の目視判定基準をアルゴリズム化して行う。例えば、しわ検出では、線の太さやしわとしわの間隔などを考慮して検出する。従来の技術では肌に刻まれた線の解析にとどまっており、皮膚科専門のアナログ的な基準で検出することは難しかったという。

 また、照明環境に左右されない肌分析アルゴリズムの耐性を強化。ユーザーの使用環境に左右されず、暗い場所や明るい場所でも同じ検出結果になるように信号処理を行った。

 このほか、セルフ撮影のサポートとして、撮影時に諸条件の適合状況を検出して一定基準を満たす場合にだけ撮影、分析できるようにした。肌のテカリや顔の向きなどのわずかな違いが影響してしまい、正確で再現性のある肌分析が難しくなるとしている。

 まずはiOS向けに配信を開始する。まずは運用を通じて得たユーザーのニーズや知見を活かして機能の拡充を進めていくようだ。

肌診断が顧客との関係強化に貢献

 肌診断サービスは昨今、化粧品のネット販売を行う各社で導入が進んでいる。アプリを起点に顧客との関係を強化することを狙ったもので、最適な肌ケアの提案を実施するほか、ユーザーの肌データを踏まえた商品開発を行うことも視野に入れた運用が行われている。

 シニアを主要顧客に持つ新日本製薬はアプリにAI肌診断機能を実装しサービスを提供。シニアが利用しやすい設計にこだわり、スマホで撮影した画像からシワ、キメ、シミ、透明感、潤い、毛穴といった6項目をスコア化し、「肌質」と「肌年齢」を算出する。診断結果から、最適なスキンケア商品の提案を行い、アップセルやクロスセルにつなげている。

 ファンケルは直営店にAIを活用した非接触型の肌分析サービスを導入し、肌状態の測定結果に応じた最適な商品提案を行っている。

 オルビスはアプリを起点に顧客との関係強化を図っており、AIを活用した肌等の分析コンテンツを充実。分析結果や関心の傾向など購買以外のデータを活用して、顧客の嗜好性などを把握して、最適な商品提案やLTVの向上を目指している。

 協和も肌状態の解析を通じて、顧客との関係性を強化するようだ。「まず肌状態を記録することからスタートし、肌状態の変化を把握してもらう。各項目のスコアの上昇を確認してもらい、美容の効果実感につなげていきたい」(同)とした。

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