楽天が「スタッフスタート」と連携――コーデ画像増やし購入促進

 

 楽天グループは7月1日、運営するファッション通販サイト「楽天ファッション」において、バニッシュ・スタンダードが提供する、店舗販売員のオムニチャネル化を推進するアプリサービス「スタッフスタート」のコーディネート投稿機能と連携すると発表した。店舗販売員がコーデ画像を登録する際、自動で楽天ファッションにも投稿されるようになる。商品ページにおけるスタッフの着用画像を増やすことで、購入率向上につなげる狙い。

 「スタッフスタート」は、店舗販売員によるコーディネート投稿やレビュー投稿などを通じて自社ECやSNS上で全国の顧客に接客ができるサービス。投稿を介した自社EC売り上げが可視化されるため、店頭販売員のモチベーション向上に貢献するだけでなく、人事評価にも反映できるのが特徴となっている。

スタッフのコーディネートが表示されるようになった

 

  今回の連携により、楽天ファッションへのコーデ画像の登録が完全自動化され、毎月10万以上のコーデ画像が投稿されるようになるという。連携スタート時には、すでにスタッフスタートを利用している200ブランド以上、約9500人の販売員がコーデ画像を楽天ファッションにも自動で投稿する形となる。

 これまでも、楽天ファッションにはコーデ画像を投稿する機能はあったが、ブランド側からすると、自社通販サイトとは別に登録する必要があるため、手間がかかる点がネックとなっていた。同サイトにおけるコーデ画像の登録数は、これまでよりもかなり多くなる見込みだという。

 楽天上級執行役員でコマースカンパニーヴァイスプレジデントの松村亮氏は「今まで以上に、販売員が楽天ファッションを意識して活動してくれるのではないか」と期待した。

楽天の松村亮上級執行役員左とバニッシュ・スタンダードの小野里寧晃代表取締役

 今後は、データを活用することで、店舗販売員とユーザーとのマッチングを強化していくほか、店舗販売員がフォロワーに向けて、接客販売できるツールなどの導入も検討するなど、コーデ画像投稿以外の機能も拡充していくという。

 松村上級執行役員は7月1日の記者会見において、楽天ファッションにおける販売チャネルを横断した取り組みを説明。「これまで販売員は店舗の顧客に商品を紹介してきたが、ECにも活躍の場を広げてもらい、顧客と直接つながってサービスを展開する。これがラストピースとなる。ただ、楽天だけの力では時間がかかるので、バニッシュ・スタンダードと連携することで、販売員のECにおける活躍の場をさらに広げたい」と述べた。

 また、バニッシュ・スタンダードの小野里寧晃代表取締役は「楽天ファッションにおける顧客の行動データを活用することで、一人ひとりの顧客にとって必要な販売員がレコメンドされるようにしたい。楽天側が販売員の実績を評価する仕組みも取り入れたい。また、スタッフスタートはファッション業界以外にも導入が進んでいるので、楽天市場との取り組みも期待している」などと今後の展望を語った。


 ニッセンも5月26日、運営する通販サイト「ニッセンオンライン」で販売する一部の家具・インテリア商品についてAR技術を使って、実際に設置したい部屋の場所にスマートフォンの画面上を通じて疑似的に原寸大の商品を配置できる機能「ニッセンAR体験」の提供を始めた。

記者会見では、松村上級執行役員と小野里代表取締役のほか、ユナイテッドアローズ執行役員の藤原義昭氏も参加した座談会が行われた。

─ユナイテッドアローズにおける「楽天ファッション」と「スタッフスタート」の利用状況について。
藤原「楽天ファッションは、戦略的パートナーとして重要なチャネルと捉えており、昨年度からぐんぐん伸びている。また、3月に自社通販サイトを刷新したが、その際にスタッフスタートも導入した。全国のスタッフが徹底的にコーディネートをサイトに上げているところだ」

ユナイテッドアローズの藤原義昭執行役員

─新型コロナウイルスの拡大でアパレル企業のDX化が進んだが、課題はあるか。


藤原
「コロナ禍が明ければ店に人は戻ってくるが、一方猛暑などで外に出たくないという人も多い。ECとリアル店舗は今後ますますつながってくるだろうし、それをいかにテクノロジーでつなげるかだ。ECの本質は『0秒0メートル24時間』だと思っている。店に行くには時間がかかるし距離もあり、営業時間もあるが、ECにはそういった制約はない。ただ、店舗には五感で感じられるというメリットがある。OMOは、顧客がテクノロジーを感じずにECと店舗を行き来できるようにすることが重要。こちらが邪魔をせずに、テクノロジーを入れて顧客に快適に買い物をしてもらうのが本質だ。店舗の接客は1対1だが、デジタル化すれば1対nの接客ができる。店舗の経験を、いかにデジタルを通じてECで展開するかだ」

小野里「スタッフがEC通じて接客のできる世界を作り、評価してもらえるようにした。今は通販サイトに対してコーディネートを提供し、顧客に買ってもらっているが、これで満足していては駄目。トップレイヤーのスタッフは、インスタグラムなどを通じてオンライン上で多くの顧客を獲得できる。そうしたファンが店頭にも訪れるという循環が生まれている。そういた顧客が来店する循環を作ることが一番の『スタッフコマース』の世界だと思う。それを実現するためには、経営側の努力が必要。例えば店頭業務とオンライン業務のバランスを取らなければならない。実店舗が続き、雇用が続くためにはオンライン接客が必要だ」

松村「アパレル企業の機能がそれぞれの販売チャネルで分断されていたのが課題だった。これからはそれを統合していかなければいけない。それを実現するためには、そもそもソリューションがなければいけない。もう1つは、アパレル企業側のやる気や熱量、経営側の理解も必要になってくる。ソリューションという点でいうと、楽天だけで全て進めるのではなく、外部と組んでやっていく。在庫管理もさまざまな外部プレイヤーとソリューションを作っているし、販売員に関してはバニッシュ・スタンダードとサービスを作っていく。ユナイテッドアローズのような、業界の中でも理解の進んだブランドと組み、次のステップに向かっていきたい」

─楽天ファッションとスタッフスタートの連携への期待は。

藤原「売り上げを増やすことが最終的にやりたいことではあるが、それは顧客が満足するということでもある。また、ECは返品率を下げることが重要になってくる。単に商品説明を書くだけはなく『こんな着方があるんだ』とか『こんな風に私はなれるんだ』ということを顧客の頭の中で想像してもらい、それが実際に着たときに一致すれば返品率が下がるし、『この前私が買ったブラウスはこの人のスタイリングを参考にしたな』ということを覚えてもらえれば、『この人のスタイリングをまた見よう』となり、買い物が楽しくなる。楽天と連携する意味は、自社通販だけではなく、他サイトでも自分たちの頑張りが報われるようになるので、スタッフからしても『顧客から承認される』という世界観はとても嬉しいのではないか」

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG