ファッション通販売上高ランキングーーコロナ2年目の通販利用の状況は?

  • 2022年8月25日
  • 2022年9月25日
  • 特集1

 本誌姉妹紙「週刊通販新聞」が行ったファッション商材の通販売上高調査では、コロナ2年目となる2021年度は前年の大幅成長の反動もあってマイナス成長となった企業が散見される。ファッションECモール運営企業を除いた売上高ランキング上位10社のうち、通販企業4社、有店舗アパレル6社の顔ぶれに変化はなかったが、ECチャネルで力をつけてきているアパレル企業もあり、通販市場における有店舗アパレルの存在感はさらに高まりそうだ。当該市場の潮流や有力企業の動向などを見ていく。

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事例1通販専業・ECモール:トップ10に通販専業は4社 ECモールはゾゾが続伸

 テレビやカタログなどの売り場を持つ総合系通販企業は、コロナ1年目で獲得した新規顧客の定着化に力を注いだ企業が多かったようだ。また、コロナ1年目の巣ごもり需要は食料品や日用品が主体だったが、2年目は衣料品の需要回復に伴って当該カテゴリーは健闘した企業が多いと見られる。

 千趣会の2021年12月期は、巣ごもり特需が落ち着いたことで購入会員数は落としたものの、前年に大きく増えた新規・復活会員の継続購入および客単価アップを重点目標とし、会員基盤全体のアクティブ化を目指した結果、継続購入会員は前年比5万人強増の約128万人、1件当たりの受注単価は同2.7%増の9072円と踏ん張った。

 同社は資本業務提携を結んでいるJR東日本との協業を強化。JR東日本管轄のエキナカや駅ビルで千趣会のオリジナル汗取りインナーブランド「サラリスト」や、綿混発熱インナーブランド「ホットコット」といった定番アイテムを販売する催事を10回、合計134日間開催して約1万3000人が購入するなど、オフライン展開でも成果が出始めている。

 高島屋のカタログ事業は、新聞広告と百貨店の組織顧客向け媒体を活用した顧客開拓を推進。百貨店顧客にはカシミヤニットなど得意な商材を重点的に展開し、購入者へのカタログ送付につなげる。

 新聞広告では名店の食品が人気だが、ファッション商材ではオリジナルブランド「タカシマヤスタイル・プリュ」の反応が良いようだ。婦人服からスタートした当該ブランドは買いやすい価格帯とS~3Lまでのサイズバリエーションが支持されており、婦人向けを中心にユーザーの定着化に成功。同ブランドの売上高は前期に6億7000万円へ拡大。今期は8億円を目指すなど好調を維持している。

 ECチャネルでは自家需要開拓の一環として高級ブランドを扱う「タカシマヤラグジュアリーサロン」の開設に続き、ハイエンドからカジュアルまでの腕時計を展開する「タカシマヤウォッチメゾンオンライン」を展開。取り扱いブランドを広げてファッション商材の売り上げ拡大につなげる。

 テレビ通販については、通販専門放送大手のQVCとジュピターショップチャンネルが前年と同じ3位と6位を守った。QVCは売上高の約5割、ショップチャンネルは約3割を衣料品および服飾雑貨、ジュエリーが占めていると見られる。

 ショップチャンネルは21年4月から、原料生産や素材開発、製造、トレーサビリティなどで自然環境に配慮した衣料品を紹介する番組「未来へのおくりもの」をスタートした。長く愛用することもサステナブルに貢献できるとして商品の背景にあるストーリーや作り手の思いなどを丁寧に紹介。ブランドのコンセプトや取り組みに共感してもらえる番組作りを行っていく。

 衣料品がメインの通販企業については、フェリシモは、ラインアップの拡充とメディア露出を強化した「フラットブラ」や「ヨガ気分ブラ」などのシリーズが好評のインナーブランド「フラフィール」が好調だったほか、雑貨とファッションの新ブランド「エルメント」も売り上げ拡大に貢献したようだ。

 通販が主力である靴のヒラキは、インフルエンサーによる商品のPR投稿施策を積極的に展開した結果、通販サイトの訪問者数が15%増と伸長した。一方で、販売促進商品と位置付けていたレディースカジュアルシューズ「ふわりっと」をはじめとした売れ筋アイテムについて、生産工場のある中国国内でのコロナ感染拡大の影響などを受けて、入荷が遅延。受注につながらず通販事業は前年比微減となった。

 また、「楽天市場」などの総合ECモールを主戦場としてきたネット専業のアパレルブランドはモール内の競争に加え、コロナ禍で有店舗のアパレルがECチャネルを本気で強化していることから、SNS広告やインスタライブなどの露出面でも影響を受け、苦戦を強いられている人気ショップは少なくないようだ。

 そうした中でも、白鳩はコロナ禍のEC利用者拡大を背景に、プライベートブランド商品の開発を積極化したほか、SNSを利用した集客施策やクーポン発行、商品広告の最適化などによって2ケタ近い成長率となった。

モール利用者は拡大傾向に

 ファッション専業のECモール(※図表を参照)については、アパレルの実店舗が休業した20年度はECチャネルに多くの在庫が回ったことや、消費者のデジタルシフトが加速したことで2ケタ成長したモールが多かったが、21年度は落ち着きを取り戻した。

 ただ、ゾゾやロコンドなど多くのモールでアクティブユーザーは増えており、テレビCMでの露出もあって服をECで買う層は増えていると見られる。同別表は決算会計上の売上高(※マガシークは商品取扱高)だが、モールの流通額を示す商品取扱高で見ると、ゾゾの22年3月期は2021年3月期が前年比21.3%増の5088億円まで拡大した。

 また、楽天が運営する「楽天ファッション」は、数値は非公開なものの、品ぞろえの強化や「楽天ファッション・ウィーク東京」との連携強化などもあってアプリダウンロード数、ユーザー数ともに大きく伸び、コロナ2年目も成長率は高かったと見られる。

 ゾゾによると、前期はコロナの感染拡大状況や人流回復の度合いにかかわらず、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」の出店ブランドから積極的な在庫投入が続く中、テレビCMやウェブ広告などの集客施策が効果を発揮してサイト訪問者数、新規会員獲得、購入状況が好調に推移。年間購入者数は21年末時点で初めて1000万人の大台を突破した。

ゾゾは期間限定で「アディダス」の人気シューズを AR 試着できるようにした

 PayPayモール店についても、大型施策「超PayPay祭」などで獲得したユーザーの定着や、ヤフーによる積極的な販促費用投下が前期も続いたことで取扱高は前年比55.5%増の438億円に拡大した。

 また、21年3月に開設したコスメ専門売り場「ゾゾコスメ」の月別流通額が順調に拡大。コスメ購入者はコスメ未購入者と比べて年間購入額が3%アップするなど、ゾゾユーザーへのコスメとアパレルのクロスセルが機能しているという。

 ロコンドの前期は、ユーチューバーであるヒカルさんの「リザード」など買い取り販売するD2Cブランド商品の売り上げ構成比が低下したことで売上高は前年を割り込んだものの、取扱高は前年比3.2%増の212億円となり、創業以来12年連続での増収を維持した。

 取扱高については、外出自粛要請で主力商材である靴の需要自体が大きく減少したが、主力のECモール事業ではウェブ広告などを通じた認知向上を目指すとともに、サッカー用品の通販サイト「スポーツウェブショッパーズ」や海外ファッションを扱う「waja」を買収した。また、実店舗からECへのシフト需要を取り込み、既存取り扱いブランドの伸長や新規ブランドの誘致が順調に進んだことが奏功したという。

 減収が続いている丸井グループは近年、ファッションEC市場で競争が激化する中、独自性を発揮できていないことなどから、19年3月期の242億円をピークに4年連続で減少した。前期は上期が14%減と低迷。専門人材を配置したUI専任担当を新設したことで、下期は回復基調で推移したという。

 また、「ハッピープラスストア」を運営する集英社は売上高こそ伸びていないが、セール販売を抑制して定価販売を強化。商品の魅力を伝える多彩なコンテンツと連動して定価でも納得して購入してもらうことに注力し、利益改善が進んだ。

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