楽天・三木谷社長が店舗に「協力」呼びかけ――「楽天モバイル」が国内EC流通総額10兆円のカギに

 楽天グループは1月26日、仮想モール「楽天市場」出店者向けのイベント「楽天新春カンファレンス2023」を開催した。同イベントでは、冒頭に三木谷浩史社長が登壇し、楽天市場の将来像や今年上半期における施策などを説明するのが通例となっている。しかし、今年は「モバイル!モバイル!モバイル!モバイル!」と題し、「凄くお金を使っているので、ちゃんと説明しないといけない」(三木谷社長)と、携帯電話サービス「楽天モバイル」に関する話題を中心に語った。

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モバイル効果で流通額積み上げ

 三木谷社長はまず、「2006年、ガラケー時代の新春カンファレンスで『モバイル!モバイル!モバイル!』という話をした。モバイルの流通総額がほぼゼロだった時代に『全体の70%を占めるようになる』と予言した。今年のテーマは1つ増やして『モバイル!モバイル!モバイル!モバイル!』ということだ」述べ、その上で「楽天モバイルはNTTドコモやau、ソフトバンクモバイルのような携帯電話会社を目指すものではない。『楽天エコシステム』にもう1つ巨大なプラットフォームを作る、というのが基本的な発想。『皆さんの流通総額を増やしていく』ことがベースになっている。『国内EC流通総額10兆円計画』の大きな柱の1つが楽天モバイルだということを説明したい」と講演の趣旨を語った。

「楽天エコシステムの成長が店舗の発展につながる」と語る三木谷浩史社長

 楽天モバイルの強みは、データ容量無制限での月額3278円という料金。さらに利用者は楽天のポイントアッププログラム(SPU)でも優遇される。これにより、節約された携帯電話料金が楽天市場などの同社サービスに流れ込むことが期待できる。さらには「誰がアマゾンで買っているのか、ネットフリックスで見ているのかが分かるし、どんな相関関係があるかというデータも手にすることができる」(三木谷社長)。こうしたデータとAIを使い、より楽天市場で買い物をしてもらうための施策を編み出し、流通総額の増加につなげていくという。

 実際に、22年1月~12月の契約者(1年以上の利用者)において、楽天モバイル加入前と加入後を比較した場合、加入後の楽天市場における年間購入額は49%増えたという。また、契約後の同社サービス利用数は、契約後1年で平均+2.58(4.46から7.04に増加)とクロスユースが活発化しているほか、楽天モバイルユーザーの楽天市場利用率は86.1%にのぼる。同社では、2030年までに国内EC流通総額を10兆円にする計画だが、「2兆円強はモバイル効果で積み上げることができ
る」(三木谷氏)とする。

配送品質高い商品を優遇

 三木谷社長は、拡大を続ける楽天エコシステムについて「楽天市場がど真ん中にあり、楽天カードや楽天銀行や楽天証券などは城壁にあたる。このうち最強の城壁が楽天モバイルになる」と断言。「楽天モバイルを使うことで帰属意識は爆発的に上がる」とした。

 22年元旦における楽天市場流通総額のうち、89.3%がモバイル端末からのものだったという。「(インターネットは)ほぼモバイルになりつつある。ただ、皆さんの中には他社でモバイル契約をしていて、いまだにデータの使用を抑えている人もいると思う。(楽天モバイルで)それを解放したい。料金と容量を気にせずにモバイルを使えるようにすることで、国内が元気になり、楽天市場も盛り上がっていく」(三木谷社長)。

楽天の国内EC流通総額は5兆6000億円に達した

 三木谷社長は、拡大を続ける楽天エコシステムについて「楽天市場がど真ん中にあり、楽天カードや楽天銀行や楽天証券などは城壁にあたる。このうち最強の城壁が楽天モバイルになる」と断言。「楽天モバイルを使うことで帰属意識は爆発的に上がる」とした。

 「楽天モバイルユーザーが1000万人、2000万人になれば、皆さんの流通総額は最低でも50%上がる」と繰り返し強調する三木谷社長。同氏によれば、22年の国内EC流通総額は前期比11.2%増の5兆6000億円。楽天モバイルユーザーが2000万人に到達した場合、単純計算で流通総額が2兆5000億円増えることから、8兆1000億円まで伸びる。「皆さんの力で1.9兆円伸ばしていただければ、10兆円になる」(三木谷社長)。

 講演の最後で三木谷社長は「楽天モバイルが既存3キャリアを凌ぐ携帯電話会社になる可能性は高く、それが成功することが皆さんの商売を劇的に伸ばす一番の有効策。楽天モバイルによる“脳内シェア”が上がれば、日本の消費マーケットにおいて、皆さんと一緒に強烈なリーダーシップを発揮しながらけん引していける。楽天カードや楽天トラベル、楽天銀行の何倍もの効果があるから1兆円を上回る投資をしている」と、楽天モバイルの成功がもたらす店舗へのメリットについて、あらためて説明。そして「皆さんの携帯電話も楽天モバイルに変えていただきたい。法人契約もできれば(1月30日から開始する)楽天モバイルの法人プランにしてもらいたい。なぜなら
(携帯市場の)民主化運動にはファン、サポーターが必要だからだ」として、店舗に協力を呼びかけた。

配送品質高い商品を優遇

 三木谷社長の講演後に開催された「2023年上期戦略共有会」では、松村亮常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーヴァイスプレジデントが、楽天市場の方針や戦略について店舗に説明した。

 松村常務は「目標とする国内EC流通総額10兆円という数字は、国内のオンライン・オフライン含めた小売り事業者の中で、一番になっていくことだ。そのためには、さまざまなことを進化させなければいけない」と述べ、具体的には「売り場改革」「物流改革」データ改革」が必要だとした。

 このうち「物流改革」に関して、松村常務は「これまでは『あす楽』でスピード配送を、『共通の送料込みライン』で分かりやすい送料表示を実現し、ユーザー満足度を向上させてきたが、今後はユーザーごとに個別のニーズに応えていきたい」と述べた。

 配送に関するユーザーニーズは「受け取りのタイミング」「柔軟な受け取り方法」「配送に関する情報の分かりやすさ」に大別されるという。同社では6月以降、最短指定可能日を検索・商品ページに表示できるようにするほか、店舗の繁忙期に配送日の「日時指定なし」をユーザーに選んだ場合にポイントを付与する実験を行うなどの取り組みも行っている。

 24年開始予定の「配送品質向上制度」は、「配送品質の高い商品をよりユーザーに対して明示的に分かるようにしていく」(松村常務)というもの。配送品質の基準に関しては「納期順守率96%以上」「6日以内の配送件数比率80%以上」「出荷件数が月に100件以上」「送料込みライン導入」「あす楽への対応」といったものを検討している。具体的な基準に関しては、24年に公表する予定だ。ラベルの貼付された商品は、楽天市場内での検索等で上位に表示されることになる。

 同社では店舗向けの物流改善支援として、スピード配送の実現に向けたチェックリストの提供や、「楽天大学」でのノウハウ動画提供などを行うほか、「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」においては、出荷キャンセル料の一部無料化などのサービス改善や、受注処理自動化に向けた支援も行っていくという。

RSL利用店舗が10%超に

 RSLからの出荷比率は、楽天市場の注文数に占める割合が10%を突破。契約店舗数も6000店超となっており、楽天市場全出店店舗(約5万6000店舗)の10%超となった。180サイズ以上の大型商品の取り扱いを開始するほか、メール便の翌日配送や熨斗シール貼付にも対応していく。

 また、販売面ではSKU対応による商品管理を導入したことにより、定期購入機能を拡充。4月からは買い物カゴを刷新し、継続的なポイント利用機能を追加する。「店舗・ユーザーの使い勝手ともに大きく作り変えていく」(松村常務)。

 近年強化しているライブコマースについては、「成功事例もかなり出てきている」(同)。ライブ実施時と非実施時で比較した場合、後者の流通額が5.7倍に達した例もあるという。2月以降は、RMS(店舗運営システム)から簡単に配信設定や効果測定レポートの確認を可能とする。

 利用者が急増している、ショッピングSNS「ROOM」に関しては、22年のROOM経由流通額は前年比40%増、購入ユーザー数は同50%増となった。ファッションジャンル店舗のROOM経由新規購入者数は同79%増と特に好調。松村常務は「まだ試していない店舗はぜひチャレンジしてほしい」と呼びかけた。

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