宮崎義則●ベルヴィCEO兼COO

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専門性高めてトップブランドに

 ギフトEC「ソムリエ@ギフト」を展開する、ベルヴィの2022年5月期の売上高は、前期比46.8%増の77億1400万円だった。2005年のECへの参入以降、売り上げが右肩上がりとなっている同社。ギフトジャンルとしては比較的ECへの参入は後発だったものの、ギフトジャンルの競合より少し安い価格設定としたり、販売ページのクオリティーを高めたりすることで躍進。中でも、出店する仮想モール「楽天市場」においては、ギフトジャンルのトップ店舗として知名度を高めている。近年は新規事業として、ふるさと納税の代行事業にも参入。本社がある兵庫県市川町などの事業を請け負っている。宮崎義則CEO兼COOは以前から「ECだけではなく、ギフトの世界でトップ企業になりたい」と語っている。ギフトの世界ではまだまだ根強い固定客を持つ、百貨店を上回るための工夫と顧客獲得策は。

カードタイプのギフトならやれることの幅が大きく広がる

売上高100億円を視野に

─売上高が右肩上がりとなっていますね。

 2024年5月期に売上高100億円を目指しています。目標を達成する上では、自社サイトの成長が欠かせません。オンリーワンのサービスを展開しようとすると、仮想モールではできないことがあるわけです。お客様から「あのサイトなら何でもあるよね」と言ってもらえる店作りをしたいと考えています。

─楽天市場の優秀店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2022」において「ギフト賞」や「百貨店・総合通販部門」でジャンル大賞を受賞するなど、2022年も引き続き成長を維持しました。23年5月期の業績見通しについては。

 ただ、今期はここ最近では一番苦戦しています。特に、22年9月以降厳しくなった印象です。その原因として、1つは「ヤフーショッピング」においてポイントのバラまきが終わり、以前より売れなくなったことが挙げられます。「楽天市場」に関しては、引き続き成長を続けているものの、コロナ禍が一巡してから高い成長率を維持するのは難しくなりました。また「LINEギフト」については、当社が日本で一番売っていると自負しているのですが、やや苦戦しました。ヤフーショッピングと連携して、商品数がLINEギフト全体で急増した結果、もともと売れていた当社などは苦戦を強いられたわけです。そのため、23年5月期の売上高は前期からやや増えて80億円強を見込んでいます。

─円安や原材料価格の高騰の影響はありますか。

 あまりそれはないですね。ただ、これまではシーズナルギフトが好調でしたがが、以前よりは伸び率が厳しくなっています。これは、皆が外出するようになったことでECが苦戦している部分もあると思っています。「ギフトといえばソムリエ@ギフト」と思ってもらうために、QRコードを使ったカードタイプのカタログギフトの販売を開始しました。当社はカタログギフトを中心に成長してきましたが、いよいよカードタイプに変わろうとしているわけです。紙のカタログギフトはどんどん減っていくでしょう。ウェブで選ぶ形になると、もっとセグメント化したカタログギフトが作れるようになります。よりギフトの専門性を高めていきたいですね。

─ギフトの専門性とはどういったものでしょうか。

 例えばコーヒーのギフトであれば、これまでは「ネスレなのかAGFなのかUCCなのかスターバックスなのか」というように、メーカーを基準に送っていました。ただ、本来は好きなコーヒー豆は人によって違うだろうし、豆ではなくドリップ式がいいという人もいる。ギフトをもらった人が自分に一番合うコーヒーを選べるようにしていくのが理想です。紙媒体の場合、ニッチ過ぎてカタログに載せられない商品もあるので、どうしても「総合カタログギフト」になってしまう。紙のカタログは制作費がかかるので、何かに特化したカタログギフトはコスト的に見合いませんでした。

─カードタイプのカタログギフトはどこが便利なのでしょうか。

 紙からカードタイプになり、ウェブで商品を選ぶのであれば、いろいろなカタログが考えられます。例えば「3歳男児のクリスマス用カタログギフト」とか、「5歳女児がいる家庭への手土産用カタログギフト」などといったものです。ギフトを送る先の子供がどんなアニメにはまっているか、外からは分からないわけで、ギフトを貰った人がいろいろなアニメ関連商品の中から選べるようにすればいいということです。また、カードタイプなら、当社がやれることの幅が広がります。

─その他のメリットは。

 新規事業として取り組んでいる、ふるさと納税の運営代行にも応用できるでしょう。ふるさと納税をする人が一番気にするのは、冷蔵庫や冷凍庫の容量。年末にまとめて寄付をすると、返礼品として肉やカニが大量に届いたら入り切らないため、時期をずらして寄付をするなど調整しなければいけなません。カードタイプのカタログギフトが返礼品なら、寄附者の都合の良い時期に注文することができます。さらに、QRコードを読み込んでウェブページにアクセスした際に、動画コンテンツなどを差し込むことで、当該自治体の旅行関連クーポンを配るといった展開も考えています。

─具体的には。

 当社では、兵庫県豊岡市が手掛けるふるさと納税事業の運営代行をしていますが、例えばアクセス先のウェブページに豊岡市の旅行体験コンテンツを置けば「豊岡に旅行してみるか」となり、クーポンをもらってくれるのではないでしょうか。そうなれば複数回の寄付も期待できます。カードタイプのカタログギフトを絡めたビジネスの拡大に加えて、ギフトに関しても、他社商品という借り物だけでやっている段階から、PBを活用したブランドの認知拡大につなげるべく、投資していきたいですね。

PBの開発進める

─宮崎さんはかねてより「ソムリエ@ギフト」をブランド化したいと公言しています。

 お客様から「ギフトといえばソムリエ@ギフトだよね」と言ってもらうためには、有名ブランドの取り扱いも増やしていきながら「ソムリエ@ギフトでしか買えないもの」、そして「ソムリエ@ギフトにしかないサービス」を実現していくしか、ギフト業界のトップオブトップにはいけないと思っています。これは永遠の課題だし、やり続けるしかない。ギフトはアイデアの世界なので、まだまだやれることはあるはずです。

─そのためにはパーソナライズ化が重要になってくる。

 今はそれぞれの好みに合わせるのが難しいから最大公約数的な商品が好まれているだけで、本来は1to1マーケティングが理想。パーソナライズ化に関して、労力をかけないで実現するというのが目指すべきところでしょうね。個人にピンポイントに刺さる商品の提案も大事だし、「受け手が商品を選べる」という利便性をいかに絡めて展開するか、でしょう。

─今後の成長戦略について。

 ギフト業界は閉鎖的で、トップブランドの化粧品やお菓子などはいまだに百貨店でしか販売していません。本来は、当社のようなEC企業がさまざまな商品を扱い、さまざまな人に使ってもらうことで、ユーザーの裾野は広がるのです。ショップ同士が競い合い、ユーザーにプロモーションをすることで、メーカーの売り上げも最大化するはずでしょう。

─カードタイプギフトを扱うことで幅が広がる。

 例えば、化粧品は人によって使うものが違うので、ギフトとして贈るには非常に難しい商材でした。しかしカードタイプなら貰った人が選べるので、かなり幅が広がるのではないでしょうか。化粧品だけのカタログが実現したら非常に面白いと思います。今までできなかったことをできるようにすることこそが、会社の成長につながると思っています。

─プライベートブランド(PB)の開発に力を入れています。

カードタイプを活用し、当社オリジナルのカタログギフトを増やすことで、ソムリエ@ギフトの認知を上げていきたい。同時に、PBもどんどん出していきたいですね。

─PBの点数は。

 今はまだ30種類程度で商品点数としては少ないのですが、当社の看板商品である「プレミアムカタログギフト」もPBなので、流通額としては全体の30%程度まで増えています。また、22年秋には山崎実業のインテリア雑貨シリーズ「タワー」のカタログギフトを昨秋発行しましたが、これが非常に好調に推移しているので、数億円規模の流通額になると思います。PBのギフト商品に関して、どれだけお金をかけて周知していけるかが来期の大きなテーマになります。

─物流関連での施策は。

 雑貨はすべて楽天スーパーロジスティクス(RSL)の倉庫に預けていて、他の商品は自社倉庫から出荷しています。雑貨については、コロナ禍で雑貨の需要が伸びたため取り扱いを開始したのですが、SKUが多すぎて自社倉庫で保管するのが難しく、RSLを利用しました。また、楽天市場の翌日配達サービス「あす楽」への対応は非常に重要で、売り上げに関わってくる部分です。当社が扱う雑貨は30~40代女性が購入することが多いので、こうしたユーザーが内祝いやギフトも買ってくれるようになれば、売上高はもっと増えるはずです。

ふるさと納税の運営代行をギフトECに匹敵する柱に

─ギフトEC以外では、先ほども話に出たふるさと納税の運営代行に力を入れています。ベルヴィの本社がある兵庫県市川町のふるさと納税の商品やページを宮崎さんが見た際に、レベルの低さを痛感したことが現在の事業につながったとか。

 2年後には、現在のギフトECに匹敵するほどの事業になるはずです。現在は市川町を皮切りに、7自治体の事業に関わっています。ただ、自治体によって関わり方が違うので、全ての自治体で「地域商社」という形でふるさと納税の商材を供給し、事業を手掛けるようになれば、もっと大きな柱になるでしょう。

─ふるさと納税の運営代行にはかなり期待しているわけですね。

 次の柱にしたいと考えています。24年5月期は大きな案件が決まる予定なので、売上高を積み増すことができるでしょう。

─ベルヴィだけではなく、ふるさと納税に関わる通販事業者が非常に増えています。ベルヴィの強みはとこにあるのでしょうか。

 1つはクリエイティブでしょうね。プロカメラマンを自社で4人抱えていて、さらにはスタイリストもいるので、クオリティーの高い写真を撮影することができます。総合的に見て、商品ページの作成には一日の長があると思っています。ふるさと納税の場合一番大事なのは商品力で、それは多くの消費者が返礼品の豪華さや還元率を気にしているからです。ただそれだけではなく、本当は自治体側のプロモーションも重要なのです。当社は動画コンテンツも作成しているので、動画も絡めた上で地域のプロモーションをしています。また、先ほども説明したようにカードタイプのカタログギフトを返礼品に採用できる点も強みと言えるでしょう。

─その他、現状の課題や今後やりたいことは。

 自社サイトを強化していきたいですね。楽天市場店の半分くらいは売れるはずだと思っています。自社サイトの場合は法人客が多いのが特徴です。特に記念品などは、個数が非常にたくさん出るので、利益も期待できます。そのためにはSEO対策にもっと力を入れたいと考えています。


宮崎義則(みやざき・よしのり)氏

1994年兵庫県立姫路西高等学校卒業、アメリカに語学留学。1997年ギフト業界に就職。丁稚奉公を経験。1998年父が経営するベルヴィに入社。2007年同社代表取締役に就任。



◇ 取材後メモ

ギフトECの世界でトップを走るベルヴィ。コロナ禍によるギフト需要の高まりも受けて売上高100億円を視野に入れています。「リアルも含めたギフト業界のトップオブトップ」を目指し、カードタイプのカタログギフトに注力している同社。ただ、この分野は競合となるギフティもかなり力を入れており、シェア争いが注目されるところです。もう一つ、同社が今後の成長事業として掲げるのが、ふるさと納税の運営代行事業。返礼品の豪華さや還元率が注目されがちなふるさと納税ですが、本来は寄付することで自治体を応援する制度だったはず。ベルヴィのような顧客開拓に長けたEC事業者と自治体がタッグを組むことは、その地域の良さを全国に知ってもらうことにつながるのではないでしょうか。
「官製通販」と揶揄されることもあるふるさと納税ですが、ECで実績のあるベルヴィのような企業が関わることで、真の意味での地域振興が果たすことができるのと同時に、日本経済の底上げにもなるはずです。

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