ヤフーショッピング、流通額拡大に急ブレーキ――プロモーション費抑制が直撃

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「成長率は下がらざるを得ない」

 「2023年は効率化の年。販促費のコントロールは継続する。成長率は下がらざるを得ない」─。Zホールディングス(=ZHD)の出澤剛社長は4月28日に開催した2023年3月期の決算説明会で、運営する仮想モール「ヤフーショッピング」の今年度の流通額の見通しについて減少傾向が続くと言及した。

 2023年3月期決算における「ヤフーショッピング」とグループのZOZO、アスクル運営の通販サイト「LOHACO(ロハコ)」とアスクル子会社のチャームの取扱高などを合計したショッピング事業取扱高は前年比0.2%減の1兆6946億円と前年実績を割り込んだ。上期(4~9月)までは同8.3%増で推移していたが下期から下落、特に第4四半期(1~3月)の取扱高は前年同期比13.3%減の3911億円と2桁減となり、通期ベースでもマイナスとなった。ショッピング事業取扱高はここ数年は堅調で、21年3月期では前年比45%増、22年3月期も13%増と2桁成長を継続していたが一転、苦戦した。

プロモーション費抑制で伸び悩む「Yahoo ! ショッピング」(画像はトップペ ージ

超PayPay祭を縮小

 苦戦の理由について「(ヤフーショッピングの)販促費をコントロールしたこと。昨年下期から成長と収益性のバランスをとるため、特にポイント還元のあり方をユーザーのリテンションをより高める形、効率を重視する形にしたため」(出澤社長)。加えて、定期開催している大型販促キャンペーン「超PayPay祭」について今年3月開催分は販促費削減のため、前年開催分に比べてポイント還元率などを大きく縮小。同社によると前年までの「超PayPay祭」は「1回で3桁億円半ば(約500億円)くらいの取扱高が生まれるバーゲンセール」(坂上亮介専務)であったため、規模を抑制した反動は大きく、3月度の月次取扱高は減少したという。

秋までは回復なし

「ヤフーショッピング」の取扱高の回復は今期(2024年3月)も少なくとも秋までは望めないよう。「(販促費抑制という)投資方針は22年度と23年度も同様、継続する」
(出澤社長)とし、今期も大型キャンペーンの抑制のほか、「5のつく日」などの月次販促策についても付与ポイントを様々な店舗で使用でき、使用期限の制限がない現行の「PayPayポイント」から「ヤフーショッピング」でしか使用できず、使用期限がある「ヤフーショッピング商品券」に切り替えるなどマーケティング費用の絞り込みを推進していく方針のようで、今期の
「ヤフーショッピング」の流通額も「23年の上期までは(取扱高減という)現状のトレンドが続くだろう」(坂上専務)と言い切る。

 同社によれば10月1日に予定するグループの中核企業であるヤフーとLINEら4社と合併、商号を「LINEヤフー株式会社」と変更したタイミングで、ヤフーとLINEのID統合(※PayPayとのID統合は24年度を予定)やそれに伴って11月から実施予定の既存の「Yahoo!プレミアム会員」に変わる新有料会員制度で「LINE」上で有料スタンプが使い放題となったり、アルバム機能に画像のほか動画も収納できるようになる特典などを加えた「LYPプレミアム会員」の運用開始などにより、LINE利用者らをヤフーショッピングへと送客し、再び流通額アップにつなげたい考えという。

 同社では今期は伸び悩み始めた成長性を再拡大させるべく、グループ再編による意思決定の迅速化や中途採用の凍結、動画配信サービス「GYAO!」のサービス終了や「LINEBank」の始動停止など赤字事業や重複事業の撤退、集約などで300億円程度の固定費を削減。収益性の高いメディア・検索の各事業などを再強化し、今期の売上収益は前期比13.6%増の1兆9000億円、調整後EBTDAは3560~3660億円(前期は3326億1000万円)を目指す考えとする。コマース事業の調整後EBITDAも前年比12.0%増の1720億円と増収を予想している。

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