大丸松坂屋百貨店は5月16日、食通のバイヤーが厳選した冷凍グルメ宅配のサブスクサービス「ラクリッチ」をスタートした。月額6500円~1万2000円の3コースを展開し、いつでもデパ地下クオリティの贅沢なグルメが楽しめるのを武器に、5年後には売上高50億円以上を目指す。
新サブスクサービスは、「“おまかせ”で、おいしい出会いを。」をコンセプトに、バイヤーが厳選した使いやすい少量サイズの商品を6~10品程度でセットにし、毎月冷凍で配送する。利用者にはメニュー内容のすべては見せず、一部の商品のみ公開することで、“届いたときの楽しみ”を演出する。
既存の定期宅配サービスは手軽さや健康志向、特別な日などオケージョンにふさわしい商品が多いが、同社ではデパ地下のコンセプトに近い“美味しさを全面に打ち出した日常向け”の商品をラインアップする。
コースは税込・送料込みで6~8品程度が入った6500円の「ちょいリッチBOX」と、同9000円で7~10品程度の「しっかリッチBOX」、同1万2000円で7~10品程度が入った「すごリッチBOX」の3コースを用意した。メニューは毎月異なるが、4カ月目以降は一部重複することもある。スタート時は「西洋銀座」や「日本料理鈴なり」「ポール・ボキューズ」などデパ地下クオリティの25ブランド、50点強を展開。「ラクリッチ」の完全オリジナルも7点用意した。
同社では、「忙しくても食事の時間は大切にしたい」「マンネリ化している献立にもう一品加えたい」といったニーズに応える。また、大丸松坂屋のバイヤーがおすすめする商品が届くサブスクサービスとすることで、「選ぶことが面倒」という人も試しやすくするほか、フードロスなどのサステナビリティに関心がある層も取り込む。まずは、ウェブマーケティングやSNSで露出を増やして認知拡大に努めるほか、160万人というメルマガ会員やアプリ利用者への周知を図る。
初年度は、KPIとオペレーションの仮説・検証を目的に会員数3000人を上限に展開するが、5年後には売上高50億円以上を目標とする。
2026年以降の事業急成長に向けて投資を拡大する方針で、取り扱いブランドを増やして日本を代表する食のプラットフォーマーを目指す。加えて、オリジナル商品の開発を強化し、高級スーパーへの卸など、サブスクサービスの枠を越えた取り組みや、海外展開も視野にあるという。
大丸松坂屋では、コロナ禍における消費者のライフスタイルの変化に対応し、時間と場所の制約を克服するビジネスモデルの転換を推進。従来の店頭だけでなく、オンライン上のタッチポイントを増やしてきた。
21年3月にファッションサブスクサービス「アナザーアドレス」を立ち上げたほか、22年3月にはデパートコスメの情報サイト「デパコ」をメディアコマースサイトにリニューアルするなどデジタルを活用した新規事業へのトライアルを重ねてきた。
今回、満を持して食カテゴリーのサブスク事業に参入するが、「オンラインであっても人の力を重視し、生活を豊かにする領域を主戦場にしていく」(澤田太郎社長)とする。