機能性表示食品に初の景品表示法処分ーー消費者庁がさくらフォレストを処分、届出「根拠」踏み込む初判断

 消費者庁は今年6月、さくらフォレストの機能性表示食品に、景品表示法に基づく措置命令(優良誤認)を下した。
 届出の「科学的根拠」に踏み込み違反とした初の事例。制度を所管する食品表示企画課の所掌を侵し、表示対策課が断行した処分は、混乱と反発を招いている。

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届出製品のSRに「根拠なし」

 処分は、機能性表示食品の根拠に踏み込んだ点でこれまでの処分と異なる。過去に機能性表示食品を対象にした処分は、「葛の花事件」(17年)の1件。「広告」の届出表示からの逸脱が対象だった。

 今回、厳密に届出表示の逸脱から問題になった広告表示は、血圧低下をめぐる「グーンと下げる」のみ。それ以外は、届出表示の裏づけとなる根拠が合理性を欠くとの判断から、届出表示そのものを不当表示と判断した。

 対象は、「きなり匠」、「きなり極」の2商品。「―匠」は、中性脂肪低下(機能性関与成分・DHA/EPA)、血圧低下(同・モノグルコシルヘスペリジン)、LDLコレステロールの酸化抑制(同・オリーブ由来ヒドロキシチロソール)を、「―極」は中性脂肪低下同・DHA/EPA)を表示していた。

いわゆる広告で問題視されたのは、「血圧をグーンと 下げる」のみ

SRと届出表示の不一致を問題視

 消費者庁の合理的根拠の提出要求(不実証広告規制)を受け、さくらフォレストは、DHA・EPAで30報を超える論文など根拠資料を提出。モノグルコシルヘスペリジンでは、トクホの許可論文も提出している。だが、消費者庁は、研究レビュー(SR)と届出表示の不一致を問題視。根拠と認めず「優良誤認」と判断した。

 「きなり」2商品は、DHA・EPAを4~500mg配合(総量)していた。一方、提出論文の多くは、その倍近い量で検証したものが大半を占めた。医薬品、トクホも成分量は、860~1800mg
(同)配合するものが中心。一部論文は少量で機能を示す評価もあったが、同量で機能を否定するものも同程度あり、「SRは肯定・否定の両側面から評価する必要があるが、適切な評価と認められない」(田中誠ヘルスケア表示指導室長:取材時点)とした。

 モノグルコシルヘスペリジンは、減塩しょうゆを対象に提出論文を評価。論文は、「成分+減塩」による効果を確認したものであり、「成分単独の使用の効果を裏付けるものではない」(同)とした。ヒドロキシチロソールは、摂取群とプラセボ群の有意差の評価手法を不適切と判断した。

 さくらフォレストは、「処分は仕方がない。真摯に受け止める」(西尾和剛取締役)とコメント。同日、届出を撤回した。

同種のSR製品、88件の根拠「確認」を要請

 制度を所管する食品表示企画課は、処分を受け、12商品と同一の根拠(SR)を使用したもの、2DHA・EPAは、とくに「きなり」の配合等を下回るもの─をメルクマールに、同種の届出を行う事業者に対し、根拠に基づく表示かを確認。7月17日を期限に回答を求めた。

 対象数は、DHA・EPAは31件、モノグルコシルヘスペリジンは12件、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは47件(2成分の重複4件を含む)の計88件。今後の対応は、「確認を求め、回答に応じて個別案件による」(食品表示企画課・蟹江誠保健表示室長:取材時点)として、個別企業に通知した。

 加えて、届出全製品の再検証についても日本通信販売協会、健康食品産業協議会、日本健康・栄養食品協会、日本抗加齢協会、日本チェーンドラッグストア協会の5団体を通じて会員企業に依頼している。「届出ガイドライン」の見直しも行う。

 「届出ガイドライン」の改正は、研究レビュー等の質向上を図る目的で策定された国際指針「PRISMA(プリズマ)声明2020」への準拠を求める。現在は、同声明の09年版への準拠が必要とされている。改正にあたってはパブリックコメントを行う。

 準拠には一定の経過措置を設ける。猶予期間は検討中だが、「準拠は来年度以降の対応を想定している」(行政関係者)との情報もある。改正以降、新規届出だけでなく、既存届出も変更届出による対応が必要になるとみられる。再検証の結果は、「何らかの形で定期的な公表を行うなど、見える化を検討している」(食品表示企画課)としている。

根拠情報公開も不実証広告規制を適用

 「根拠」に踏み込み、他の届出企業を巻き込んだ今回の処分は反発を招いている。消費者庁は、処分にあたり、不実証広告規制を適用している。規制は、企業に表示の裏づけとなる合理的根拠の提出を求め、これを認めない場合、優良誤認とみなすことができる〝みなし規定〟。

 だが、機能性表示食品は、そもそも届出の根拠を事前に提出・公開される建付けだ。「あえて規制を適用して否定する意味が分からない。根拠の問題に踏み込み、〝根拠がなかった〟と説明するための詭弁」(業界関係者)との指摘がある。消費者庁は、根拠が合理性を欠く理由を「評価の一部」(田中室長)として詳細を明らかにしないが、説明責任を尽くすべきだろう。


「事後チェック指針」機能せず、景表法、食表法の措置の公平性、 不均衡のおそれも、消費者庁食品表示企画課担当官に聞く「届出再検証の今後の対応」…は本誌にて

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