コロナ落ち着き取り組み加速へーーEC各社のリアル展開の現状と成果は

 コロナ禍による外出自粛の影響もあって下火となっていた通販・EC事業者によるリアル展開がここにきて再び目立ってきている。インターネット上ではリーチにしくい新規層や潜在層へ訴求する方法としてイベントやショールーム、店舗などリアル展開によるタッチポイント作りは効果的と言え、各社が相次いでリアルでの取り組みを強化しているようだ。リアル展開の現状や成果について注目すべき事業者の取り組みを見ていく。

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事例1:大網
リアルイベントの復活がECへの送客に弾み

  フィギュア商品や玩具などを取り扱う大網では、2022年度より、リアルとECの連携が大きく進んでいる。国内外を問わず、アニメファンなどが集まる大型イベントに積極的に参加することで、自社通販サイトのブランド名でもある「あみあみ」の認知拡大を推進。リアルでのファンとのコミュニケーションは、ウェブ広告での戦略設計などにも生きている。

 2022年からのコロナ関連規制の緩和に伴い、消費者のリアル回帰が進んだことは、同社にとって大きな追い風となった。これまで自粛を余儀なくされていたアニメ関連の大型イベントが次々と開催されるようになり、リアルでのファンとのコミュニケーション機会が復活。

 それを受けて、同社単独でも秋葉原にある実店舗を活用した期間限定イベントを再開するなど、対面機会の最大活用を図っている。「実店舗で知名度を上げることは通販にも効いてくる」(同社)と説明。同社の場合は、リアル回帰の潮流がEC送客に直結すると見ている。

米国で開催されたアニメ関連のイベントに参加
独自開催のイベントも再開している

 2022年11月には秋葉原の商業ビルで独自イベントを開催した。他のフィギュア・ホビーメーカーのイベント開催のタイミングとも合わせて、共通のチラシを作るなど業界全体を盛り上げる内容で行い、1日で2500人を集客した。当日は自社の実店舗よりも広いキャパシティとなる会場を使い、37社のメーカーの約140点の新商品などを展示。

 ECとの連携については、来場できない顧客に向けて開催前からネット上に特設ページを作って対応。特設サイトをECに紐づけたため、イベント後は閲覧からのEC流入に大きくつながったようだ。「リアルでイベントを行うと、たくさんのお客さんを目の前で見たことで満足してしまうが、そこで終わらずにオンラインでも実数を求めるようにした」(同社)とする。

来場者へのアンケートで広告クリエイティブにも変化

 

 また、リアルを活用するメリットの1つにはアンケートの収集もあった。会場への設置式ではなく、来場者に対してノベルティと引き換えに記入を求めたもので、回答者の個人の属性をはじめ、月の平均購入価格や好きな作品など複数項目で回答してもらい、300件ほどのデータを回収することができた。

 こうしたアンケートは海外でも行っており、7月に米国で開催されたアニメ関連の大型イベントに参加した際にも実施し、1300件を回収した。海外の場合、最新作などの流行に捉われるだけでなく、愛着を持っている旧作を長年追い続けている人も多くいるなど、国内とはまた違った傾向が読み取れたとする。


移転した「GLP ALFALINK相模原」
自動棚搬送ロボットなども取り入れている

 イベントで得られたアンケート回答については主に広告戦略に活かされている。海外のアンケートの中には、過去に現地イベントなどで初めてフィギュアを購入した際に、偽物被害にあったという失敗談がいくつか見られたことから、正規品のニーズが国内以上に高いと分析。その上で、海外向けの広告には「オーセンティック(本物)」商品しか扱っていないことを全面に表記するなど工夫したことで、反応率を引き上げることもできたという。「どうしても広告は(情報発信が)一方的になってしまうため、顧客が欲している情報を理解して、それをいかにワードに反映させるかが大事になる」(同社)とした。

 国内で得たアンケートに関しても、自社通販サイトの認知度が弱かった地域を読み取って、そのエリアに絞って広告露出を高めることなどに取り組んでいく予定だ。同社では秋葉原に2つの実店舗を構えているが、今期に入ってからはリニューアルを実施した。会場を拡張するなど、複数のイベントが同時開催できるように設計。ウィズコロナも見据えて、よりリアルでの接点機会を増やしていくように配慮している。

物量拡大を受けて、神奈川県相模原に物流拠点を移転新設

 アマゾン以外の上位勢の状況は各社ともコロナ特需の反動減や原材料高騰の影響でEC事業においても苦戦している事業者も多い。なお、これまで成長を続けていた4位のアスクルの「LOHACO」はこれまで参加することで高い販促・集客効果を得られ、成長に大きく寄与してきたグループ会社のヤフーが展開するポイント増倍キャンペーンがヤフー側の利益重視を軸とした戦略転換により、キャンペーンの規模やポイント還元幅を抑制した影響が直撃したことで前年実績を下回る結果となった。なお、利益面では経費抑制や物流効率向上などの効果で2012年の事業開始以来、初の通期営業黒字化を果たしている。

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