2023年のEC市場を振り返る!ーーネット販売業界の10大ニュース

 原油価格や物流費の高騰、さらには円安を受けて商品値上げラッシュとなった2023年。EC業界も大きな影響を受けた。また、物流の2024年問題が迫る中で、EC企業は対策を迫られている。IT業界で最も話題となったのは、「ChatGPT」に代表される生成AI。もちろん、ECにおいても文章や画像でAIを活用する企業が増えている。多くのEC企業が主戦場とする楽天市場やヤフーショッピングといった仮想モールでは、運営企業の負担によるポイント販促で大きな変更があった。2023年におけるEC業界の10大(重大)ニュースを振り返る。(※ニュースおよび順位は本誌編集部が独断と偏見で選びました)

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1位 物流の2024年問題が目前に

 トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が2024年4月から適用されることによる輸送能力の低下などから物流が滞る可能性があるいわゆる「物流の2024年問題」が目前に迫る中、配送会社からの運賃値上げ要請などを受けるなど配送が切っても切り離せない業態であるが故に大きな影響を受ける通販・EC各社では対応・対策に追われた。本紙姉妹紙の「通販新聞」が2023年夏に主要な通販・EC実施各社を対象に実施した2024年問題への対応策などについて尋ねたアンケート調査によると「再配達削減」「配送効率化」「コンパクト化」と同時に複数の対策を講じている事業者が多かった。

24年問題など今後も物流の効率化が求められるEC事業者(写真は自動化・効率化を進めるアマゾンの物流拠点の様子)

再配達削減の具体策としては「ヤマト運輸のネコポスなど、再配達が不要な配送サービスを導入している」(全日空商事)、「受注時に配達指定日を選択しないとオーダーが進まない様に切り替える方向」(GSTV)、「配送荷物の中にチラシを同梱し、宅配業者のLINE登録をすることで荷物のお届け予定通知や配達日時変更などが便利に活用できることを案内している」(アイム)など。

 また、配送効率化の具体策としては、「複数の運送会社を利用し、一極集中のリスクを分散」(ベルヴィ)、「まとめての出荷配送施策の取り組み強化」(オージオ)などの施策をとっているよう。このほか、コンパクト化の具体策では、「ひと箱に収まる商品の外装パッケージのサイズ設計や同じスペースに対して容量を多くする商品設計など、物流効率を考慮した商品開発」(アスクル)、「メール便の導入準備」(ヤマサキ)、「配送会社との連携を密にしながら、梱包サイズの見直しやリードタイムの緩和、物流コントロールなどを実施」(テレビ東京ダイレクト)、「運送費の高騰が予想されるので、従来のダンボール梱包だけでなく、小口のお客様に対しては簡易包装で出荷する体制をスタートさせている」(ランドマーク)などがあった。物流・配送を巡る問題は24年問題とどまらず、少子高齢化で労働人口が減少していくこれからの方がより深刻で何も対策を講じなければ2030年度には34%の輸送力不足の可能性があると試算されている。これまでの以上の効率化の工夫や物流センターの自動化、省人化など絶え間ない物流の改善がEC事業者に求められそうだ。

寸評 労働人口の減少は今後も続く。EC事業者にとって物流の効率化の取り組みはこれからも必須に

2位「Yahoo!ショッピング」失速

 国内有力仮想モールの一角である「Yahoo!ショッピング」の流通額が大きく落ち込んだ。

 “国内物販コマース取扱高ナンバーワン”を目標に掲げて、グループの決済サービ「PayPay」と連携したポイント付与アップなどの積極的な販促策などによってここ数年間は破竹の勢いで流通額を伸ばしてきたが、Zホールディングス(現LINEヤフー)の川邊健太郎社長(=当時)が2023年2月2日の会見で「『2020年代前半に国内物販Eコマース取扱高NO.1』という目標の達成に向けグループ一丸となって進めてきたが、この目標を“修正”することにした」とし、従来までの拡大路線から利益重視路線に切り替え、同社の負担でばら撒いてきた集客や販促のためのポイントの付与を大きく抑制した。

  特に2023年3月に実施した大型キャンペーンでは前年と比較してその規模を大きく縮小したことが影響して出店者に開示している3月度の同モール単体の月次流通額は前年同月比では3割減という結果となり、年度末の重要な時期に期待通りの売り上げをあげられなかった店者からは不満の声が上がった。

 

販促費を抑制する方針は今後どうなるのか。(画像は「Yahoo!ショッピング」のトップページ)

 「これまでの方針から成長と収益性をバランスさせる方針に転換したため、成長率は下がらざるを得なかった」(Zホールディングス=当時)とした上で、さらに
「選択と集中」を進め、大型キャンペーンの抑制のほか、「5のつく日」などの月次販促策についても付与ポイントを使用先や使用期間に制限のあるものに変えるなどマーケティング費用の絞り込みを推進していく方針を維持して2023年は突き進んだ。

 ただ、出店者からの不満の声の大きさや想定以上の流通総額の落ち込みが続いた影響からなのか、秋口からはポイント還元率の抑制を緩め、その後もポイントの還元率をある程度、高める施策を採り始めたことで、流通総額は盛り返しを見せ、出店者からも「Yahoo!ショッピングでの売れ行きは改善しつつある」との声も出始めているようだ。
とはいえ、LINEヤフーとしては販促費を抑制して収益力を高めていくという方針に大きな変化はないはずで、2024年も「Yahoo!ショッピング」で現状のポイント還元率を維持するかは不透明な状況。日本有数の有力仮想モールのこれからが注目される。

寸評 どんな戦略をとるかは自由だが急な方針転換で売上減を許容せねばならない出店者との信頼関係はどうなる?

3位 生成AIブームに、ECでの活用も

 米OpenAI社の人工知能(AI)チャットボット「ChatGPT」が世界中で話題を集めた。人間を相手にしている時と同じような対話ができる、自然言語処理技術を用いているのが特徴で、通販関連でも利便性の高いサービスが登場しはじめている。

 BASEではChatGPTの文章生成機能を活用し、商品説明文や顧客に送付するメールマガジンの文章、SNSへ投稿する文章の作成をサポートするサービスの提供を開始。通販サイト運営者の文章作成業務の負担を減らす狙いがある。「LINE」の投稿文や、メールマガジン用原稿を生成してくれるサービスを提供する会社もある。

 カラクリの小田志門CEOは、「『何かの作成』という点では、AIによる支援が全く使われない分野は存在しなくなるだろう」と話す。また、楽天グループの松村亮常務は「生成AIの活用で『サーチとテキストと写真で商品を売る』というやり方は大きく変わるのではないか」と語る。

対話型AIではユーザーと自然なやりとりができる

寸評 生成AIが「もっともらしい」回答を提示するため、一見すると利用者が間違いに気づかないことも。

4位 ステルスマーケティング規制始まる

 23年10月にステルスマーケティング(ステマ)規制が始まった。景品表示法の告示に指定し、運用基準で具体的な問題事例を示し、事業者の予見可能性を確保する。法執行では、景表法第29条の調査権限(報告徴収、立入検査)を有効活用することで実態把握に努め、実効性を確保する。

 景表法は、誇大広告を「優良・有利誤認」(不当表示)で規制するが、広告であることを〝隠す行為〟そのものを規制するのは初めてだ。事業者自身が第三者を装う「なりすまし型」、第三者への利益提供を通じて表示させる「利益提供秘匿型」を広く規制する。不正レビューやインフルエンサー投稿、アフィリエイト広告などさまざまな表示が対象になる。規制導入以後、事業者は、ステマの問題が発生しないとみられる広告にも「PR」表示を徹底するなどしている。ステマでなくても消費者からその疑いをかけられ、炎上すれば事業活動に大きな影響を及ぼす。法律を超え〝社会〟を意識した対応がみられる。

ステマ規制は表示内容の評価がいらない。その意味で措置命令のハードルは低くなる(写真は消費者庁がある中央合同庁舎)

寸評 一度作った法律は使わなければ、行政もその責めを受ける。来年には執行が行われるだろう

[ この記事の続き… ]

5位 コロナ5類に、リアル回帰も、6位 処理水放出で中国が輸入規制、7位 宅配運賃、物流各社で値上げ、8位 LINEとヤフーが合併、9位 楽天市場のポイント付与条件が大幅変更、10位 SHEINとTemu、日本でも注目度アップ、は本誌にて→

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